2025年に国内で発売が見込まれる主な新薬を、領域別に2回に分けて紹介します。1回目は「がん(固形がん・血液がん)」「精神・中枢神経」「神経・筋」領域です。
- 1回目:領域)がん(固形がん・血液がん)、精神・中枢神経、神経・筋
- 2回目:領域)循環器・代謝・腎、消化器、眼、感染症・ワクチン、その他
INDEX
【がん】ベイジーン、BTK阻害薬で日本参入 第一三共は2つ目のADC投入
中国発のバイオテック、ベイジーンが今年、日本市場に参入します。昨年末に承認されたBTK阻害薬「ブルキンザカプセル」(一般名・ザヌブルチニブ)は、2023年に世界で約2000億円を売り上げた同社の最主力品。BTK阻害薬としては国内5剤目となりますが、市場にどう切り込んでいくかが注目されます。同社は抗PD-1抗体チスレリズマブも食道扁平上皮がんの適応で申請中で、こちらも年内に発売となる見込みです。
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第一三共の乳がん治療薬「ダトロウェイ点滴静注用」(ダトポタマブ デルクステカン)は、同社にとって2製品目となる抗体薬物複合体(ADC)。がん細胞に高発現するTROP2を標的としており、化学療法歴のあるホルモン受容体陽性・HER2陰性の手術不能・再発乳がんの適応で先月承認されました。抗TROP2 ADCとしては、昨年発売された「トロデルビ」(ギリアド・サイエンシズ)に続く国内2剤目。順調に行けば春ごろの発売が見込まれます。
目立つADCと二重特異性T細胞誘導抗体
ヤンセンファーマはがん領域で4つの新薬が申請段階に控えており、今年は新薬ラッシュとなりそうです。FGFR阻害薬「バルバーサ錠」(エルダフィチニブ、尿路上皮がん)はすでに承認されており、EGFR阻害薬ラゼルチニブは昨年同社が発売した抗EGFR/MET二重特異性抗体「ライブリバント」(アミバンタマブ)との併用療法を非小細胞肺がんの適応で申請中。残る2品目は二重特異性T細胞誘導抗体で、抗BCMA/CD3二重特異性抗体「テクベイリ皮下注」(テクリスタマブ)は昨年末に承認を取得。抗GPRC5D/CD3二重特異性抗体トアルクエタマブも申請中です。BCMAとGPRC5Dはいずれも多発性骨髄腫細胞の表面に高発現するタンパク質です。
中外製薬は濾胞性リンパ腫治療薬として二重特異性T細胞誘導抗体「ルンスミオ点滴静注」(モスネツズマブ)を発売する見込み。アムジェンの小細胞肺がん治療薬「イムデトラ点滴静注用」(タルラタマブ)も二重特異性T細胞誘導抗体で、DLL3とCD3を標的としています。
多発性骨髄腫では、グラクソ・スミスクライン(GSK)の抗BCMA ADCベランタマブ マホドチンが、米国から5年遅れで今年承認を取得する見通しです。ジェンマブが申請中のチソツマブ ベドチンは、組織因子(TF)を標的とするADCで、子宮頸がんを対象に申請中。ファイザーと共同開発していますが、日本での展開はジェンマブが行う予定です。血液がん治療薬「エプキンリ」を販売する同社は、今後5年で固形がん領域でプレゼンスを高めていく方針を表明しており、同薬はその足掛かりとなりそうです。
【精神・中枢神経】期待高い片頭痛薬リメゲパント、東和は初の新薬
精神・中枢神経では5つの新薬が申請中です。注目はファイザーの経口CGRP受容体拮抗薬リメゲパント。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)関連薬としては4剤目となりますが、先行する3剤はすべて抗体医薬で予防の適応しか持たないのに対し、リメゲパントは経口で予防と急性期治療の両方で申請しています。鎮痛薬で問題となる使用過多による頭痛のリスクが低いとも考えられており、承認への期待が高い薬剤です。
塩野義製薬のズラノロンは、新規作用機序のうつ病治療薬。米セージ・セラピューティクスが開発したGABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターです。大正製薬が申請中の不眠症治療薬ボルノレキサント水和物は、承認されれば国内4剤目のオレキシン受容体拮抗薬となります。
東和薬品は、持続放出性リバスチグミン経皮吸収型製剤をアルツハイマー型認知症治療薬として申請中。スイスのLuyePharmaから2020年に導入した週2回の貼付剤で、後発医薬品メーカーの東和にとって初の新薬となります。アキュリスファーマは同社初の製品となる抗てんかん薬ジアゼパム点鼻液が今年承認される見通しです。
精神・中枢神経では治療用アプリの開発も活発で、塩野義が小児ADHD治療用アプリを、CureAppが減酒治療用アプリを申請中。CureAppの減酒治療用アプリは、ライセンス契約に基づいてサワイグループHDが販売します。デジタルセラピューティクス(DTx)では、サスメドが23年に承認を取得した不眠障害治療用アプリについて、保険収載に向けた承認事項一部変更承認を申請中。保険適用されれば提携先の塩野義が販売します。今年は治療用アプリの動向にも注目が集まりそうです。
【神経・筋】バイオジェンのALS治療薬が発売へ、DMDに初の遺伝子治療
バイオジェン・ジャパンの「クアルソディ髄注」(トフェルセン)は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対するアンチセンス核酸。SOD1mRNAに結合し、SOD1タンパク質の生成を抑制するよう設計されています。家族性ALSに対する国内初の治療薬として、昨年末に承認されました。春の薬価収載後すぐに発売する考えです。
中外製薬はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する単回投与の遺伝子治療薬delandistrogene moxeparvovecを申請中。想定する投与対象は「エクソン8および・またはエクソン9を含む欠失変異を有さず、抗AAVrh74抗体が陰性の3~7歳の歩行可能な男児」。承認されればDMDに対する初の遺伝子治療薬となります。
ダイドーファーマのランバート・イートン筋無力症候群「ファダプス錠」(アミファンプリジンリン酸塩)は昨年11月に薬価収載。今年の発売が見込まれ、DyDoグループは医療用医薬品に本格参入します。
サンバイオは、昨年条件・期限付き承認を取得した外傷性脳損傷向け再生細胞薬「アクーゴ脳内移植用注」(バンデフィテムセル)について、今年5~7月までの販売開始を目指しています。同薬は市販品と治験製品の同等性/同質性を評価し、必要な承認事項一部変更承認を取得するまで出荷しないことが承認条件の1つとされており、一変申請に向けた市販品の製造とその規格試験、特性解析を進めています。