中央社会保険医療協議会(中医協)総会は8月4日、中外製薬の脊髄性筋萎縮症治療薬「エブリスディドライシロップ」やアルナイラム・ジャパンの急性肝性ポルフィリン症治療薬「ギブラーリ皮下注」など新薬15成分23品目の薬価収載を了承した。収載は8月12日。第一三共の腫瘍溶解性ウイルス製剤「デリタクト注」も再生医療等製品として薬価収載が了承され、新薬とあわせて収載される。
ギブラーリに40%の有用性加算
「エブリスディドライシロップ」(一般名・リスジプラム)は、国内初となる経口の脊髄性筋萎縮症治療薬。薬価算定は、バイオジェン・ジャパンの「スピンラザ」を比較薬とする類似薬効比較方式Iで算定され、60mg1瓶97万4463.70円に決定。経口投与で入院せずに投与できることが評価され、5%の有用性加算IIがついた。ピーク時の年間売上高は102億円を見込む。
「ギブラーリ皮下注」(ギボシランナトリウム)は、急性肝性ポルフィリン症を対象とするsiRNA核酸医薬。神経毒性に関与するALAS1(アミノレブリン酸合成酵素1)の産生を抑制する新規作用機序を持つことや、月1回投与で、発作時に4日間点滴静注する既存薬に比べて利便性が高いことが評価され、40%の有用性加算Iがついた。薬価は189mg1mL1瓶500万6201円。ピーク時に年間64人への投与を見込み、売上高は37億円と予測している。
昨年5月に特例承認されたギリアド・サイエンシズの新型コロナウイルス感染症治療薬「ベクルリー」(レムデシビル)も収載される。原価計算方式で算定された薬価は、100mg1瓶6万3342円で、収載初年度(21年9月~22年3月)の予測投与患者数は4万2775人、予測売上高は181億円。同薬はこれまで国が買い上げて医療機関に無償配布していたが、安定供給の見通しが立ったため保険適用することにした。保険適用後も患者負担は発生しない。
片頭痛2新薬「アジョビ」137億円「アイモビーグ」153億円と予測
このほか、8月12日に薬価収載されるのは、
▽心不全治療薬「ベリキューボ錠」(ベルイシグアト)=バイエル薬品
▽糖尿病治療薬「ツイミーグ錠」(イメグリミン塩酸塩)=大日本住友製薬
▽抗がん剤「タズベリク錠」(タゼメトスタット臭化水素酸塩)=エーザイ
▽同「ハイヤスタ錠」(ツシジノスタット)=フヤ・ジャパン
▽片頭痛治療薬「アジョビ皮下注」(フレマネズマブ)=大塚製薬
▽同「アイモビーグ皮下注」(エレヌマブ)=アムジェン
▽短腸症候群治療薬「レベスティブ皮下注用」(テデュグルチド)=武田薬品工業
▽抗がん剤「ユニツキシン点滴静注」(ジヌツキシマブ)=大原薬品工業
など。
アジョビとアイモビーグは、国内で2剤目、3剤目となる片頭痛治療薬の抗体医薬で、適応はいずれも「片頭痛発作の発症抑制」。薬価は日本イーライリリーの「エムガルティ」を比較薬とする類似薬効比較方式Iで算定され、2剤とも4万1356円となった。ピーク時売上高は、アジョビが137億円、アイモビーグが153億円と予測している。
ツイミーグは、ミトコンドリアへの作用を介してインスリン分泌を促進し、インリン抵抗性を改善する新規作用機序の薬剤。薬価はDPP-4阻害薬「トラゼンタ」を比較薬とする類似薬効比較方式Iで算定。ピーク時に143億円の売り上げを見込む。
薬価算定で有用性加算がついたのは、エブリスディとギブラーリのほか、タズベリク、レベスティブ、ユニツキシンなど。富士フイルム富山化学の放射性医薬品「ルタテラ」(ルテチウムオキソドトレチド〈117Lu〉)には10%の有用性加算IIがついている。レベスティブ、ギブラーリ、ユニツキシンと、MSDの抗菌薬「レカルブリオ配合点滴静注液」には、10%の市場性加算Iが適用された。
ベリキューボとアジョビ、アイモビーグ、レベスティブ、ベクルリーの4製品は、費用対効果評価の対象となった。ベリキューボについては、類似薬で「価格調整なし」との結果が出ており、算定薬価のまま薬価収載される。
国内初の腫瘍溶解性ウイルスは1回143万円
再生医療等製品では、国内初の腫瘍溶解性ウイルス製剤となる第一三共の「デリタクト注」(テセルパツレブ)の薬価収載が了承された。薬価は原価計算方式で算定され、いずれも10%の市場性加算Iと先駆け審査指定制度加算がついた結果、1mL1瓶143万1918円となった。適応は悪性神経膠腫で、1回1mLを最大6回投与する(1回目と2回目は5~14日間隔、3回目以降は4週間)。ピーク時に12億円の売り上げを見込む。