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「ライフサイエンスの時代をAI画像解析でリードする」エルピクセル・島原佑基代表|ベンチャー巡訪記

製薬業界のプレイヤーとして存在感を高めるベンチャー。注目ベンチャーの経営者を訪ね、創業のきっかけや事業にかける想い、今後の展望などを語ってもらいます。

 

島原佑基(しまはら・ゆうき)東京大大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(生命科学)。大学では、人工光合成、細胞小器官の画像解析とシミュレーションを研究。グリーなどでの勤務を経て、2014年3月に研究室のメンバー3人でエルピクセルを創業。

 

創薬を加速するAI

――ライフサイエンスの分野で、人工知能(AI)を活用した画像解析ソフトウェアを展開しています。

現在、大きく2つの柱で事業を展開しています。1つは医療用の画像診断支援技術。もう1つは製薬企業をはじめとする研究向けの画像解析システムです。

 

医療用の画像診断支援技術は「EIRL(エイル)」という製品名で販売しています。EIRLはディープラーニングを活用した国内初の医療機器として2019年9月に承認を取得しており、これまでに脳MRI画像から脳動脈瘤を検出する用途と、胸部X線画像から結節影を検出する用途で承認されています。

 

日本は、CTやMRIの台数は世界で最も多い一方、それを見る専門医の数はOECD加盟国中最下位。画像はたくさん撮られているのに、専門医が見ていないという状況で、その氷山の一角が「誤診」や「見落とし」という形で明るみになることがあります。「人間の限界上、仕方ないじゃないか」と思われるかもしれませんが、人の命に関わることが仕方ないで済まされていいのか。AIを活用すれば診断の精度が上がり、そうしたことを防げる部分もある。EIRLの導入施設数はすでに100施設を超えています。

 

――創薬の分野ではどのような事業を展開しているのでしょうか。

「創薬を加速するAI」として、「IMACEL(イマセル)」というブランド名で展開しています。われわれの技術は、スクリーニングからバイオロジー評価、安全性評価、薬理評価まで、創薬のあらゆる場面で活用できると思っています。

 

アカデミアや研究機関も含め、これまでに100件以上の共同研究・受託研究を行ってきました。事例も積み重なってきていて、今も30~40のプロジェクトが動いています。

 

例えば、第一三共とは細胞の表現型を定量化して化合物の影響を評価するフェノタイプスクリーニングを行っていますし、武田薬品工業とは小核試験の自動化を行いました。アステラス製薬とは、再生医療・細胞治療に適した細胞を選定し、管理するシステムを開発しています。

 

創薬へのAIの活用法は多岐にわたりますが、われわれは製薬企業の困り事からしっかりと課題設定し、仮説を検証していくための解析方法を提案し、一緒にソフトウェアを開発して解析を行っていく。そいうことをやっています。

 

ウェットへとシフト

――創薬の分野では、今後の事業展開をどう描いていますか。

最近、製薬業界でも盛んに「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の必要性が叫ばれています。われわれはAIによる画像解析でそうした方向性に貢献できる技術を持っていると自負していますので、まずは「創薬に使う画像解析AIならエルピクセル」と言われるポジションになりたいと思っています。

 

それができると、次はライセンス化が見えてきます。製薬企業の研究は百社百様のテーマがあり、難しい面もありますが、汎用化できる部分はあると思っています。ライセンス化していくことによって、グローバル製薬企業を含め、世界中で使われる解析手法のデファクトを作れたらと思っています。

 

ここまでが向こう数年のビジョンですが、その先は再生医療のプラントをジョイントで作ったり、画像解析を提供する上で最適なウェットラボを持ったり、そういったこともやっていきたいと考えています。製薬企業はウェットからドライに寄っていくと思うんですが、我々は逆にウェットの方に広げていって、そちらを効率化・高精度化していきたいと思っています。

 

――エルピクセルの強みはどんなところにあるのでしょうか。

生物のこともAIのこともわかる二刀流の人材が多くいることです。バイオの領域では、実験ごとに「匠の技」みたいなものがあり、そこで取得されたデータが機械学習に適したものかを判断するのが非常に難しいんですね。AIだけの専門家の場合、出てきたデータを正しいものとして受け取る以外に選択肢はありませんが、エルピクセルにはバイオのこともわかる人材がいますので、実験のプロトコルを機械学習に適したものに修正するところから行うことができます。

 

画像解析の場合、出てきた画像がすべてです。それに対して「適切な画像ではない」と言えるかどうかが、課題をうまく解けるかどうかの1つのポイントになります。実験プロトコルの段階からわれわれのメンバーが入り、AIに最適な画像を取得できるようにすることで、効率的に高精度のソフトウェアを提供できることがエルピクセルの強みです。

 

ライフサイエンス版グーグルに

――創業の経緯は。

エルピクセルは、大学の研究室のメンバー3人で2014年に立ち上げた会社です。私はもともと生物が専門でしたが、研究室ではバイオイメージインフォマティクスを専攻していて、生物、工学、情報を融合した学際的な研究をやっていました。

 

私は修士課程終了後、武者修行のつもりでIT企業2社で勤務しました。2社目が副業可能な企業だったので、週末起業的に会社を作ってみようと思い、私の指導教官だった研究室の准教授と、研究室の1つ上の先輩とともに、会社を設立しました。

 

今でこそバイオインフォマティクスなどと盛んに言われていますが、当時は情報解析ができる生物の専門家はあまりいませんでした。一方で、取得される情報はどんどん増えていて、定性的な画像を定量的にきちんと評価する必要が高まっていましたが、そうしたことをやれるところはまだ世の中になかった。必要とされている技術だという確信はあったので、じゃあ自分たちでやってみようということで始めました。

 

――「必要とされている技術だという確信」はどんなところで得たのでしょうか。

私が在籍していた研究室は10人ほどの小さな研究室だったのですが、起業した当時、40件の共同研究を行っていました。共同研究先にはアカデミアも企業も含まれていて、「小さな研究室にもこれだけ引き合いがあるということは、やはり大きなニーズがあるんだな」と思ったんです。ただ、わかりにくい技術なので、それをどう可視化して広げていくかが課題でしたが、それはやりながら模索しようということでここまでやってきました。

 

――創業から7年がたちました。創業当時に思い描いていたものと比べて、会社の現状をどう見ていますか。

やることは少し変わったと感じています。私たちはもともと、研究者のための会社を作ろうと思っていて、会社のミッションも当初は「研究の世界に革新とワクワクを」としていました。研究の閉塞した空間をもっとオープンにしてあげたい、寝る間も惜しんで実験と解析をしているような状況を少しでも効率化してあげたいと思っていたんです。ただ、AIブームがきたこともあり、われわれの技術が広く求められるようになった結果、事業も医療などの分野に広がりました。

 

起業した当時は、AIブームがくる前だったので、理解してもらうのに苦労しました。AIブーム、DXブーム、働き方改革、そういった時流に乗って上振れた部分はあると思っています。当初は自社製品の開発までは想定していませんでしたから。

 

――会社としての夢は何ですか。

創業当時、メンバーとはよく「ライフサイエンス版のグーグルになりたい」と話していました。グーグルの素晴らしいところは、自前で研究所を持ち、優秀な人を集め、そこで生まれたものを世の中に還元する、ということがうまくできていることだと思っています。

 

われわれはまだ研究所と呼べるものを持っていませんが、今の事業でしっかりと収益を立て、自前の研究所を作り、オープンイノベーションのハブになりたい。21世紀はライフサイエンスの時代だと確信しているので、それをリードしていける会社になりたいと思っています。

 

(聞き手・前田雄樹)

 

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