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新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(11月19日UPDATE)

更新日

前田雄樹

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬・ワクチンの開発動向をまとめました。

 

 

治療薬

国内で使用されている主な薬剤

【COVID-19治療薬として国内で使用されている主な薬剤】(★は新型コロナウイルス感染症の適応を持つ薬剤):(一般名/販売名(先発品)/製造販売元/薬効/既承認・開発中の対象疾患): ★レムデシビル/ベクルリー/ギリアド/抗ウイルス薬/エボラ出血熱 |★デキサメタゾン/デカドロン/日医工など/ステロイド/重症感染症など |★バリシチニブ/オルミエント/米イーライリリー/JAK阻害薬/ 関節リウマチ |★カシリビマブ/イムデビマブ/ロナプリーブ/中外製薬/中和抗体(抗体カクテル)/― |ソトロビマブ/ゼビュディ/グラクソ・スミスクライン/中和抗体/―|トシリズマブ/アクテムラ/中外製薬/スイス・ロシュ 抗IL-6R抗体/関節リウマチなど |ファビピラビル/アビガン/富士フイルム富山化学/抗ウイルス薬/新型・再興インフルエンザ感染症 |※厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第5.3版)」などをもとに作成

 

レムデシビル

レムデシビルはもともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬。ウイルスのRNAを合成する酵素プロテアーゼを阻害することで増殖を抑える薬剤です。

 

日本では昨年5月、重症患者を対象に「ベクルリー」の製品名で特例承認。今年1月には添付文書が改訂され、中等症の患者にも投与できるようになりました。これまでは日本政府とギリアドの販売契約に基づき、国が買い上げて医療機関に配布してきましたが、安定供給の見通しがたったことから、8月12日付で保険適用され、10月18日から通常の医薬品と同様の流通体制へと移行しました。

 

レムデシビルは、プラセボとの比較で入院患者の回復を5日間早めた米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)主導の臨床試験結果をもとに、世界約50カ国で承認または使用許可を取得しています。

 

デキサメタゾン

デキサメタゾンは重症感染症や間質性肺炎などの治療薬として承認されているステロイド薬。先発医薬品「デカドロン」(日医工)のほか、複数の後発医薬品が販売されています。英国で行われた大規模臨床研究で重症患者の死亡を減少させたと報告されており、標準的な治療法の1つとなっています。

 

英国の臨床研究では、人工呼吸器を装着した患者と酸素投与が必要な患者で死亡率を有意に低下させた一方、酸素投与の必要ない患者では効果が見られませんでした。米NIHのガイドラインでも、人工呼吸器や酸素投与を必要とする患者に対する治療薬として推奨されています。

 

バリシチニブ

JAK阻害薬バリシチニブ(製品名・オルミエント)は、サイトカインによる刺激を伝えるJAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害する薬剤。COVID-19は重症化すると、サイトカインストームと呼ばれる過剰な免疫反応に重篤な臓器障害を起こすことが知られています。バリシチニブは免疫異常による炎症を抑える作用を持ち、日本では今年4月、中等症から重症の患者を対象に特例承認されました。

 

日本を含む国際共同治験では、レムデシビルと併用することで、回復までの期間をレムデシビル単剤に比べて1日短縮しました。日本で同薬の対象となるのは、酸素吸入、人工呼吸管理、体外式膜型人工肺(ECMO)の導入が必要な患者で、入院下で、レムデシビルと併用して最長14日間投与します。

 

カシリビマブ/イムデビマブ

中外製薬の「ロナプリーブ」は、カシリビマブとイムデビマブの2つの中和抗体からなる抗体カクテル療法。新型コロナウイルス表面のスパイクタンパク質に結合し、ウイルスが細胞内に侵入するのを防ぎます。米リジェネロンが創製し、中外は日本での開発・販売権を保有。7月に特例承認を取得しました。

 

同薬の投与対象となるのは、重症化リスク因子を持つ軽症・中等症の患者。海外で行われた臨床試験では、1回の投与で入院や死亡のリスクを70%減少させ、症状消失までの期間を短縮しました。中外は日本政府との合意に基づき、2021年に国内で使用される分について確保しています。

 

国内では当初、投与対象が入院患者に限定されていましたが、感染拡大による自宅療養者の増加を受け、現在では一定の条件の下、外来での投与も認められています。軽症・中等症患者の治療に加え、11月5日には濃厚接触者と無症状感染者に対する発症抑制のための投与でも承認を取得しました。あわせて、皮下注射による投与も認められています。

 

ソトロビマブ

グラクソ・スミスクライン(GSK)の「ゼビュディ」(一般名・ソトロビマブ)は、新型コロナウイルスに対する中和抗体。GSKと米ビル・バイオテクノロジーズが共同開発したもので、今年9月に特例承認を取得しました。ロナプリーブと同様に、重症化リスクの高い軽症・中等症の患者が対象となります。

 

海外で行われたP2/3試験では、投与29日目までの入院・死亡のリスクをプラセボに比べて79%低減しました。

 

トシリズマブ

抗IL-6受容体抗体トシリズマブは、サイトカインの一種であるIL-6(インターロイキン-6)の作用を阻害することで炎症を抑える薬剤。バリシチニブと同様に、免疫異常による炎症を抑制し、重症患者の症状を改善する薬剤として有効性の検証が進められ、米国では今年6月に緊急使用許可を取得しました。

 

米国での緊急使用許可は、世界で計5600人を対象に行われた4つの臨床試験の結果に基づきます。このうち2つの試験では死亡率を低下させるなどの有効性を示した一方、残る2つの試験では主要評価項目が未達でした。国内では年内の承認申請を目指しています。

 

ファビピラビル

ファビピラビルは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、新型インフルエンザに備えて国が備蓄しています。

 

富士フイルム富山化学は昨年10月、非重篤な肺炎を有する患者を対象に行ったP3の結果に基づき、新型コロナウイルス感染症への適応拡大を申請しましたが、厚生労働省の専門家部会は同12月21日、「現時点で得られたデータから有効性を明確に判断するのは困難」として承認を見送りました。同試験が単盲検で行われたことの影響や、結果の臨床的な意義が議論になっており、現在実施中の臨床試験結果が提出され次第、あらためて審議することとしました。

 

富士フイルム富山化学が申請の根拠としたP3試験は、患者156人を対象に行い、主要評価項目の「症状の軽快かつウイルスの陰性化までの時間」はアビガン群11.9日、プラセボ群14.7日で、アビガンは症状を統計学的に有意に早く改善。安全性上の新たな懸念も認められなかったといいます。

 

富士フイルム富山化学は今年4月、重症化リスク因子を持つ発症早期の患者を対象とした新たなP3試験を開始。重症化した患者の割合を主要評価項目とし、有効性を検証しています。

 

その他

疥癬などの治療薬として承認されている駆虫薬イベルメクチン(MSDの「ストロメクトール」)もウイルスの増殖を阻害する可能性があるとされており、北里大がCOVID-19の適応追加を目指した医師主導治験を進めているほか、興和が企業治験を始めると発表。HIV感染症治療薬として承認されているネルフィナビル(日本たばこ産業の「ビラセプト」、製造販売は終了)は、長崎大を中心に医師主導治験が行われています。

 

一方、早い時期から治療薬候補として注目されていた吸入ステロイド薬シクレソニド(帝人ファーマの「オルベスコ」)は、国立国際医療研究センターが行った特定臨床研究で、対症療法群に比べて有意に肺炎の増悪が多かったとの結果が出ました。同センターは「海外で行われている検証的な臨床試験の結果も踏まえて判断する必要があるが、今回の結果からは、無症状・軽症の患者に対するシクレソニドの投与は推奨できない」としています。

 

ウイルスの細胞内への侵入を阻止する可能性があると期待されていたタンパク分解酵素阻害薬ナファモスタットと同カモスタットは、いずれも開発を中止。ナファモスタットは第一三共が吸入製剤の臨床試験を進めていましたが、安全性に対する懸念から開発をやめました。カモスタットも、先発医薬品「フオイパン」を製造販売する小野薬品工業が行った臨床試験で有効性を示すことができませんでした。

 

開発中の主な薬剤

【COVID-19/開発中の主な中和抗体/抗ウイルス薬】※EUA=緊急使用許可。各社の発表などをもとに作成/薬剤名/種類/社名/開発状況/|バムラニビマブ/エテセビマブ/抗体(併用)/米イーライリリーなど/米EUA/|カシリビマブ/イムデビマブ/抗体カクテル/米リジェネロン/スイス・ロシュ/米EUA/日本特例承認/|ソトロビマブ/抗体/英GSK/米ビル/米EUA/日本特例承認/|VIR-7832/抗体/英GSK/米ビル/―/|AZD7442/抗体カクテル/英アストラゼネカ/米EUA申請/|モルヌピラビル/低分子/米メルクなど/英承認 米EUA申請/|AT-527/低分子/米アテア/スイス・ロシュ/中外製薬/P3/|PF-07321332/低分子(経口)/米ファイザー/P2/3/|PF-07304814/低分子(注射)/米ファイザー/P1/|BI/767551/抗体(吸入)/独ベーリンガー/インゲルハイム/P2/3/|抗ウイルス薬/低分子/塩野義製薬/P2/3/|VIR-2703(ALN-COV)/核酸医薬/米アルナイラム/米ビル/―/|抗ウイルス薬/低分子/オンコリスバイオファーマ/―/|抗ウイルス薬/ペプチド/ペプチドリーム/―

 

中和抗体

新型コロナウイルスに対する中和抗体は、すでに米国や欧州、日本などで実用化されています。

 

米FDAは昨年11月、イーライリリーとアブセラ(カナダ)が開発したバムラニビマブと、米リジェネロンがスイス・ロシュと共同開発したカクテル抗体カシリビマブ/イムデビマブに緊急使用許可を出しました。今年2月には、バムラニビマブ単剤より効果が高いバムラニビマブ/エテセビマブの併用療法が認められ、バムラニビマブ単剤への緊急使用許可は取り消されました。

 

5月には、英グラクソ・スミスクラインと米ビル・バイオテクノロジーが共同開発したソトロビマブも米国で緊急使用許可を取得しています。

 

日本では、カシリビマブ/イムデビマブが軽症・中等症患者に対する治療と濃厚接触者・無症状感染者に対する発症抑制で、ソトロビマブが軽症・中等症患者に対する治療で、それぞれ特例承認を取得しています。

 

アストラゼネカは今年10月、COVID-19患者に由来する2つの抗体を組み合わせたカクテル抗体「AZD7442」の緊急使用許可を米国で申請。日本では、今年3月からP1試験が行われており、国際共同治験に参加する形でP3試験も行われています。独ベーリンガーインゲルハイムは、吸入によって肺に直接送達できる中和抗体の開発を進めていて、P2/3試験を行っています。

 

抗ウイルス薬ほか

コロナ対策の切り札の1つとして期待の高い経口抗ウイルス薬の開発も佳境を迎えています。

 

米メルクは米リッジバック・バイオセラピューティクスと提携し、抗ウイルス薬モルヌピラビル(開発コード・MK-4482)を開発中。10月1日にはP2/3試験の中間解析結果を発表し、リスク因子を持つ軽症から中等症の非入院患者で入院または死亡のリスクをおよそ半分に減らしました。この結果を受け、英国の規制当局は11月4日に同薬を世界で初めて承認。米国では緊急使用許可を申請中で、欧州でも段階的審査が行われています。

 

米ファイザーも11月5日、抗ウイルス薬パクスロビドのP2/3試験で重症化リスクのある成人患者の入院・死亡リスクを89%減少させたとするP2/3試験結果を発表しており、11月中に米国で緊急使用許可を申請する予定です。

 

ロシュと米アテアは、ウイルスRNAポリメーラーゼを阻害する作用を持つ経口の抗ウイルス薬を開発しており、軽症から中等症の患者を対象にP3試験を進めていますが、10月19日、P2試験で主要評価項目を満たすことができなかったと発表。両社は11月16日、同薬に関するグローバルな共同開発・商業化契約を来年2月に解消すると発表しており、アテアは提携終了後も独自に開発を続ける方針を示しています。

 

塩野義製薬は、自社創製の3CLプロテアーゼ阻害薬「S-217622」を経口の抗ウイルス薬として開発中で、9月に日本でP2/3試験を開始。年内には申請に向けた準備に入りたい考えです。

 

オンコリスバイオファーマは鹿児島大が見出した抗ウイルス薬を開発しており、22年上半期までに前臨床試験を終え、その後、臨床試験に入ることを目指しています。ペプチドリームは抗ウイルス作用を持つ特殊ペプチドの開発を進めていて、昨年10月に富士通などと開発のための合弁会社を設立。富士通の量子コンピューティング技術などを活用し、開発を加速させるといいます。

 

重症患者に対する治療薬

エーザイは、かつて重症敗血症を対象に開発していたものの、P3試験で主要評価項目を達成できずに開発を中止したTLR4拮抗薬エリトランの臨床試験を開始。試験は、Global Coalition for Adaptive Researchによる国際共同治験「REMAP-COVID」として行われ、米国で開始したあと、日本を含むグローバルへと拡大する予定です。エリトランは、サイトカイン産生の最上流に位置するTLR4(Toll様受容体4)の活性化を阻害する薬剤で、サイトカインストームの抑制を狙います。

 

塩野義製薬は、アレルギー性鼻炎を対象に開発していたDP1受容体拮抗薬「S-555739」について、COVID-19の重症化を抑制する薬剤として、米バイオエイジに導出する契約を締結。同社は今年上半期中にP2試験を開始する計画です。

 

ワクチン

WHOの11月16日時点のまとめによると、現在、臨床試験に入っているCOVID-19ワクチン候補は132種類。このほかに194種類が前臨床の段階にあります。

 

【主な新型コロナウイルスワクチンの開発状況】(※WHOのまとめや各社の発表をもとに作成) <承認>(※承認には緊急使用許可などを含む) ファイザー(米)/ビオンテック(独)/モデルナ(米)/アストラゼネカ(英)/オックスフォード大(英)/ガマレヤ研究所(露)/バーラト・バイオテック(印)/シノファーム(中)/シノバック(中)/カンシノ(中)/J&J(米)/ノババックス(米)/※承認には緊急使用許可などを含む/ <P3>ザイダス(印)/サノフィ(仏)/メディカゴ(加)/クローバーバイオ(中)/GSK(英) イノビオ(米)<P2/3>アンジェス(日本)/塩野義製薬(日本)<P1/2>第一三共(日)/KMバイオロジクス(日)/エリクサジェン(米) <P1>VLPセラピューティクス(米) <前臨床>IDファーマ(日)

 

ファイザー、モデルナなど承認

これまでに承認(緊急使用許可を含む)を取得した新型コロナウイルスワクチンは、▽米ファイザー/独ビオンテック(mRNAワクチン)▽米モデルナ(同)▽英アストラゼネカ/英オックスフォード大(ウイルスベクターワクチン)▽米ジョンソン・エンド・ジョンソン(同)▽ロシア国立ガマレヤ研究所(同)▽中国シノファーム(不活化ワクチン)▽同シノバック(同)――など。

 

ファイザー/ビオンテックとモデルナのmRNAワクチンは、数万人規模の臨床試験で95%前後の有効率を示しています。

 

mRNAワクチンに比べて保管が容易なウイルスベクターワクチンでは、アストラゼネカ/オックスフォード大のワクチンが76%、J&Jのワクチンが85%の有効率を臨床試験で示しています。J&Jのワクチンは1回接種で済むため、低所得国や僻地への展開でメリットがあります。

 

日本では、2月14日にファイザーとビオンテックのワクチンが特例承認を取得。同17日から医療従事者への接種が始まりました。5月21日には、アストラゼネカとモデルナの2つのワクチンが特例承認。同24日にはJ&J製ワクチンも承認申請を行っています。

 

組換えタンパクワクチンの開発は、米ノババックスが先行。今年6月16日には、米国などで行った3万人規模のP3試験で90%の発症予防効果が示されたと発表しました。同社は順次、各国で申請を進めており、11月1日にはインドネシアで初の緊急使用許可を取得。欧州や英国、カナダなどでも審査が行われています。日本では、生産と供給を担う武田薬品がP1/2試験を進めており、来年初頭の供給開始を目指しています。

 

組換えタンパクワクチンは、仏サノフィと英GSKも共同で開発を行っていて、今年5月から3万5000人を対象としたP3試験を実施中。日本でも7月からP3試験が始まりました。

 

「国産」ワクチンは

日本勢では、大阪大とアンジェスが共同開発するDNAワクチンが国内P2/3試験を実施中。塩野義製薬も、組換えタンパクワクチンの21年度中の承認を目指して10月からP2/3試験を開始しました。第一三共のmRNAワクチンは11月からP2試験を始めていて、21年度中のP3試験入りと22年中の実用化を目指します。不活化ワクチンを開発しているKMバイオロジクスもP1/2試験を終えており、近く次のステップに進む見通しです。

 

米VLPセラピューティクスは、mRNAワクチンのP1試験を10月に日本で開始しており、21年度中にP2/3試験に入りたい考え。国から143億円の助成を得て、国内で生産体制を整備します。田辺三菱製薬もカナダ子会社のメディカゴが開発した植物由来VLPワクチンのP1/2試験を10月から日本で行っており、22年度中の承認申請を目指しています。

 

IDファーマは、センダイウイルスをベクターに使ったワクチンの臨床試験を計画。国内ではこのほか、阪大微生物病研究会などが開発する不活化ワクチンや組換えタンパクワクチンも前臨床の段階にあります。

 

(公開:2020年2月28日/最終更新:2021年11月19日)

 

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