市場拡大が著しく、開発競争も熾烈ながん領域。国内外の製薬大手の後期開発パイプラインを、2022年3月時点で各社が公表している情報をもとにまとめました。(全5記事。全記事まとめはこちら)
情報は2022年3月の調査時点で各社がホームページで公表していた情報に基づく。いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もある。 |
武田薬品工業
【新規有効成分】2新薬 22年度中のPOC取得目指す
がん領域では、2025年以降の承認を目指して9つのパイプラインを開発しています。そのうち、P2段階にあるのがSUMO阻害薬subasumstat(開発コード・TAK981)とCD19 CAR-NK細胞療法TAK-007)です。subasumstatは血液がんと固形がんの両方で開発を進めています。いずれも22年度中のPOC取得が目標です。
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【適応拡大など】EXKIVITY、欧州と中国で申請中
EGFR/HER2阻害薬mobocertinib(製品名・EXKIVITY)は、21年に米国でEGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がんとして承認を取得。欧州と中国でも22年度に承認される見通しで、日本でも開発を進めています。
アステラス製薬
【新規有効成分】抗Claudin 18.2抗体zolbetuximabがP3段階
抗Claudin 18.2抗体zolbetuximab(開発コード・IMAB362)は、胃腺がん・食道胃接合部腺がんでP3試験を、膵臓腺がんでP2試験を行っています。Claudin 18.2は、上皮細胞層の細胞間の隙間を塞ぐタイトジャンクションの主要構成因子。胃がんでは33~37%の患者に高発現しています。22年前半には、後継品であるClaudin 18.2とCD3を標的とする二重特異性抗体「ASP2138」が臨床入りする予定です。
【適応拡大など】パドセブ 欧州で承認間近
抗ネクチン4 抗体薬物複合体(ADC)エンホルツマブ ベドチン(製品名・パドセブ)は、米国で19年に、日本で21年に承認を取得。欧州でも近く承認される見通しで、米メルクの抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用療法でもP3試験が進行中です。
急性骨髄性白血病治療薬のギルテリチニブ(ゾスパタ)は、造血幹細胞移植後の維持療法への適応拡大を23年度に予定しています。無再発生存期間のイベント集積が遅延しているため、従来の申請目標を1年延ばしました。
大塚ホールディングス
【新規有効成分】フチバチニブ 胆管がんで年内承認へ
大鵬薬品工業が創製したFGFR2阻害薬フチバチニブ(開発コード・TAS-120)は、P2試験の結果をもとに進行胆管がん治療薬として22年3月に米国で申請を行いました。順調にいけば年内に承認される見通し。日本では消化管間質腫瘍を対象にHSP90阻害薬ピミテスピブ(TAS-116)を申請中です。
タカラバイオと開発を進めるNY-ESO-1・siTCR遺伝子治療薬mipetresgene autoleucel(TBI-1301)は、国内で21年の申請を予定していましたが、信頼性保証体制の整備に時間を要しています。
第一三共
【新規有効成分】抗TROP2 ADCは23年にも申請へ
最注力のADCフランチャイズでは、抗TROP2 ADC datopotamab deruxtecan(開発コード・DS-1062)と抗HER3 ADC patritumab deruxtecan(U3-1402)の開発が進んでいます。英アストラゼネカと共同開発するDS-1062は、非小細胞肺がん治療薬として23年にも申請を行う見通し。後続ADCでは、B7-H3を標的とするDS-7300がP2試験の段階にあります。
国内では、EZH1/2阻害薬valemetostat(DS-3201)が成人T細胞白血病、リンパ腫の適応で申請中。先駆け審査指定を受けている末梢性T細胞リンパ腫の適応では、21年にピボタル試験を開始しました。
【適応拡大など】エンハーツ HER2陽性乳がん2次治療で申請
抗HER2 ADCトラスツズマブ デルクステカン(製品名・エンハーツ)は、日米欧でHER2陽性乳がんの2次治療への適応拡大を申請しています。申請の根拠となったP3試験では、トラスツズマブ エムタンシンとの比較で無増悪生存期間を有意に改善。脳転移を有する患者への有効性も示唆されました。HER2陽性乳がんの3次治療やHER2低発現乳がんへの適応拡大も年内の申請を予定しています。