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新型コロナで収入減、米国の医療機関に整理統合の波|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 新型コロナウイルスのパンデミックによって米国の多くの医療機関が収入減に見舞われ、保険会社などによる統合が進むと予想されています。

 

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

多くの医療機関が窮地に

新型コロナウイルスのパンデミックは、米国の医療提供のあり方を根本から変えつつある。新型コロナの影響で多くの医療機関が経済的な窮地に陥っており、米国は医療アクセスのジレンマに直面する可能性がある。プライベートエクイティファンドや小売りチェーンなどに吸収され、医師の帰属はより大きな企業へと変化していくだろう。

 

収入減に見舞われている医師は、将来に向けて採算のとれる財務モデルに目を向ける必要がある。最も経済的な負荷が大きいのが、医師が1人しかいない小規模な診療所だ。その多くが、廃業や破産を強いられたり、償還戦略の見直しを迫られたりしている。連邦政府の「コロナウイルス支援・救済・経済補償法」に基づく資金は、大半が病院に充てられたが、今春に前払いが行われたメディケア・メディケイドからの支払いは、一時的な融資として機能した。追加の支援については議会でも議論されているが、その可能性は不透明だ。

 

過疎地の医療機関や、都市部でも財源が十分でない医療機関は、将来に懸念を抱いていることだろう。市場主導型のシステムでは、プライベートエクイティファンドや民間保険会社のほか、医師を募集しているIDN(Integrated Delivery Network)が支援にあたるケースが多い。

 

 

大都市を拠点とするIDNは、経済的に苦しい農村部の医療機関の買収には積極的でないかもしれない。一方、ユナイテッドヘルスケアやヒューマナといった保険会社も医療機関の吸収を急ピッチで進めており、医療アクセスの限られた地域にある医療機関の支援に最も積極的なのは、このような保険会社である。その目的は、加入者の健康を維持し、高額な治療を受けなくて済むようにすることだ。

 

支払いモデルも変化

新型コロナウイルスの影響によって、HMO(Health maintenance organization)式の定額払いでも良いと考える医師が大幅に増える可能性がある。パンデミックの影響を受けやすい出来高払いではなく、割り当てられた患者数を単位とする支払いで月々の安定した収入を確保するためだ。

 

自己負担でプラスアルファのサービスを受けたいという患者がいれば、会員制の病院も成長し、患者の数も増える可能性がある。ダイレクト・プライマリ・ケア・コーリションやイオラ・ヘルス、メドライオンといった統括組織は、コンセルジュ医療を全米で展開している。このコンシェルジュモデルは、人気の高い医療機関グループと連携することで、さらに可能性が広がる。例えば、サンフランシスコを拠点とするワン・メディカル・グループは、IDNと協働して患者数と収益を増やしている。

 

 

医師が直面しているのは、経済的な困難だけではない。技量の高い医療従事者を擁するクリニックとの競争にもさらされている。CVSは、2021年末までに1500のヘルス・ハブ(HealthHUB)をオープンする計画だ。ヘルス・ハブ・クリニックはアテナの保険加入者だけを対象としており、クリニックの収入を減らす可能性がある。

 

開業医標的に勢力争い

ほかにも、ウォルマートとウォルグリーンがクリニック事業に進出しており、医師主導型のクリニックではあるものの、コストを削減して医師への償還を抑えるようなサービスを提供している。ウォルマートは、ジョージアなどいくつかの州で、プライマリケア、臨床検査、画像診断サービスなどを提供できる独立性の高い医療施設を展開する予定だ。一方、ウォルグリーンは、イリノイ州を拠点とするヴィレッジMDと提携し、500~700のプライマリケアクリニックをオープンすることを計画している。

 

 

統合の標的となるのは主に開業医だろう。小規模な医療機関は、合併報告や反競争要件の対象にならないからだ。IDNや保険会社はまず、整理統合が進んでいない市場をターゲットとし、開業医を統合して医療提供に対する掌握力を高めようとするだろう。連邦政府の当局者は今年8月、米議会の公聴会で、こうした勢力争いが医療費の増大につながるおそれがあると警告した。

 

今年から来年にかけて、医療機関の整理統合が進むかどうか、注目される。支払い者と医療提供者は、アクセスを確実に増やし、治療を受けないことで生じる長期的な健康への弊害を避けたいと考えている。住民の健康目標達成とバリューベースの契約の成功には、プライマリケアが不可欠だ。そう考えると、IDNと保険会社の間で広がっている整理統合の波は、診療所にとどまることはないだろう。

 

(原文公開日:2020年9月29日)

 

(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com

 

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