早いもので、今年も残すところあと10日あまりとなりました。皆さんにとって2022年はどんな年でしたか?私はというと、個人的にいろいろあった1年でしたが、それは最後に書くとして、私が「中の人」をやっている弊社EvaluateJapan公式Twitterアカウントのツイートランキング(今年1~11月のツイートでインプレッションやいいね・リツイートが多かったもの)をご紹介し、今年の業界を振り返ってみたいと思います。
1位:IBMがワトソン事業を売却。有望視されながらその後悪夢と化した取り組みから自らを解放
IBMは、ヘルスケア分野での野望を断念した。Watson Health事業のヘルスケアデータと分析資産を、非公開投資会社Francisco Partnersに10億ドルで売却し、かつて有望視されながらその後悪夢と化した取り組みから自らを解放することになった。https://t.co/gttk3aOjBS#Evaluate pic.twitter.com/NNlhySXC5c
— Evaluate Japan (@EvaluateJP) February 16, 2022
2位:Evaluateのコンセンサス予測が2028年まで延長。28年にはアッヴィがロシュを抜いて処方箋薬売上高で首位に
Evaluateの #コンセンサス予測 が #2028年まで延長 された。業界史上最も厳しい特許の崖に直面しているにもかかわらず、#AbbVie は、2028年にはRocheを抜いて処方箋売上で最大の製薬企業になると予想されている。Pfizer, Novartis, BMSとは対照的だ。https://t.co/HJTjubS9Uw#Evaluate pic.twitter.com/aQCqx7JbjG
— Evaluate Japan (@EvaluateJP) June 2, 2022
3位:多くのブロックバスターが2026年以降に特許切れ。過去30年間で最も苦しい時期が近づいている
チェックポイント阻害剤のKeytrudaやOpdivo、血液凝固阻止剤Eliquisなど、多数のブロックバスターが2026年から独占権を失い始める可能性があり、少なくとも過去30年間で最も苦しい時期が近づいており、いくつかの企業は特に危険にさらされているように見える。https://t.co/X2IlpPPQxb#Evaluate pic.twitter.com/jBvIbSD0gw
— Evaluate Japan (@EvaluateJP) June 1, 2022
4位:ブロックバスター、買うかつくるか。過去20年のブロックバスターの3分の2は大手15社の製品で、自社品が増加しているのを見ると大手の内部研究力が向上していることが示唆される
ブロックバスターを買うか、作るか?
初期開発品を持つバイオテックは、医薬品業界の活力源である。過去20年のブロックバスターの3分の2は、大手企業15社が所有し、自社品が増加しているのを見ると、大手企業の内部研究開発力が向上していることを示唆している。https://t.co/rDI2SadvkO#Evaluate— Evaluate Japan (@EvaluateJP) July 7, 2022
5位:ロシュがCAR-Tに正式参入。ディール成立にバイオテクノロジー市場の暴落を必要としたという事実は、資産価値がいかに過大評価されていたかを示している
Roche、CAR-Tに正式に参入
同社の事業開発チームは製品調査に多くの時間を費やしてきた。今回のディールが成立するほど価格が下落するバイオテクノロジー市場の暴落を必要としたという事実は、資産価格がいかに過大評価されていたかを示している。https://t.co/cAaJXzqUol#Evaluate pic.twitter.com/qNzIKBnwRy— Evaluate Japan (@EvaluateJP) August 9, 2022
これら5つのツイートはすべてEvaluate Vantageの記事を紹介したものです。中でも最も印象に残っているのは2位の「コンセンサス予測が28年まで延長」で、これは仕事柄、顧客や業界の知人に話しまくりました。ちなみに、28年に世界で最も売れる薬は米メルクの「キイトルーダ」になる予測で、同薬の28年の売上高は300億ドルに達する見込みです。
もう1つ印象深かったのは「ブロックバスター、買うかつくるか」。ちょうどこのコラムで日本発のブロックバスター候補について書いたあとだったので、記憶に残っています。詳しくはツイートのリンクにあるEvaluate Vantageの記事を読んでもらえたらと思いますが、ブロックバスター創出の難しさを改めて認識するとともに、サイエンスと産業の距離がかなり近くなっているということを感じさせられる記事でした。
ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスが心配になった1年
このコラムを振り返ってみると、やはり「ドラッグ・ラグ」「ドラッグ・ロス」が気がかりになりました。私が気にしているからということもあるでしょうが、今年はこの話題について色々なニュースを見聞きしました。
直近では、12月7日の中央社会保険医療協議会(中医協)薬価専門部会で、日米欧の製薬団体が23年度の薬価改定について意見を述べています。円安や物価高騰が医薬品の製造にも影響を与えており、薬価引き下げを思いとどまるよう訴えましたが、こうした声に国は耳を傾けていただきたいなと願うばかりです。
また、米国の非営利政策シンクタンク情報技術・イノベーション財団が今年7月に出したレポートでは、日本の薬価制度が医薬品産業に及ぼす影響を紐解きながら、薬価抑制がバイオ医薬品産業の競争力を著しく低下させることを指摘し、メディケアに薬価交渉を認めようとしている米国の政策立案者に警鐘を鳴らしています。
何度も書いていますが、現状は日本で必要な医薬品が手に入らないという状況にまっすぐ通じていますので、そのことが多くの人に伝わるといいなと思っています。
最後に個人的なことを少々。私はこれまで「書いてつながる」ということを体験し、その素晴らしさをいろんな人にお伝えしています。noteやTwitterに書くことでAnswersNewsとつながり、このコラムを書くことになりましたし、このコラムを書くことで今年は投資家や就活生に向けて講演する機会を得たり、想いを同じくする業界の方とつながって定期的に意見交換をするようになったりしました。発信を続けてきてよかったなと思うことが多かった1年でしたし、来年も色々と書いて色々な方とつながっていきたいと思っています。
2023年の製薬業界はどんな1年になるでしょうか。今年よりもたくさん良いニュースが聞けることを願って年を越したいと思います。少し早いですが、皆さん、よいお年を。
※コラムの内容は個人の見解であり、所属企業を代表するものではありません。
黒坂宗久(くろさか・むねひさ)Ph.D.。Evaluate Japan/Consulting & Analytics/Senior Manager, APAC。免疫学の分野で博士号を取得後、米国国立がん研究所(NCI)や独立行政法人産業技術総合研究所、国内製薬企業で約10年間、研究に従事。現在はデータコンサルタントとして、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析(マーケット情報、売上予測、NPV、成功確率や開発コストなど)を提供。Evaluate JapanのTwitterの「中の人」でもあり、個人でもSNSなどを通じて積極的に発信を行っている。 Twitter:@munehisa_k note:https://note.com/kurosakalibrary |