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ベルギーUCB、日本市場に攻勢…22年以降5新薬相次ぎ発売、自社販売に路線転換し業績拡大へ

更新日

穴迫励二

ベルギーのUCBが日本市場に攻勢をかけています。神経と免疫・炎症に希少疾患を含めた領域で、ここ数年は欧米とほぼ同じタイミングでの承認・発売を実現。複数の新薬投入で事業展開は新たなステージを迎えており、販売もパートナリングから自社へと切り替え、中長期の成長軌道に乗せたい考えです。ベルギー本社から来日したジャン-クリストフ・テリエCEOらが9月18日に記者会見を開き、日本事業の展望を語りました。

 

 

5新薬、ピーク時売上高予測は計600億円超

日本法人ユーシービー・ジャパンの業績(決算公告)は、抗てんかん薬「イーケプラ」に後発医薬品が参入したことで、2022年に前年比42.1%減の395億円と落ち込みました。23年も5.8%減の372億円と低迷しています。現在、国内では12製品を展開していますが、売り上げが最も大きいのは同「ビムパット」。販売提携先の第一三共が24年3月期で257億円を計上しています。

 

従来からの製品群はすべて、提携先の他社が販売を行っており、収益性は相対的に高くありません。関節リウマチ・乾癬治療薬「シムジア」はアステラス製薬、抗アレルギー薬「ザイザル」はグラクソ・スミスクライン、同「ジルテック」は同社と第一三共が販売。現在は自社販売しているイーケプラも、もともとは大塚製薬が販売し、両社で共同販促を行ってきました。

 

【ユーシービージャパンの売上高】〈年度/売上高〉21/682.63|22/395.36|23/372.24|※ユーシービージャパンの決算公告をもとに作成。単位は億円

 

転換点となったのは22年4月の乾癬治療薬「ビンゼレックス」発売です。グローバルでも大型化を期待する製品で、国内ではピーク時に年間120億円の販売を予測。発売後に乾癬性関節炎や強直性脊椎炎など新たな適応も取得しており、今後の主軸に据えたい考えで、発売時から自社販売を行っています。

 

テリエCEO「10年超える成長軌道に」

同薬の発売を契機に、日本ではこの2年4カ月の間に5つの製品を相次いで市場に投入。「新薬ラッシュ」を迎えています。23~24年に発売した全身型重症筋無力症治療薬の「リスティーゴ」と「ジルビクス」は合わせて約300億円のピーク時売上高を予想。今年8月に発売した「ブリィビアクト」は部分発作を適応とする抗てんかん薬として8年ぶりの新薬となりました。22年4月以降に発売した5新薬のピーク時売上高予測は合計で600億円を超える規模で、適応拡大も含めると市場はさらに拡大する可能性があります。

 

こうした状況からテリエ氏は会見で、「10年を超える成長軌道に乗った」と強調。特に、近年発売した新薬は欧米と同じタイミングで承認取得できているとし、「グローバル治験に日本の患者を組み込んでいくことに努力してきた」と胸を張りました。

 

【ユーシービージャパン 22年以降に日本で発売した新薬】売上高は億円、患者数は人。〈製品名/発売時期/ピーク時売上高予測/ピーク時患者数/適応症〉ブリィビアクト/24年8月/178/48,000/てんかんの部分発作|ジルビスク/24年2月/89/299/全身型重症筋無力症|リスティーゴ/23年1月/204/1,300/全身型重症筋無力症|フィンテプラ/22年11月/30/539/"ドラベ症候群に伴うてんかん発作|ビンゼレックス/22年4月/120/5,600/乾癬|※中医協資料などをもとに作成

 

MR数は現状維持示唆

製品ラインアップの拡充に合わせ、営業体制も再構築。ビンゼレックス以降に発売した5新薬は、日本新薬に販売委託した抗てんかん薬「フィンテプラ」を除いて自社で販売しています。ただ、テリエ氏とともに来日したCCO(チーフコマーシャルオフィサー)のエマニュエル・ケイマックス氏(日本法人前社長)は「多くのMRを採用しても病院の中で医師にアクセスするのは難しい」とし、現在300人程度のMRを大きく増やす考えはないことを示唆。デジタルチャネルを活用し、「数字だけのゲームにならないようにしていく」と話しました。

 

今後発売する新製品も、基本的には自社で販売を行っていく方針ですが、領域によってはパートナーと手を組む可能性があるとしています。

 

ユーシービー・ジャパンは、国内で事業活動する外資としては上位10社にも入らない規模です。ケイマックス氏は、主力品の特許切れで落ち込んだ売上高について、22年以降に投入した新薬で「中期的には(21年の水準に)完全に戻る」と見込んでいます。

 

ただ、1000~2000億円という規模を目指せるかというと、乾癬など自己免疫疾患の患者数が欧米と比べて少ないことなどから「急速な伸びにはならないかもしれない」と慎重な見通しを示しました。期待のビンゼレックスについて、競合が激しい乾癬などの領域で「IL-17阻害薬のリーダーになるという第一の目標は達成できた」と強調。「段階的アプローチの第一歩が成功裏に完了した」とし、攻勢を強めるステージに入ったと話しています。

 

都内で記者会見したベルギーUCBのジャン-クリストフ・テリエCEO(左)とエマニュエル・ケイマックスCCO

 

パイプラインにアルツハイマーやアトピー性皮膚炎など

パイプラインに目を向けると、国内で臨床第3相(P3)試験以降の段階に進んでいるのは5成分。ビンゼレックスの化膿性汗腺炎への適応拡大は9月に承認され、ブリィビアクトの小児適応など4成分で適応拡大に向けたP3試験を実施中です。グローバルでは新規10成分が臨床段階に入っており、国内に患者がほとんどいない疾患を除いて多くの成分を日本でも開発する予定です。

 

アルツハイマー病を対象に開発中の抗タウ抗体ペプラネマブ(一般名)は、疾患修飾薬として早期から治療することで患者の転帰を帰ることを目指しています。パーキンソン病を適応とするminzasolmin(同)は「最も新しい作用機序」(テリエ氏)といい、アトピー性皮膚炎でも開発品を抱えています。売上高に対する研究開発費の比率は23年に約30%に達しています。

 

ケイマックス氏は「ここ数年はパイプラインへの投資の時期であり、(現在は)その谷を過ぎ去った」としており、今後は患者インパクトを高めて業績向上につなげていく考えです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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