海外の大手製薬企業20社の2023年の業績を、▽売り上げ・利益▽研究開発費▽主力製品売上高▽疾患領域・事業別売上高▽地域別売上高――の5つの切り口からチャートで解説します。
【チャートで見る】海外製薬大手2023年業績
(1)売上高・利益 |
売上高トップはロシュ
2023年の世界売上高トップはスイスのロシュ(670億9000万ドル)。2位は米メルク(601億1500万ドル)、3位は米ファイザー(584億9600万ドル)でした。前年首位のファイザーが新型コロナワクチン・治療薬の需要減で4割の減収となった一方、ロシュは新型コロナ治療薬の販売減の影響を多発性硬化症治療薬「Ocrevus」などで緩和。メルクは免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」が好調を維持しました。
純利益も127.63億ドルを確保したロシュがトップ。2位はデンマークのノボノルディスク(125.52億ドル)、3位はスイスのノバルティス(85.72億ドル)でした。米ジョンソン・エンド・ジョンソンは、医療用医薬品事業(イノベーティブ・メディスン事業)の税引き前利益が182.46億ドルに達しました。
売上高の伸び率はノボが最大
売上高の前年からの伸び率を見てみると、最大はデンマークのノボノルディスク。糖尿病治療薬「オゼンピック」や肥満症治療薬「ウゴービ」の好調な販売を背景に31%の増収となりました。2位は糖尿病治療薬「マンジャロ」が拡大する米イーライリリー(20%増)。世界的に需要が高まるGLP-1受容体作動薬を手掛ける2社が売り上げを大きく伸ばしました。
純利益の伸び率は81%増の英アストラゼネカが最大。売上原価の低減と製品の権利売却など一過性の収入により利益が膨らみました。増益率2位は51%増のノボ、3位は42%増のノバルティスでした。
一方、コロナ関連製品が落ち込んだファイザーや、M&Aで研究開発費が膨らんだメルクなどは9割超の減益。ほかにも、英グラクソ・スミスクラインや米バイオジェン、米アッヴィなど、大幅減益となる企業が目立ちました。
利益率もノボがトップ
売上高に対する純利益の比率を見てみると、トップは36%のノボノルディスク。2位は30%の米リジェネロン、3位は24%の米アムジェンでした。J&Jは医療用医薬品の税引き前で33%の利益率を確保。独バイエルも同事業のEBITが22%となりました。
純利益が93%減となったファイザーの純利益率は4%まで低下。研究開発費の増加で97%の最終減益となったメルクも利益率は1%にとどまりました。