
3度目の中間年改定となる2025年度薬価改定が3月7日に告示されました。改定の概要をビジュアルを交えて詳報します。
改定範囲、医薬品のカテゴリごとに設定
25年度改定は、過去2回の中間年改定と異なり、平均乖離率5.2%を基準として医薬品のカテゴリごとに改定の対象範囲が設定されました。
過去2回は一律で「平均乖離率の0.625倍超」に該当する品目が対象でしたが、今回は▽新薬創出加算対象の新薬▽新薬創出加算対象外の新薬▽長期収載品▽後発医薬品▽その他――の5つに分けて対象範囲を設定。イノベーション推進と安定供給確保の観点から、新薬創出加算対象の新薬と後発品は「平均乖離率の1.0倍超」、新薬創出加算対象外の新薬は「平均乖離率の0.75倍」と過去2回から範囲を狭めた一方、長期収載品は「平均乖離率の0.5倍超」に広げました。
その結果、対象品目の数は、新薬創出加算対象の新薬が前回の240品目(カテゴリ全体の41%)から60品目(9%)に、後発医薬品が8650品目(82%)から5860品目(66%)に減少。全医薬品では1万3400品目(全体の69%)から9320品目(53%)へと縮小しました。
25年度改定では、▽基礎的医薬品▽最低薬価▽不採算品再算定▽新薬創出加算▽後発品の価格帯集約▽既収載品の外国平均価格調整▽既収載品の改定時加算――の各改定ルールを適用。長期収載品の薬価引き下げと再算定は、過去2回の中間年改定と同様に行われませんでした。
今回の改定では、中間年改定として初めて、新薬創出加算の累積額の控除を実施。薬価収載後の適応拡大などを評価する改定時加算も、中間年改定では初めて適用されました。
剤形ごとに薬価の下限を定めた最低薬価は、物価高騰を考慮し、一律約3%引き上げた上で適用。不採算品再算定は、物価高騰や安定供給問題への対応として、23年度中間年改定に続いて臨時・特例的に行われました。
429品目に不採算品再算定
医療上の必要性が高く、医療現場で長期間にわたり広く使われている医薬品の薬価を維持する「基礎的医薬品」は、413成分1455品目(告示数、品目数は2126品目)に適用されました。
不採算品再算定は、▽基礎的医薬品とされたものと組成や剤形区分が同じ品目▽安定確保医薬品のカテゴリAまたはBに位置付けられている品目▽厚生労働相が増産要請を行った品目――を対象品目の基本とし、乖離率が全医薬品の平均を上回るものは除外されました。その結果、182成分429品目(告示数、品目数は443品目)に適用され、幅広く適用した前回の中間年改定(328成分1100品目に適用)と比べると大きく減少しました。
2000年代に入って初めて引き上げが行われた最低薬価は、計680製品3231品目が対象となりました。今回の改定では、みなし最低薬価(最低薬価を下回っているもの)の品目も、同じ組成・剤形区分の品目全体の平均乖離率が全体の平均乖離率を下回っていれば最低薬価まで引き上げることとされ、その対象は277成分891品目でした。
加算返還「ステラーラ」「ジャヌビア」など
要件を満たした特許期間中の薬価を維持する新薬創出加算は、372成分605品目(告示数)が対象となりました。
今回、中間年改定で初めて行われた加算累積額の控除は、21成分46品目が対象。これらの品目は、次の通常改定を待たずにこれまでより1年早く加算を返還することになりました。控除額はあわせて約562億円です。
主な品目の引き下げ率を見てみると、ヤンセンファーマの抗精神病薬「リスパダール コンスタ」が最大50.1%、同社の乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎治療薬「ステラーラ」が40.8%の引き下げ。ノバルティスファーマのDPP4阻害薬「エクア」は29.5%、MSDの同「ジャヌビア」は最大27.4%、ジャヌビアと同成分の「グラクティブ」(小野薬品工業)は最大26.0%の引き下げとなります。
今回の改定では、新薬創出加算の対象品目を比較薬として薬価算定された品目について、比較薬の累積加算分を控除するルールが初めて適用の時期を迎えました。このルールは20年度の薬価制度改革で新設されたもので、収載から4年経過後の初めての改定(収載後3回目の改定)に控除を行うことになっています。今回、対象となったのは7成分12品目で、控除額は約100億円です。
改定時加算、21成分45品目に
中間年改定で初めて行われた既収載品の改定時加算は、計21成分45品目に適用されました。最も多いのは小児適応の追加で13成分26品目。希少疾病の適応追加が4成分9品目、迅速導入加算の要件を満たす適応追加が2成分2品目で、先駆的医薬品の適応追加と真の臨床的有用性の検証がそれぞれ1成分ずつとなっています。
小児適応では、ノバルティスファーマの慢性心不全治療薬「エンレスト」などが20%の加算を獲得。真の臨床的有用性の検証では、同一成分の肥満症治療薬「ウゴービ」と糖尿病治療薬「オゼンピック」(いずれもノボノルディスクファーマ)が5%の加算を取得しました。