細胞治療・遺伝子治療の開発が加速しています。米FDA(食品医薬品局)は、2020年までに毎年200の臨床試験が新たに開始され、25年までに年間10~20の細胞・遺伝子治療が承認されると予測。日本でも今年以降、承認・申請が本格化しそうです。
米FDA「25年まで年間10~20承認」
米FDA(食品医薬品局)は1月15日、スコット・ゴットリーブ長官とピーター・マークス生物製剤評価研究センター長の連名で、細胞治療・遺伝子治療の開発に関する声明を発表しました。
声明によると、米国では現在、800を超える細胞・遺伝子治療の臨床試験が進行中。2020年までに年間200以上のIND (Investigational New Drug=治験届)が提出され、25年までに年間10~20の細胞・遺伝子治療が承認されると予測しています。
「抗体医薬が主流になった時期と似ている」
声明では「FDAは、初期の開発段階に入る細胞・遺伝子治療製品の急増を目の当たりにしている」とし、こうした状況は「1990年代後半に抗体医薬の開発が加速し、現在の治療法のバックボーンとしてモノクローナル抗体が主流になった時期と似ている」と指摘。開発品の拡大に対応するため、FDAは臨床評価担当者を50人ほど増やすとともに、安全な細胞・遺伝子治療の効率的な開発を促すため、年内に新たなガイダンスを策定する方針を表明しました。
米国では17年8月、世界初のCAR-T細胞(キメラ抗原受容体発現T細胞)療法としてスイス・ノバルティスの「Kymriah」(一般名・tisagenlecleucel)が承認され、同年10月には米ギリアド・サイエンシズの「Yescarta」(axicabtagene ciloleucel)も承認を取得。遺伝子治療では、同年12月に米スパーク・セラピューティクスの遺伝性網膜疾患治療薬「Luxturna」(voretigene neparvovec)が承認されました。
日本では5製品が承認済み
一方、日本で現在、再生医療等製品として承認されているのは5製品。07年の自家細胞培養表皮「ジェイス」を皮切りに、12年に自家培養軟骨「ジャック」、15年に急性移植片対宿主病治療用の間葉系細胞「テムセル」と心不全治療用の骨格筋芽細胞シート「ハートシート」が承認。18年12月には、脊髄損傷治療用の骨髄由来間葉系幹細胞「ステミラック」が承認を取得しました。
ステミラックは、患者から採取した骨髄液中の間葉系幹細胞を培養・増殖させて患者に投与する治療。ニプロが札幌医科大と共同開発したもので、世界に先駆けて日本で実用化を目指す医薬品・医療機器・再生医療等製品を承認審査で優遇する「先駆け審査指定制度」の対象に指定されています。再生医療等製品では9製品が先駆けの指定を受けていますが、ステミラックはその承認第1号となりました。
国内初 遺伝子治療が承認へ
先駆け指定制度の対象製品としてステミラックに続くのが、ノバルティス・ファーマが昨年11月に申請した脊髄性筋萎縮症向けの遺伝子治療「AVXS-101」。今年前半に承認される見通しで、承認されれば国内初の遺伝子治療となります。
セルシードが食道がんの内視鏡治療後の食道狭窄の抑制を目的に開発中の「CLS2702C/D」も、今年上半期の申請・今年中の承認取得を見込んでいます。来年には、タカラバイオと大塚製薬が共同開発するNY-ESO-1・siTCR遺伝子治療「TBI-1301」(対象疾患・滑膜肉腫)や、米カラドリウス・バイオサイエンシズのCD34陽性細胞「CLBS12」(重症下肢虚血)も申請予定です。
承認間近のCAR-T サンバイオ「SB623」を今期申請
先駆け審査指定制度の対象以外では、▽HGF遺伝子治療薬「AMG0001」(アンジェス、重症虚血肢)▽CAR-T細胞療法「CTL019」(ノバルティス、B細胞性急性リンパ芽球性白血病/びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)▽インプラント型自己細胞再生軟骨(富士ソフト・ティッシュエンジニアリング、口唇口蓋裂に伴う鼻変形)――が申請中。いずれも19年中の承認が見込まれます。
タカラバイオと大塚製薬の腫瘍溶解性ウイルスTBI-1401(HF10、canerpaturev)は、悪性黒色腫を対象に18年度中の申請を計画。サンバイオは、他家由来の間葉系幹細胞を使った再生細胞医薬「SB623」を、外傷性脳損傷の適応で20年1月期中に申請する予定です。
タカラバイオと大塚製薬はCAR-T細胞療法「TBI-1501」も共同開発しており、こちらは20年度の申請を目標に、急性リンパ芽球性白血病を対象とした臨床第1/2相試験が行われています。
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