2021年12月期(一部の日本企業は22年3月期、豪CSLは21年6月期)の世界売上高100億ドル超の製薬会社25社の業績を集計したところ、米ファイザーが5年ぶりのトップとなりました。新型コロナウイルスワクチンで4兆円あまりを稼ぎ、同社の売上高は約9兆円まで拡大。2位は前年首位のスイス・ロシュで、3位は米アッヴィでした。
ファイザー、前年2倍の約9兆円を売り上げ
米ファイザーが5年ぶりに世界首位の座を奪還しました。2021年の売上高は前年比95%増の812億8800万ドル(8兆9254億円)。新型コロナウイルスワクチン「コミナティ」で売上高全体の45%にあたる367億8100万ドルを稼ぎ出しました。特許切れ薬事業を切り離したことで昨年は8位まで順位を落としていた同社ですが、コロナ特需で一気に首位へ駆け上がりました。
2位は前年まで4年連続トップだったスイス・ロシュ。主力の多発性硬化症治療薬「Ocrevus」(55億3000万ドル、前年比19%増)や血友病A治療薬「ヘムライブラ」(33億600万ドル、41%増)が伸びたほか、診断事業も好調で、売上高は7.7%増の687億400万ドルでした。
3位は、561億9700万ドルを売り上げた米アッヴィ。20年5月のアイルランド・アラガン買収が通年で寄与し、22.7%の増収となりました。最主力品の抗TNFα抗体「ヒュミラ」の世界売上高は4.3%増の206億9400万ドル。順位も前年から1ランクアップしています。
4位の米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、乾癬・クローン病治療薬「ステラーラ」(91億3400万ドル、18.5%増)や多発性骨髄腫治療薬ダラツムマブ(60億2300万ドル、43.8%増)が貢献し、14.3%増と2ケタ増収となりました。
5位のスイス・ノバルティスは、6.1%の増収で売上高500億ドルを突破したものの、順位は3つダウン。6位の米メルクも昨年から3つ順位を下げましたが、売上高は17.4%増と大きく伸びました。同社の免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」は、世界で171億8600万ドル(20%増)を販売。7位は英グラクソ・スミスクライン(GSK)。主力の抗HIV薬は65億6900万ドル(2%減)とほぼ横ばいでした。
8位の米ブリストル・マイヤーズスクイブは、抗がん剤「レブラミド」(128億2100万ドル、6%増)や抗凝固剤「エリキュース」(107億6200万ドル、17%増)が業績を牽引。9位の仏サノフィも主力の抗IL-4/13抗体「デュピクセント」(62億960万ドル、48.5%増)が好調でした。
10位は374億1700万ドルを売り上げた英アストラゼネカ。40.6%の増収で、5年ぶりにトップ10入りを果たしました。販売拡大に貢献したのは、EGFR阻害薬「タグリッソ」(50億1500万ドル、16%増)など。新型コロナワクチン「バキスゼブリア」の売上高は39億8100万ドルでした。
ビオンテックが16位、モデルナが19位にランクイン
前年10位の武田薬品工業は11位にランクダウン。潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(46億9600万ドル、21.5%増)などが寄与し、全社の売上高は11.6%増の321億2100万ドルでした。武田以外の日本企業では、大塚製薬ホールディングス(HD)が22位、アステラス製薬が23位となりました。
トップ10圏外で順位を上げたのは米イーライリリー(12位)と同ヴィアトリス(20位)。リリーはGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(64億7190万ドル、28%増)やJAK阻害薬「オルミエント」(11億1510万ドル、75%増)の販売が拡大し、15.4%の増収を達成しています。ヴィアトリスは、米マイランとファイザーの特許切れ薬事業が統合して20年に発足した新会社。ファイザーから承継した事業の売り上げを通年で計上したことで49.7%の増収となったものの、統合前の売上高を単純合算した数字と比べると3%の減収でした。
今年のランキングでは、集計対象25社のうち23社が増収。売り上げを落としたのは、4.7%減のイスラエル・テバと18.3%減の米バイオジェンのみでした。テバは多発性硬化症治療薬「コパキソン」(10億500万ドル、24.8%減)が落ち込んだほか、日本と米国で後発医薬品の販売が減少。バイオジェンは、後発品参入の影響で主力の多発性硬化症治療薬「テクフィデラ」が19億5190万ドル(49.2%減)にまで落ち込み、大幅な減収となりました。
新型コロナウイルスワクチンを手掛ける独ビオンテックは16位、米モデルナは19位にランクイン。子会社のインフルエンザワクチンが好調だった豪CSLも新たにランキングに名を連ねました。
研究開発費 100億ドル超えは5社
研究開発費は、昨年に引き続きロシュがトップ。がんや神経精神領域、眼科領域の後期開発に対する投資を拡大したことで、前年比13.8%増となる161億9000万ドルとなりました。売上高に対する研究開発費の比率は23.6%。前年から1.2ポイント上昇しています。
2位は、47.2%増の138億2900万円を投じたファイザー。21年内に新型コロナ治療薬「パキロビッド」を含む13のピボタル試験を開始したことで費用が大きく膨らみました。
ロシュとファイザーのほかに研究開発費が100億ドルを超えたのは、メルクとJ&J、ブリストルの3社。メルクは前年から8.6%減少しましたが、買収や提携に伴う一時金が減少したことによるもので、探索研究と初期開発を中心に臨床開発費は増加しているといいます。
アストラゼネカは、21年7月に買収した米アレクシオンの研究開発費を計上したことや、新型コロナウイルス関連の投資が膨らんだことで研究開発費が62.5%増の97億3600万ドルにまで増加。売上高に占める割合は26.0%で、25社の中で最大でした。
このほか、イーライリリーやデンマーク・ノボノルディスクなど半数以上の企業で研究開発費が2ケタ増。日本企業では、15.4%増の47億3500万ドルを投じた武田が15位で最高でした。
【22年12月期】ファイザー、売上高1000億ドルも射程圏内
各社の業績見通しによると、2022年もファイザーが首位をキープすることになりそうです。コミナティは320億ドル、パキロビッドは220億ドルの販売を見込んでおり、同社全体の売上高は980~1020億ドル(前年比167~207億ドル増)となる予想。製薬業界に初めて10兆円企業が誕生することになりそうです。
ロシュは22年の売上高を横ばいから微増と予想。アッヴィやノバルティス、サノフィなど、上位勢は軒並み増収の見通しを示しています。2ケタ増収を期待するのはメルクとアストラゼネカ。メルクは、新型コロナ治療薬「ラゲブリオ」が50~55億ドルを売り上げ、全体の売上高が569~581億ドルに拡大すると予想しています。アストラゼネカは400億ドル台に乗る見通しです。
GSKは、2019年にファイザーと統合した一般用医薬品事業を、22年半ばに新会社「Haleon」として切り離す予定。21年の同事業(売却ブランドを除く)の売上高は132億ドルでした。GSKは継続事業での増収を予想していますが、スピンアウトによって順位は下がりそうです。
モデルナは新型コロナワクチンの供給額を210億ドルと予想しており、増収を計画しています。一方、ビオンテックはコロナワクチン関連の減収を予想。コロナ治療薬「ベクルリー」を販売する米ギリアド・サイエンシズも、同薬の販売額が半分以下に減少するとして減収を見込んでいます。
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AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
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