アトピー性皮膚炎に初のJAK阻害薬が登場します。日本たばこ産業(JT)が世界初となる外用JAK阻害薬「コレクチム」の承認を1月に取得。4月にも発売される見通しです。ほかにも5つのJAK阻害薬が臨床試験を行っているほか、サノフィの「デュピクセント」に続く抗体医薬も開発中。近い将来、中等症・重症の患者に効果が期待できる薬剤が相次いで登場しそうです。
世界初の外用剤
日本たばこ産業(JT)は1月23日、自社創製したアトピー性皮膚炎治療薬のJAK阻害薬「コレクチム」(一般名・デルゴシチニブ)の承認を取得したと発表しました。同薬は軟膏剤で、外用のJAK阻害薬は世界初。4月の薬価収載が見込まれており、販売は子会社の鳥居薬品が行います。
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が身体のさまざまな部分にできる疾患です。体質的な要因(アレルギーを起こしやすい、皮膚のバリア機能に異常がある)と外部からの刺激(ダニ、化学物質、汗など)が重なり、免疫が過剰に反応することで起こると考えられています。厚生労働省の患者調査によると、2017年の国内の患者数は51.3万人。かつては「子どもの病気」と考えられていましたが、近年では特に成人の患者が増加しています。
JAK阻害薬は、細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすJAK(ヤヌスキナーゼ)の働きを阻害する薬剤です。国内ではこれまで、関節リウマチや潰瘍性大腸炎などの適応で5つのJAK阻害薬(いずれも経口薬)が承認されていましたが、アトピー性皮膚炎の適応で承認されたのはコレクチムが初めて。同薬は4種類あるJAKファミリーのすべてを阻害することで免疫の過剰な活性化を抑え、症状を改善すると期待されています。
16歳以上の中等症から重症の患者を対象に行った国内臨床第3相(P3)試験では、アトピー性皮膚炎の重症度を評価する「mEASIスコア」でプラセボに対する優越性を確認。2~15歳の小児患者を対象としたP3試験も行っています。
リリーやファイザーなど5品目が開発中
国内では現在、コレクチムのほかにも5つのJAK阻害薬がアトピー性皮膚炎を対象に臨床試験を行っています。
このうち、▽「オルミエント」(バリシチニブ、日本イーライリリー)▽「リンヴォック」(ウパダシチニブ、アッヴィ)▽「PF-04965842」(abrocitinib、ファイザー)――は経口剤。いずれもP3試験の段階にあり、オルミエントとリンヴォックは関節リウマチ治療薬としてはすでに承認されています。
オルミエントはすでに欧州でアトピー性皮膚炎への適応拡大を申請中。日本と米国でも2020年中に申請する予定です。abrocitinibも日本を含むグローバルで単剤のP3試験を完了。米国で20年末までの申請を目指しており、その後、ほかの地域でも申請を進めていくとみられます。
外用剤では、クリーム剤の「PF-06700841」(ファイザー)が12歳以上の患者を対象にP2試験を実施中。マルホは、関節リウマチ向けに経口剤(製品名「スマイラフ」)が販売されているペフィシチニブをアステラス製薬から導入し、外用剤として開発を進めています。
「デュピクセント」に続く抗体医薬も
アトピー性皮膚炎の治療療法は外用ステロイド剤が基本。必要に応じて免疫抑制剤タクロリムスなども使われますが、中等症や重症の患者では効果が十分得られないことも少なくありません。
既存治療で効果不十分な患者に対しては、18年4月にサノフィがこの分野で初の生物学的製剤となる「デュピクセント」(デュピルマブ)を発売。サイトカインであるインターロイキン-4/13(IL-4/13)を標的とする抗体医薬で、高い有効性を背景に使用が広がっています。
デュピクセントに続く抗体医薬の開発も活発化しており、国内では▽マルホの抗IL-31受容体A抗体ネモリズマブ▽レオファーマの抗IL-13抗体トラロキヌマブ▽アッヴィの抗IL-23抗体リサンキズマブ――がP3試験を実施中。ILをターゲットとしたもの以外にも、サイトカインの一種であるTSLPを標的とした抗TSLP抗体(アステラス・アムジェン・バイオファーマのtezepelumab)や、サイトカインを産生するヘルパーT細胞を制御する抗OX40抗体(協和キリンのKHK4083)などが臨床試験の段階にあります。
ネモリズマブは中外製薬の創製で、中等症以上のそう痒がある13歳以上のアトピー性皮膚炎患者を対象にマルホが行った国内P3試験では、プラセボに対する優越性を確認。マルホは年内に申請を行う方針です。リサンキズマブは乾癬治療薬として承認されており、アトピー性皮膚炎への適応拡大を目指しています。
(亀田真由)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】