IQVIAは2月24日、2022年の国内医療用医薬品市場が前年比3.2%増の10兆9395億円となったと発表した。05年の統計発表開始以来、過去最高で、新型コロナウイルス関連の治療薬・診断薬が市場を押し上げた。製品別ランキングでは、小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」がトップだった。
「全身性抗ウイルス剤」が上位10薬効にランクイン
国内市場が暦年で10兆円を上回ったのは8年連続。これまでの過去最高は19年の10兆6256億円だった。統計には、政府が一括購入している新型コロナウイルスワクチンや新型コロナ治療薬(一般流通が行われているものを除く)は含まない。
市場の内訳を見ると、▽病院(100床以上)5兆791億円(前年比3.4%増)▽開業医(100床未満)2兆691億円(4.2%増)▽薬局その他3兆7913億円(2.4%増)――だった。
薬効別では「抗腫瘍剤」が1兆7521億円(6.0%増)でトップ。免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」、同「キイトルーダ」、EGFR阻害薬「タグリッソ」の薬効内上位3製品が売上高1000億円を超え、免疫チェックポイント阻害薬「イミフィンジ」や抗CD38抗体「ダラキューロ」などが市場拡大に貢献した。
薬効別2位は「糖尿病治療剤」(6690億円、5.3%増)、3位は「免疫抑制剤」(5560億円、6.3%増)。糖尿病治療剤は「フォシーガ」「ジャディアンス」などのSGLT2阻害薬が伸び、免疫抑制剤は「ステラーラ」「デュピクセント」「オルミエント」などが売り上げを拡大した。4位の「診断用検査試薬」は新型コロナの感染拡大を背景に関連製品が売り上げを伸ばし、前年9位から順位を上げた。新型コロナ治療薬「ベクルリー」「ラゲブリオ」が急拡大した「全身性抗ウイルス剤」も18年以来4年ぶりに上位10薬効にランクインした。
22年10~12月期の市場は前年同期比3.3%増の2兆9416億円。21年4~6月期以降、7四半期連続でのプラスとなった。
「ベクルリー」1000億円突破
製品別売上高(薬価ベース)では、小野薬品工業の免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」が1524億円(26.2%増)でトップ。2位はMSDの同「キイトルーダ」(1283億円、6.0%増)、3位は第一三共の抗凝固薬「リクシアナ」(1165億円、15.8%増)だった。
上位3製品に加え、4位の抗潰瘍薬「タケキャブ」(武田薬品工業)、5位の新型コロナ治療薬「ベクルリー」(ギリアド・サイエンシズ)、6位の抗がん剤「タグリッソ」(アストラゼネカ)が1000億円を突破。新型コロナ治療薬では、22年9月に一般流通を開始したMSDの「ラゲブリオ」も540億円を売り上げた。
22年10~12月期の製品別売上高は、ラゲブリオが479億円でトップ。2位はオプジーボ(413億円、32.3%増)、3位はベクルリー(401億円)だった。
中外、販促会社レベルで2年連続首位
企業別の売上高ランキングでは、販促会社レベル(MRによる学術宣伝を通じて販促活動を行っている企業。2社以上ある場合はよりオリジネーターに近い企業)で中外製薬が2年連続の首位を獲得。売上高は5265億円で、前年から1.9%伸びた。2位の武田薬品工業は1.5%減の5031億円、3位のアストラゼネカは9.2%増の4584億円で、上位3社は前年と同じ顔ぶれ。ベクルリーの販売で173.2%増となったギリアドは前年から20位以上順位を上げて上位20社にランクインした。
販売会社レベル(卸に製品を販売し、その代金を回収する機能を持つ企業)のランキングでは、武田薬品工業がトップ。2位は第一三共、3位は中外製薬。4位のアストラゼネカ(前年9位)や15位のエーザイ(前年20位)が大きく順位を上げた一方、ファイザーは4位から10位に下がった。