国内後発医薬品大手3社の2016年3月期決算が出そろいました。
使用促進策を追い風に3社そろって2桁増収となった今回の決算でひときわ目を引いたのが、各社の活発な設備投資。16年3月期の設備投資額は3社で499億円に上り、前期の1.5倍以上に増えました。政府が20年度末までに使用割合(数量ベース)を80%以上とする目標を掲げたことを受け、各社とも供給能力の強化に動いており、17年3月期も1.5倍増のペースが続く見通しです。
各社が製造設備を増強、16年度も高水準続く
後発品大手3社の2016年3月期の設備投資額は、最大手の日医工が98億8000万円(前期比66.1%増)、沢井製薬が242億9400万円(同95.1%増)、東和薬品が157億円(同13.8%増)。17年3月期も、東和が前期比2.3倍の363億円を計画するなど、高い水準が続く見通しです。
前期から倍増となった沢井は昨年4月、田辺三菱製薬から鹿島工場(茨城県神栖市)を買収し、同工場の生産能力を年間30億錠まで引き上げるため、追加の設備投資を開始。昨年9月には、兵庫県三田市で包装専用の新工場建設に着手しました。
日医工は、既存の富山第一工場(富山県滑川市)や、アステラス製薬から14年に買収した子会社日医工ファーマテックの静岡工場(静岡県富士市)の製造設備を増強。東和も、主力の岡山工場(岡山県勝央町)や山形工場(山形県上山市)を中心に生産能力を強化しました。
日医工、18年度に185億錠体制 東和や沢井も計画修正
政府は20年度末までに使用割合(数量ベース)を80%以上とする目標を掲げており、後発品の市場は拡大を続けています。民間調査会社の富士経済は、市場規模は18年に1兆1172億円(14年比59.4%増)に達すると予測しています。
急速に高まる需要に対応するため、各社は生産能力の強化に動いています。日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)の試算によると、目標達成のためには14年実績で565億錠相当だった会員企業の生産能力を18~20年度には1000億錠相当まで引き上げる必要があります。
GE薬協によると、会員企業はすでに09~14年度の6年間で3216億円の設備投資を行っていますが、20年度までに追加で7000億円以上の設備投資が必要になるといいます。数量シェア80%に向け、大規模な設備投資は今後もしばらく続くことになります。
日医工 富山第一工場に新棟建設
16年3月期決算と併せて16~18年度の3ヵ年の中期経営計画を発表した日医工は、20年度に目標とする年間210億錠体制に向け、中計期間中に年間185億錠の生産体制を確立させる計画です。中計期間中の設備投資予定額は304億6000万円。18年4月の稼動開始を目指し、富山第一工場に新たな製剤棟の建設を計画しています。
東和 山形工場に追加投資
東和は昨年、政府の新目標設定を受けて増産計画を見直しました。従来は18年度に125億錠を計画していましたが、これを140億錠に上方修正。昨年9月には、山形工場の生産能力を25億錠から65億錠に引き上げるため、253億円を投じて増強することを決めました。
沢井も、昨年5月に発表した中計の見直し作業を進めています。中計では17年度に155億錠を掲げていますが、同社からは「新目標に対応するには17年半ばに180億錠が必要」との試算も出されており、計画は上方修正される見通しです。
海外生産の動きも 生き残りへコスト競争力強化
生産能力の増強に動くのは、後発品専業だけではありません。後発品事業を展開する新薬メーカーでも、後発品製造への設備投資は活発化しています。
日本ケミファがベトナムに新工場
日本ケミファは17年3月期に、前期の約2.5倍にあたる29億円の設備投資を計画。子会社・日本薬品工業のつくば工場(茨城県筑西市)の設備を増強するほか、ベトナムで新工場の建設を進めます。
ベトナム工場は18年度の生産開始を目指しており、18年度に見込む同社グループの年間製造量(年間20億錠)のうち6億錠の製造を担う予定です。
Meiji Seika ファルマはインドで
Meiji Seika ファルマは昨年2月、インドの後発品企業メドライクを買収しました。17年度から日本向けの製品供給を開始する予定で、追加の設備投資も行い、日本向けに年間30億錠以上の供給能力を確保する考えです。
両社が海外生産で狙うのは製造コストの削減。コスト競争力を高め、価格競争が激しさを増す後発品市場で生き残りを図ります。
使用目標の達成に向けて後発品市場はしばらく拡大を続ける見通しですが、目標達成後は数量の伸びも頭打ちとなり、薬価引き下げによって市場は縮小に向かうとの見方も少なくありません。各社とも拡大する需要を取り込もうと設備投資を急ぎますが、その一方で、「80%後」を見据えた動きも本格化してくるでしょう。