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日本でも定着してきたオーソライズド・ジェネリック、大型品中心に市場投入加速へ

更新日

先発医薬品を製造販売する製薬企業から“お墨付き”を得て発売される後発医薬品「オーソライズド・ジェネリック」が、日本でも定着してきました。「先行発売」「同一性」を武器に市場を席巻し、5割を超える圧倒的なシェアを獲得している製品も少なくありません。

 

長期収載品の縮小や後発品市場の競争激化などを背景に、先発・後発問わず製薬企業にとって大きな戦略的意味を持つようになってきたオーソライズド・ジェネリック。今後も、大型製品を中心に市場投入が加速していきそうです。

 

 

100億円の大台うかがうカンデサルタンAG

「オーソライズド・ジェネリックという新しいビジネスを市場に提案できた。医療ニーズと合致したことが、これだけの成果を挙げられた(要因だ)」

 

ARB「ブロプレス」(カンデサルタン)のオーソライズド・ジェネリック(AG)を手がけるあすか製薬。山口隆社長は、カンデサルタンAGが市場で圧倒的なシェアを獲得したことに胸を張ります。あすか製薬のカンデサルタンAGは2015年度に91億円を売り上げ、同社の最主力品に成長しました。

 

あすか製薬は、資本関係にある武田薬品工業と契約を結び、14年9月にカンデサルタンAGを発売。今年3月にはカンデサルタンとアムロジピンの配合剤「ユニシア」のAGを市場投入しました。さらに今年9月には、カンデサルタンとヒドロクロロチアジドの配合剤「エカード」のAGの発売も控えます。16年度は、これら“カンデサルタンファミリー”で97億9100万円の売り上げを計画。後発医薬品としては初めてとみられる100億円の大台をうかがいます。

 

市場環境の変化が戦略後押し

近年、国内の先発医薬品メーカーの間で、AGを戦略的に活用する動きが鮮明になってきています。

 

AGとは、先発品メーカーから特許権の許諾を受けた後発品メーカーが製造販売する後発品のことで、

▽特許権の許諾を受けているため、先発品の特許が切れる前に発売することができる(ほかの後発品メーカーよりも先に発売することができる)
▽先発品と同じ原薬や添加剤を使い、同じ方法で製造することができる

などが特徴。後発品の参入と同時に一気に先発品からの切り替えが進む米国では、従来から特許切れ対策の1つとしてとられてきた戦略ですが、市場環境の変化を背景に日本でも急速に広がりを見せています。

国内で販売中・販売予定のAG

 

後発品への切り替え加速が背景に

日本ではこれまで、先発品から後発品への切り替えは緩やかで、特許が切れても長期収載品として市場を守りながら販売を続けた方が経営上のメリットは大きいとされてきました。しかし近年、国を挙げた使用促進策により、後発品への切り替えはスピードアップ。度重なる薬価引き下げも加わり、長期収載品は以前のように収益を生み出すことができなくなってきています。

 

先発品メーカーにとっては、AGを出すことで自ら先発品の売り上げを減らしてしまうリスクがある一方、特許権を許諾した後発品メーカーからロイヤリティなどの対価を得られるメリットもあります。長期収載品をめぐる環境が厳しさを増す中、ただ単に後発品に市場を明け渡すのではなく、AGからの収益で長期収載品の売り上げ減をカバーしたいというのは、ごく自然な判断でしょう。

 

AGの活用に弾みをつけたのが、14年度の薬価制度改革で導入された、いわゆる“Z2”です。Z2は、後発品への切り替えが一定程度まで進まない長期収載品の薬価を強制的に繰り返し引き下げる制度。自社の市場を守りながら後発品への切り替えを進め、長期収載品の薬価引き下げを回避する戦略として、AGが注目を集めるようになりました。

 

「先行発売」「同一性」で市場制圧

AGは、「先行発売」と「同一性」という2つの強みを武器に、市場で圧倒的なシェアを握っています。

 

あすか製薬のカンデサルタンAGは、30社以上の後発品メーカーがカンデサルタンの後発品を販売する中で55%程度のシェアを獲得。日医工が販売する抗血小板剤「プラビックス」(クロピドグレル)のAGは、先行発売しなかったにも関わらず、特許の関係から一般の後発品に虚血性心疾患の適応がなかったことからスタートダッシュに成功。一般の後発品が虚血性心疾患の適応を取得した今も、50%以上のシェアを占めています。

後発品に占めるAGの市場シェア

 

 

こうして実証されたAGの強さに、これからAGを取り扱う企業も鼻息を荒くしています。キョーリン製薬ホールディングスは今年9月に、喘息・アレルギー性鼻炎治療薬「キプレス/シングレア」(モンテルカスト)のAGを、後発品子会社キョーリンリメディオを通じて発売予定。後発品の中で50%以上のシェア獲得を目標に置いています。

 

アスペンジャパンは、提携するグラクソ・スミスクラインの抗ウイルス薬「バルトレックス」(バラシクロビル)と抗うつ薬「パキシル」(パロキセチン)のAGを発売予定。こちらはすでに一般の後発品が発売されており、AGの武器である「同一性」を市場がどう評価するか注目。一般の後発品からAGへの切り替えが広がれば、AGの戦略的な可能性はさらに広がることになります。

 

AGの獲得競争も過熱へ

AGは日本でも戦略として定着しつつあります。

 

協和発酵キリンは今年1月に発表した中期経営計画の中で、19年に特許切れを控える腎性貧血治療薬「ネスプ」のAGを検討する意向を表明。実現すれば初の“バイオAG”となります。

 

キョーリン製薬ホールディングスや第一三共は、後発品子会社を通じて自社品のAGを販売するだけでなく、他社の先発品のAGも取り込んで後発品事業の成長につなげたい考え。後発品専業の日医工も、AGの品ぞろえ拡大を目指しています。一般の後発品にはない「先行発売」「同一性」という付加価値は、後発品メーカー側から見ても魅力的です。

 

今後注目されるのは、後発品子会社を持たないアステラス製薬のARB「ミカルディス」など。あすか製薬とAGの事業化を進める一方、テバと合弁を組んだ武田薬品の動きも気になるところです。先発品メーカーと後発品メーカーの両方にとってAGが戦略的に大きな意味を持つようになる中、AGの獲得競争も熱を帯びてきそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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