4月に行われる2024年度薬価改定の内容が3月5日、告示されました。改定の概要をビジュアルを交えて詳報します。
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「ドラッグ・ラグ/ロスの解消」と「後発医薬品をはじめとする医薬品の安定供給」が大きなテーマとなった24年度の薬価改定。2年に1回の通常改定にあたる今回の改定率は、医療費ベースでマイナス0.97%、薬剤費ベースでマイナス4.67%。このうち、実勢価に基づく改定分は医療費ベースでマイナス0.83%、薬剤費ベースでマイナス4.00%となります。
新薬創出加算、49成分が平均乖離率上回り薬価維持できず
新薬創出・適応外薬解消等促進加算の適用を受けるのは314成分506品目で、これらは改定前の薬価が維持されます。
24年度の薬価制度改革では、企業の新薬開発の実績に応じて加算に差をつける「企業指標」が廃止され、対象品目は改定前の薬価を維持できるよう加算額の計算式を変更。一方で、乖離率が全医薬品の平均を上回る品目には加算を適用せず、5年間新薬開発の実績がない企業の品目は対象から除外する見直しも行われました。
今回の改定では、49成分78品目が乖離率の要件によって薬価を維持できず、6社の7成分10品目が企業要件で加算の対象外となりました。薬価が維持されなかった品目には、糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬などが含まれています。
後発品が収載されるなどして加算の対象から外れ、これまでの加算額を控除(返還)したのは79成分149品目。24年度改定での加算額は計約314億円だった一方、控除額は計約885億円に上りました。
新薬創出加算の対象となった成分数が最も多かったのは、24成分のノバルティスファーマ。2位は19成分のサノフィ、3位は18成分のヤンセンファーマと武田薬品工業でした。
改定時加算、9成分が「充実」の恩恵
薬価収載後の適応拡大やエビデンスの構築を評価する改定時加算は、計13成分23品目が対象となりました。内訳は▽小児適応の追加が11成分19品目▽希少疾病の適応追加が1成分2品目▽特定用途の適応追加が1成分2品目▽市販後の真の臨床的有用性の検証が1成分2品目――となっています。
24年度の薬価制度改革では、小児や希少疾病の適応追加に関する加算について、治験実施の困難さなどを踏まえて加算率を柔軟に判断できるよう運用の見直しを行うこととされ、今回の改定では合わせて9成分がこの恩恵を受けました。ノバルティスファーマのJAK阻害薬「ジャカビ錠」は、小児と希少疾病の2つの加算が併算定され、8.3~9.0%の薬価引き上げとなります。
市場拡大再算定「オプジーボ」共連れで15%引き下げ
市場拡大再算定は23成分38品目に適用されます。
引き下げ幅が大きいのは、バイエル薬品の抗がん剤「ネクサバール錠」(マイナス31.3%)やギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー点滴静注用」(マイナス25.0%)、中外製薬の視神経脊髄炎スペクトラム障害治療薬「エンスプリング皮下注」(同)など。ネクサバールはエーザイの「レンビマカプセル」の類似品として再算定を受けましたが、レンビマは「真の臨床的有用性の検証に係る加算」で下げ幅が緩和されており、ネクサバールの方が引き下げ幅が大きくなりました。
再算定が繰り返し適用されている免疫チェックポイント阻害薬では、メルク・バイオファーマの「バベンチオ点滴静注」と、その類似品として小野薬品工業の「オプジーボ点滴静注」が対象となりました。引き下げ率はいずれも15.0%。24年度薬価制度改革では、市場拡大再算定の類似品の扱いについて、免疫チェックポイント阻害薬を念頭に特定の領域で適用を除外することになっていますが、見直しが適用されるのは4月以降の四半期再算定からで、オプジーボは「共連れ」を免れることはできませんでした。