きょう10月1日から、長期収載品の選定療養がスタートします。長期収載品を希望する患者に対し、後発医薬品との差額の一部の自己負担を求めるもので、1096品目の長期収載品が対象となります。国は、後発品への置き換えを促進することで、製薬企業に長期収載品に依存しない研究開発型のビジネスモデルへの転換を促すとしていますが、後発品の供給不足が解消されない中、目論見通り置き換えが進むかは不透明です。
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差額の4分の1を患者負担に
新制度は、長期収載品(先発医薬品)と最も薬価の高い後発品との差額の4分の1を選定療養として保険適用外とし、患者に負担を求めるもの。たとえば、ある長期収載品の薬価を500円、その後発品を250円とすると、差額の4分の1にあたる62.5円に消費税を加えた68.75円が自己負担に上乗せされます。3割負担の場合、500円から62.5円を引いた437.5円の3割(131.25円)が通常の自己負担分となり、患者の負担は総額で200円になります。9月までと比べると50円負担が増えます。
選定療養の対象となるのは、患者が「使用感」や「味」など医薬品の有効性に関係ない理由で長期収載品の処方を希望した場合。子ども医療費助成など国や自治体による公費負担医療の対象者にも適用されます。
一方、医療上の必要性があると認められる場合や、在庫がなく後発品を提供できない場合、院内処方の医療機関で院内採用品に後発品がない場合は選定療養とせず、従来通りの自己負担となります。入院中の患者も対象外です。
厚生労働省は、医療上の必要があると認められるケースとして▽長期収載品と後発品で承認された効能・効果に違いがある▽後発品を使用した際に、副作用、相互作用、治療効果に違いがあったと医師が判断した▽ガイドラインで後発品に切り替えないことが推奨されている▽剤形上により長期収載品を処方する医療上の必要がある――などが想定されるとしています。
供給不安で実効性は?
選定療養の対象となる長期収載品は、(1)後発品の収載から5年経過、(2)後発品への置き換え率が50%以上、のいずれかに該当する品目。置き換え率が1%未満の品目やバイオ医薬品は対象外です。対象品目は制度開始時点で1096品目あり、一覧は厚生労働省のホームページに掲載されています。
日本システム技術が2023年の1年間の医科外来・調剤レセプトデータを分析したところ、長期収載品が処方されている患者は全体の46.1%で、その全員が今後も長期収載品の継続を希望した場合、患者1人あたり平均で年間608円の負担増となる可能性があることがわかりました。中には10万円超の負担増となるものもあります。
選定療養費全体に占める医薬品ごとの割合は、保湿剤「ヒルドイド」のローション剤が1位、ソフト軟膏剤が2位で、あわせて全体の2割近くを占めます。両剤は後発品の価格差が3倍程度あり、処方量も非常に多いため影響が大きくなる可能性があると同社は分析しています。
負担増は後発品への切り替えを後押しする可能性がある一方、供給不安が解消されない中でどれだけ実効性があるかは不透明です。逆に、供給不安に拍車をかけるのではないかと懸念する声も聞かれます。
長期収載品の選定療養化は後発品メーカーにとって追い風となる一方、対象品目を持つ先発品メーカーでは業績を押し下げるリスクになり得ますが、双方とも現時点では影響を測りかねている企業も多いようです。選定療養の対象となる長期収載品を持つメーカーは制度開始時点で100社。対象品目が最も多いのは49成分の田辺三菱製薬で、住友ファーマ(46品目)、ヴィアトリス製薬(44品目)、武田テバ薬品(38品目)、エーザイ(36品目)と続きます。