1. Answers>
  2. AnswersNews>
  3. ニュース解説>
  4. 海外新薬承認情報(2023年4月分)
ニュース解説

海外新薬承認情報(2023年4月分)

更新日

亀田真由

2023年4月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。

 

【新薬】SOD1遺伝子変異ALS治療薬「Qalsody」やマイクロバイオーム医薬品「Vowst」など

【2023年4月に米FDAが承認した主な新薬】|※*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー<製品名(一般名)/社名/適応>Rizafilm(rizatriptan)/カナダIntelGenx/片頭痛(フィルム製剤、12歳以上)|Qalsody(tofersen)*/米バイオジェン/SOD1遺伝子変異を有する筋萎縮性側索硬化症(成人)|Abilify/Asimtufii(aripiprazole)/大塚製薬|成人の統合失調症、双極I型障害(2カ月持続性注射剤)|Omisirge(omidubicel)*★/イスラエル・ガミダセル|骨髄破壊的前処置後に臍帯血移植を予定している血液がん(12歳以上)/Vowst*★/米セレス/クロストリジオイデス・ディフィシル感染症の再発予防(18歳以上)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Qalsody」米バイオジェン

「Qalsody」(一般名・tofersen)は、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬として迅速承認を取得しました。同薬はSOD1 mRNAに結合し、SOD1タンパク質の生成を抑制するように設計された核酸医薬。臨床試験では、神経変性バイオマーカーのニューロフィラメント(損傷を受けたニューロンから放出されるタンパク質)の減少が認められました。欧州でも申請中で、日本では臨床第3相(P3)試験を進めています。

 

「Abilify Asimtufii」大塚製薬

「Abilify Asimtufii」(aripiprazole)は、抗精神病薬アリピプラゾールの2カ月持続性注射剤です。適応は、成人の統合失調症と双極I型障害。臨床試験では従来の1カ月製剤と同様に安定した血中濃度を維持し、効果が持続することが確認されました。

 

「Omisirge」イスラエル・ガミダセル

「Omisirge」(omidubicel)は、放射線療法や化学療法といった骨髄破壊的前処置後に臍帯血移植を予定している血液がん患者に使用する、臍帯血由来の改変型他家細胞医薬。移植後の好中球回復までの期間短縮と感染症の抑制を目的に、幹細胞移植の新たなドナーソースとして承認されました。現在はさまざまな背景で幹細胞移植を受けられない患者もいますが、同薬の承認により治療アクセスが拡大すると期待されています。

 

「Vowst」米セレス・セラピューティクス

「Vowst」は、クロストリジオイデス・ディフィシル感染症(CDI)の再発予防に使用されるマイクロバイオーム医薬品。再発CDIの抗菌薬治療を受けた18歳以上の患者が対象です。ドナーの便から抽出した腸内細菌を含むカプセル製剤で、腸内細菌叢製剤としては初の経口投与可能な製剤。臨床試験では、治療を受けた患者の88%で投与後8週間、再発を抑制しました。米国ではネスレヘルスサイエンス(スイス)と共同で商業化する予定です。

 

【適応拡大】「Padcev」+「Keytruda」の転移性尿路上皮がん1次治療など

【2023年4月に米FDAが承認した主な適応拡大】|※*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー<製品名(一般名)/社名/適応>Padcev(enfortumab/vedotin)+Keytruda(pembrolizumab)*★/アステラス製薬/米メルク/局所進行性または転移性尿路上皮がん(シスプラチン不適応成人患者の一次治療)|Tepezza(teprotumumab)/アイルランド・ホライゾン/甲状腺眼疾患(活動性や期間に関わらない)|Qulipta(atogepant)/米アッヴィ|慢性片頭痛(成人)/Polivy(polatuzumab/vedotin)/米ジェネンテック/成人の未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(+R-CHP)/【完全承認】2つ以上の前治療を受けた再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(+bendamustine+rituximab)|Trikafta(elexacaftor/tezacaftor/ivacaftor)/米バーテックス/嚢胞性線維症(2~6歳未満の小児)|Sogroya(somapacitan)/デンマーク・ノボ/成長ホルモン分泌不全性低身長症(2歳半以上の小児)|※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Padcev」+「Keytruda」アステラス製薬/米メルク

アステラス製薬の抗ネクチン4抗体薬物複合体(ADC)「Padcev」(enfortumab vedotin)と米メルクの抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)の併用療法は、局所進行・転移性尿路上皮がんの1次治療として迅速承認を取得。シスプラチン不適応の患者が対象です。完全承認に向けた国際共同P3試験を進めており、同試験の結果をもとにグローバルで申請を行う予定です。

 

「Tepezza」アイルランド・ホライゾン セラピューティクス

甲状腺眼疾患(TED)治療薬「Tepezza」(teprotumumab)は、疾患の活動性や期間にかかわらず使用できるようになりました。TEDは眼球突出症や複視などを引き起こす自己免疫疾患で、進行すると失明につながるおそれがあります。同薬はインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)を標的とする抗体で、米国では2020年にTED治療薬として承認。日本では昨年2月にP3試験を開始しました。

 

「Qulipta」米アッヴィ

CGRP受容体拮抗薬「Qulipta」(atogepant)は、慢性片頭痛に適応拡大。プラセボ対照のP3試験では、1カ月あたりの平均片頭痛日数をベースラインから有意に減少させました。同薬は米国で21年に反復性片頭痛の予防薬として承認。欧州では反復性と慢性の片頭痛を対象に申請中で、日本ではP3試験の段階にあります。

 

「Polivy」米ジェネンテック

抗CD79b ADC「Polivy」(polatuzumab vedotin)は、R-CHP(リツキシマブとシクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾン)との併用療法が「未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」の適応で承認を取得。P3試験では、R-CHOPのみの群と比べて病勢進行や再発、死亡のリスクを有意に低下させました。適応拡大と同時に「2つ以上の前治療を受けた再発・難治性DLBCL」に対するリツキシマブ、ベンダムスチンとの併用療法についても完全承認を取得。同適応では2019年に迅速承認を取得していました。

 

「Trikafta」米バーテックス

嚢胞性線維症治療薬「Trikafta」(elexacaftor/tezacaftor/ivacaftor)は、2歳から6歳未満の小児に対象を拡大。顆粒製剤も承認されました。CFTR遺伝子に少なくとも1つのF508del遺伝子変異を持つか、Trikaftaに反応する遺伝子変異(in vitroデータに基づく)を有する患者が対象。欧州や英国でも適応拡大を申請中です。

 

「Sogroya」デンマーク・ノボノルディスク

週1回投与の成長ホルモン製剤「Sogroya」(somapacitan)は、2歳半以上の小児の内因性成長ホルモン分泌不全性低身長症に適応拡大しました。同薬は2020年に米国で、2021年に日本と欧州で成人の成長ホルモン分泌不全症を対象に承認。日本と欧州でも小児適応での申請を行っています。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

あわせて読みたい

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる

オススメの記事

人気記事

メールでニュースを受け取る

メールでニュースを受け取る

  • 新着記事が届く
  • 業界ニュースがコンパクトにわかる