(写真:ロイター)
2024年4月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
INDEX
【新薬】CXCR4経路を標的とするWHIM症候群治療薬など
がん
Anktiva|米イミュニティバイオ
IL-15受容体アゴニスト「Anktiva」(一般名・nogapendekin alfa inbakicept)は、BCG不応性の筋層非浸潤性膀胱がん治療薬。BCGと併用します。同薬は、患者のNK細胞とキラーT細胞を活性化させてがん細胞を攻撃するとともに、メモリーT細胞を刺激して長期の奏功を実現。臨床試験では47カ月を超える完全奏効期間を示しました。
Ojemda|米デイ・ワン
タイプIIのRAF阻害薬「Ojemda」(tovorafenib)は、生後6カ月以降の小児のBRAF V600変異陽性の再発・難治性の低悪性度神経膠腫に対する治療薬。奏効率51%を示した臨床第2相(P2)試験の結果をもとに迅速承認されました。
感染症
Zevtera|スイス・バシリア
「Zevtera」(ceftobiprole medocari)は、新規のセファロスポリン系抗菌薬。▽右側心内膜炎を含む成人の黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)▽成人の急性細菌性皮膚および皮膚構造感染症(ABSSSI)▽生後3カ月以降の市中細菌性肺炎(CABP)――の治療に使用されます。欧州など数カ国でもCABP治療薬として承認されています。
Pivya|米ユーティリティ
ペニシリン系抗菌薬「Pivya」(pivmecillinam)は、成人女性の尿路感染症治療薬。欧州では40年以上にわたって使用されてきたもので、ユーティリティ・セラピューティクスは2018年にデンマークのレオファーマから同薬の権利を取得しました。
血液
Beqvez|米ファイザー
「Beqvez」(fidanacogene elaparvovec)は、成人の血友病Bに対する遺伝子治療薬。1回の投与で患者自身が第IX因子を産生できるように設計されており、標準治療と比べて持続的な出血予防効果が確認されています。欧州やカナダでも申請中で、日本でもP3試験段階にあります。
Xromi|英ノバラボラトリーズ
鎌状赤血球症治療薬「Xromi」は、代謝拮抗薬hydroxyureaの経口内服液。中等症から重症の有痛性クリーゼを伴う生後6カ月から2歳未満の小児患者に使用されます。従来はカプセル剤と錠剤のみでした。Xromiは欧州でも2019年に承認されています。
神経・筋
Libervant|米アクエスティブ
「Libervant」は、diazepamのバッカルフィルム製剤。2歳から5歳の小児てんかん患者の群発発作の急性治療に使用されます。
その他
Xolremdi|米X4
CXCケモカイン受容体4(CXCR4)アンタゴニストの「Xolremdi」(mavorixafor)は、12歳以上のWHIM症候群治療薬。同疾患はCXCR4経路の障害によって引き起こされるもので、原発性免疫不全と慢性好中球減少を併発する疾患です。従来の治療は支持療法が中心で、根本原因を標的とする治療薬は初めて。31人の患者を対象とするP3試験の結果をもとに承認されました。
【適応拡大】「Enhertu」のがん種横断的適応 「Alecensa」アジュバント療法など
がん
Enhertu|第一三共
抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「Enhertu」(trastuzumab deruxtecan)は、「前治療歴があり代替の治療手段のない切除不能または転移性のHER2陽性固形がん」に適応拡大。非小細胞肺がん、大腸がん、その他進行固形がんを対象とする3つのP2試験の結果に基づき迅速承認を取得しました。がん種横断的に承認された抗HER2療法は初めて。オーストラリアやカナダでも申請中です。
Alecensa|スイス・ロシュ
「Alecensa」(alectinib)は、ALK陽性非小細胞肺がんの腫瘍切除後のアジュバント療法として承認。P3試験では、再発や死亡のリスクを化学療法と比べて76%減少させることが示されました。早期非小細胞肺がんでは、切除後に補助療法を受けても患者の半数近くは再発することが知られており、アンメットニーズを満たす選択肢として期待されています。日本と欧州でも申請中です。
Lutathera|スイス・ノバルティス
放射線リガンド療法「Lutathera」(lutetium lu 177 dotatate)は、「ソマトスタチン受容体陽性の膵消化管神経内分泌腫瘍」の適応で12歳以上の小児に対象を拡大しました。成人に対しては17年に欧州、18年に米国、21年に日本で承認されています。
Tivdak|米ファイザー(シージェン)
抗TF ADC「Tivdak」(tisotumab vedotin)は、「再発・転移性の子宮頸がん」の適応で完全承認を取得しました。対象は、化学療法を受けているまたは受けたあとに進行した患者です。同薬はファイザーが23年に買収した米シージェンと、デンマークのジェンマブが共同開発したもので、米国では2021年に迅速承認。完全承認の根拠となったP3試験では、化学療法に比べて全生存期間を有意に延長しました。日本と欧州でも申請中です。
皮膚
Rinvoq|米アッヴィ
JAK阻害薬「Rinvoq」(upadacitinib)は、▽小児の乾癬性関節炎▽若年性特発性関節炎――に適応拡大。いずれもTNF阻害薬で治療不十分か抵抗性の2歳以上の患者が対象で、両適応で使用できる経口内服液も承認されました。
精神・中枢神経
Fanapt|米バンダ
抗精神病薬「Fanapt」(iloperidone)は、双極性障害1型の躁病エピソードや混合性エピソードの急性治療に使用できるようになりました。約400人の患者を対象に行った臨床試験では、プラセボと比べて有意に症状を改善。同薬は2009年に統合失調症治療薬として承認されています。
呼吸器
Fasenra|英アストラゼネカ
喘息治療薬「Fasenra」(benralizumab)は、6~11歳の小児の維持療法に適応拡大。国際共同P3試験の結果をもとに承認されました。日本でも今年3月に小児に対象を拡大しています。
消化器
Entyvio|武田薬品工業
抗α4β7インテグリン抗体「Entyvio」(vedolizumab)は、皮下注製剤(プレフィルドペン製剤)が「中等症から重症の活動期クローン病」に適応拡大しました。点滴静注製剤による導入療法後の維持療法に使用します。米国では、皮下注製剤が23年に潰瘍性大腸炎の適応で承認。日本でも2つの適応で承認済みです。
【バイオシミラー】アルボテックのustekinumabなど
Selarsdi|アイスランド・アルボテック
米国で2番目となる抗IL-12/23p40抗体「Stelara」(ustekinumab)のバイオシミラー。米国では提携先のイスラエル・テバが販売を行う予定で、先発品の製造元の米ジョンソン・エンド・ジョンソンとの契約に基づいて来年2月以降に発売される見通しです。
Hercessi|米アコード
抗HER2抗体「Herceptin」(trastuzumab)のバイオシミラー。同薬のバイオシミラーは米国で6剤目。中国の上海ヘンリウスバイオテックが開発したもので、アコードは21年に北米での権利を獲得しました。
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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