医療用医薬品を中心に事業展開する東証1部上場の製薬会社33社の2016年度の従業員数(単体)は、前年度から322人減ったことが、AnswersNewsのまとめでわかりました。
沢井製薬が工場で期間従業員を正社員に転換し1000人以上の増員となったものの、大手の新薬メーカーを中心に人員が縮小。新薬メーカーに限ればこの1年で1500人減少しました。新薬メーカーの従業員数は12年度以降、毎年減少を続けています。薬価の引き下げや後発医薬品の普及、研究開発費の高騰を背景に収益性が低下する中、人員減に歯止めがかかりません。
田辺三菱・大日本住友が早期退職 大手のほとんどで減少
集計対象としたのは、2016年4月~17年3月に本決算を迎えた東証1部上場の製薬会社のうち、医療用医薬品を中心に事業展開している33社。各社の有価証券報告書をもとに、単体と連結、それぞれで従業員数を集計しました。
単体ベースの16年度の従業員数は33社合わせて6万8819人。前年度から322人(0.5%)減少しました。
33社のうち、前年度から従業員を減らしたのは18社。16年度に634人が早期退職した田辺三菱製薬は541人(11.3%)減り、同じく295人が早期退職した大日本住友製薬も428人(10.7%)減少しました。旧味の素製薬との合弁会社EAファーマに社員が出向するエーザイも258人(7.4%)の減少。塩野義製薬や武田薬品工業も100人以上減りました。
従業員を減らしたのは大手企業が中心。アステラス製薬や中外製薬も加えると、売上高上位の企業のほとんどで減員となりました。
沢井は1000人増 小野薬品や第一三共も
一方、従業員を増やしたのは15社で、増加が最も大きかったのは沢井製薬。全国6工場で製剤や包装などの業務を担当する有期雇用社員を、16年7月に勤務地と業務を限定した無期雇用社員(工場正社員)に転換しました。従業員数は前年度から1013人(69.7%)増え、単体ベースの従業員数は準大手クラスの新薬メーカーに次ぐ規模に膨れました。
沢井製薬に次いで増加が大きかったのは東和薬品で188人(9.4%)増。小野薬品工業が160人(5.5%)増、第一三共が104人(2.0%)増と続きました。小野薬品は免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」や多発性骨髄腫治療薬「カイプロリス」など新薬が相次いでおり、第一三共も新薬の販売が好調です。
33社を新薬と後発品に分けて見ると、新薬メーカー(29社)は計6万2543人で前年度比1549人(2.4%)減少。後発品メーカー(4社)は、沢井製薬が従業員を大きく増やしたこともあり、計6276人で1227人(24.3%)増加しました。
減少は3年連続 新薬は12年度から3100人減
5年前の2012年度以降の推移を見てみると、当時上場していなかったペプチドリームを除く32社(新薬28社、後発品4社)の合計は6万9551人から779人減少。ピークとなった13年度と比べると951人減りました。
新薬メーカーは12年度以降、毎年減少が続いており、12年度と16年度を比べると3090人(4.7%)減りました。16年度は、第一三共とアステラス製薬、エーザイと大手が相次いで早期退職を行った14年度(1159人減)を上回る減少幅。新薬メーカーの人員減は加速しています。
一方、後発品メーカーの従業員は増加し続けており、16年度は12年度から2311人(58.3%)増えました。後発品の普及を追い風に売り上げを伸ばす中、人員の拡大が続いています。
連結では14年度以降ほぼ横ばい
国内外の子会社を含む連結ベースで見てみると少し様相が異なります。過去5年間で従業員数がピークとなったのは13年(19万6325人)で、翌14年には18万1552人まで1万5000人近く減少。これは第一三共が子会社のインド・ランバクシーを売却したためで、第一三共の連結従業員数はこの年、3万2791人から1万6428人に半減しました。
ペプチドリームを含めた新薬メーカー29社の16年度の連結ベースの従業員数は17万4301人で1197人(0.7%)減。グローバルで研究開発体制の再編を進める武田薬品が1268人(4.1%)減少した一方、大塚ホールディングスは1149人(3.8%)増加し、単体ベースと比べると減少は小幅にとどまりました。早期退職や採用抑制、子会社への出向・転籍で本体のスリム化が進む一方、海外でのM&Aが活発なこともあり、連結ベースでは14年度以降、横ばいが続いています。