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市民と取り組む「医療のエコ活動」私たちが行っているアドボカシー活動の実例|コラム:現場的にどうでしょう

更新日

黒坂宗久

先月のコラムで、私が仕事にしている「アドボカシー活動」について、ロビイングとの違いを経験に基づく私見も交えて書いたところ、思った以上に多くの方に読んでいただきました。社内外から感想もいくつかいただき、皆さんに興味を持っていただけてとてもありがたいと感じました。

 

そんなわけで今月は、さらに一歩踏み込んで、私たちが実際に行っている活動の一部を、私たちが考える活動の意義とともにご紹介します。

 

製薬企業で働く方々は、医薬品で患者さんに貢献したいと思っているはずで、私もその1人です。ただ、それを実現しようとするにあたっては、世の中にいろいろな課題があり、皆さんご存じの通り製薬業界もさまざまな課題を抱えています。そうした課題によって必要な医薬品が患者さんに届きにくい現実があるとすれば、それは私たちにとってとても辛いことです。そうした厳しい現実を乗り越え、誰もが健康で文化的な生活を送れる「あるべき社会」を実現するため、私たちはアドボカシーという手段で社会を変えようとしています。

 

行政や政治が動いてくれないから、なんて言い訳をするのではなく、私たち一人ひとりができることを積み上げていくことで、望む社会に近づきたいと考えています。非常に理性的で、能動的で、かつ野心的な活動だと私は捉えています。これまで何度も書いてきましたが、アドボカシー活動は、さまざまな分野に同じ未来を見据える仲間を作り、それを1ミリメートルでも社会を前へと進める力に変えていく活動です。そうした点で、市民の方々との「共創」は、活動の中でも大切な要素となります。

 

アステラスでは、私たちが患者さんに提供する「価値」を「患者さんにとって真に重要なアウトカム」を分子に、「アウトカムを提供するためにヘルスケアシステムが負担するコスト」を分母に置いた分数の形で定義しています。アウトカムは想像の通り、薬の効果とか健康な生活といったもので、製薬企業はどの会社もこれを最大化するために仕事をしています。そして、アウトカムを提供するために社会が負うコストを同時に小さくすることができれば、患者さんへの価値はより大きくなるわけで、私はこの考え方がとても好きです。

 

目指す社会、市民と共創

そうした考えの下、私たちが取り組んでいる活動の1つに「医療のエコ活動」があります。社会保障の財源が逼迫し、必要な人が必要な医療を受けられない、必要な人に必要な医薬品が届かないといった状況が懸念される中、社会が負担するコストを小さくすることを目指した活動です。

 

活動の一歩目は、市民の皆さんに「医療は限りある資源である」ということを理解してもらうことです。限りある医療資源を大切にし、防げる病気は防ぎ、適切に医療を利用するという一人ひとりの行動を通じて、「すべての人がもっと健康に、患者さんが必要とする最先端の医療・治療法が持続的に受けられる社会」を目指しています。

 

この活動が最も進んでいるのが川崎市です。子育て世代の人たちを中心に市民団体がつくられ、イベントなどを通じて行政や企業、学生も巻き込みながら、医療のエコ活動を市民に広げていく動きにつながっています。こうした活動は、つくば市(茨城県)柏市(千葉県)中野区(東京都)静岡県京都府徳島県鳥取県などにも広がっています。

 

実際の活動を少しだけご紹介させていただきましたが、まだまだ語り尽くせないところがたくさんありますし、ほかにも行っている活動はあります。一人ひとりと目指す社会像を共有し、何気ない会話も含めてコミュニケーションを取りながら活動していると、自然と信頼関係が生まれます。そうすると、活動で知り合った方が思いもよらない分野の方を紹介してくれ、想像していなかった方向に仲間の輪が広がっていく、なんてことも少なくありません。時に想像を超える相乗効果が生まれることがあり、そうしたことを体感できるのがアドボカシー活動の醍醐味の1つだと私は思っています。

 

私たちが行っているアドボカシー活動について、もっと詳しい話を聞いてみたいという方がいらっしゃれば、お気軽にご連絡いただけたらありがたいです。繰り返しになりますが、アドボカシー活動は望む社会の実現に向けて仲間を増やしていく活動です。このコラムをきっかけに仲間に加わっていただき、一緒に活動できるとなれば、これほど嬉しいことはありません。

 

※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。

 

黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。アステラス製薬ヘルスケアポリシー部所属。免疫学の分野で博士号を取得後、約10年間研究に従事(米国立がん研究所、産業技術総合研究所、国内製薬企業)した後、 Clarivate AnalyticsとEvaluateで約10年間、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率、開発コストなど)を提供。2023年6月から現職でアドボカシー活動に携わる。SNSなどでも積極的に発信を行っている。
X(Twitter):@munehisa_k
note:https://note.com/kurosakalibrary
LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/mkurosaka/

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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