製薬業界で働く人のキャリアや働き方に関する話題のあれこれを、製薬業界専門転職エージェント「Answers」「MRBiZ」(運営=株式会社クイック)のコンサルタントとAnswersNews編集長が語らいます。
早期退職、人事制度の見直し…
前田雄樹(AnswersNews編集長):大手製薬企業といえば、かつては「安定している」というイメージでしたが、最近ではそうも言えなくなってきましたね。
香本牧子(株式会社クイック ヘルスケアチーム コンサルタント):定年まで安泰かという観点で言うと、そうではないですよね。ここ数年、早期退職が続いていますし、組織体制や人事制度の見直しも活発化しています。
前田:実際、そうした不安を相談しに来る転職希望者もいるんですか?
香本:そうですね。特に若手層では「自分は早期退職の対象にはならなかったけど、会社の将来が不安になった」という方が相談に来るケースはあります。あとは「組織体制が大きく変わるので不安」とか「会社の方向性が見えないので、ほかのところも見てみたい」ということで相談に来る方もいます。
年収がネックに
前田:ほかに、大手在籍者が転職する動機として挙げられるものはありますか?
香本:いわゆる優秀層だと、「もっと裁量の幅を広げたい」ということで転職を考える方が多いです。大手は組織が細分化されていますので、もっと自分の裁量範囲を広げて経験値を積みたいという志向の方は結構います。「上が詰まっていてなかなかステップアップできない」という理由で転職を希望するケースもありますね。ただ、チャレンジはしたいけど、年収や待遇は担保したいという方も多くて、そこが転職活動をする上でネックになることもあります。
前田:確かに年収はハードルになりそうですね。
香本:実際、そこで折り合いがつけられずに現職に残るという選択をする方もいますが、一方で、将来的な年収の上がり幅や市場価値につながる経験やキャリアに目を向けて転職する方もいます。
目の前に提示された金額だけで「上がった」「下がった」と判断する方は多いですが、その金額ってこの先働く何十年の中の1年の年収ですよね。収入は中長期で考えることが大切ですし、キャリアについても「ここでこういう経験を積めば、数年後にはこういうポジションで転職が可能になるかも」といったことも考えて判断していただけるといいのかなと思います。
手当がたくさんついて年収が高くなっていることも多いと思いますが、会社からすると手当はいつでもなくせるものです。実際、手当の見直しをしている企業も結構あるので、あまりそこに固執する必要はないのではないかと思っています。「手当がなくなるので転職したい」という大手の方もいますが、転職しても同じように手当がなくなる可能性は理解しておく必要があると思います。
前田:年収以外に大手在籍者が転職をする上でネックになることってありますか?
香本:大手の場合、インフラ的な部分も含めて会社がフォローアップしているところも大きいので、裁量の幅を広げたいということで転職しようとした場合、雑務的な業務も含めて「ここまでできるの?」という目で見られることはあると思います。実際、内定が出たとしても、「この業務は経験がないから、会社としてはそこまで評価できません」ということはありますし、それに納得できないと言う転職者もいます。
柔軟性がカギ
前田:給与にせよ業務範囲にせよ、柔軟な考え方ができるどうかということが転職活動のポイントになりますね。
香本:特に転職の経験がない大手在籍者の場合、「自分の今の職種ってこういう職務の範囲・内容だ」というのが凝り固まっている方が多いんですが、どの職種がどこまでカバーするかというのは、会社によって結構違います。大手の環境も背景にあると思いますが、キャリアや職種に対する視野が狭くなっている人も多い。自分の今の専門性でどうキャリアを積んでいこうかということを、もっと視野を広げて考えてもらえるといいのかなと思います。専門性を極めていくのも一つの道ですが、ゼネラリストとして活躍できる人を求めている製薬企業も結構ありますし。
定期的な情報収集とキャリアの棚卸しが重要
前田:「大手に在籍している=市場価値が高い」と思ってしまう人もいそうですね。
香本:確かにそういう人もいます。面接を受けてみて、「そういうふうに業務を進めている会社もあるんだ」とか「こんなスキルが必要なんだ」と視野が広がる人もいますし、「今の自分にはこういうスキルが足りないので、もう少し現職で経験を積んで、1年後、2年後に転職したほうがいいですね」となる方もいます。こんなふうに気付ける人はいいんですが、一方でなかなか考え方を変えられず、転職活動が長期化する方や、受けるところがなくなって転職活動自体をやめてしまう方も少なくありません。
前田:大手に在籍している人がキャリアや転職を考える上で、何かアドバイスはありますか。
香本:今すぐ転職したいという方でなくても、定期的に転職市場の環境を見ておくことは大事なのではないかと思います。あわせて、経験やスキルについても定期的に棚卸しし、市場環境とも照らし合わせながら自分の市場価値を冷静に把握することが重要です。
香本牧子●理系大学を卒業後、人材業界に入り、一貫して製薬業界を担当。現在は、ヘルスケアチームのマネージャーを務めながら、プレイヤーとしても採用支援・転職支援を行っている。 |
【あわせて読みたい】
あわせて読みたい
オススメの記事
人気記事
【無料】製薬業界専門転職サポート
【無料】製薬業界専門転職サポート
製薬業界専任のコンサルタントが、悩みや不安を元にキャリアについてアドバイスさせていただきます。
まずはお気軽にお申し込みください。