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ニュース解説

海外新薬承認情報(2021年2月分)

更新日

2021年2月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。

 

【新薬】4剤目のCAR-T細胞療法「Breyanzi」や、抗がん剤による骨髄抑制治療薬「Cosela」など

【2021年2月に米FDAが承認した主な新薬】(*=優先審査、★=ブレークスルーセラピー)(製品名(一般名)/社名/適応): |Posimir(bupivacaine)/米ダレクト/関節鏡視下手術後の鎮痛(最大72時間、非オピオイド系徐放性製剤) |Tepmetko(tepotinib)*★/独メルク/MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の転移性非小細胞肺がん |Ukoniq(umbralisib)*/米TGセラピューティクス/再発・難治性の辺縁帯リンパ腫(★)、濾胞性リンパ腫 |Breyanzi(lisocabtagene/maraleucel)*★/米ブリストル/再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫/ |Evkeeza(evinacumab)*★/米リジェネロン/家族性高コレステロール血症(ホモ接合体) |Cosela(trilaciclib)*★/米G1セラピューティクス/進展期非小細胞肺がん患者の化学療法に伴う骨髄抑制 |Amondys/45(casimersen)*/米サレプタ/デュシェンヌ型筋ジストロフィー |Nulibry(fosdenopterin)*★/米ブリッジバイオ/モリブデン補因子欠損症A型 |Pepaxto(melphalan/flufenamide)*/スウェーデン・オンコペプチド/再発・難治性の多発性骨髄腫(5thライン以降、+デキサメタゾン) |※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Tepmetko」独メルク

経口MET阻害薬「Tepmetko」(一般名・tepotinib)は、成人のMET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の転移性非小細胞肺がん治療薬。全奏効率43%、奏効期間10.8カ月(未治療患者)・11.1カ月(既治療患者)を示した臨床第2相(P2)試験の結果をもとに迅速承認されました。日本では昨年6月、「テプミトコ」の製品名で世界に先駆けて発売。欧州やオーストラリアなどでも申請中です。

 

「Ukoniq」米TGセラピューティクス

PIKδ/CK1ε阻害薬「Ukoniq」(umbralisib)は、▽少なくとも1レジメンの抗CD20抗体による前治療を受けた再発・難治性の辺縁帯リンパ腫の成人患者▽少なくとも3つの全身療法による前治療を受けた再発・難治性の濾胞性リンパ腫の成人患者――を対象に迅速承認。P2試験での全奏効率は、辺縁帯リンパ腫で49%、濾胞性リンパ腫で43%でした。同薬はスイスのRhizenが創製したもので、TGセラピューティクスはインドを除く全世界での開発・商業化権を持っています。

 

「Breyanzi」米ブリストル

CD19を標的とする自家CAR-T細胞療法「Breyanzi」(lisocabtagene maraleucel)は、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫の適応で承認されました。米FDAが承認したCAR-T細胞療法としては4剤目。2つ以上の全身療法で奏効しなかったか、治療後に再発した成人患者が対象で、原発性中枢神経系リンパ腫は適応外となります。250人以上を対象に行った臨床試験での完全奏効率は54%。日本でも申請中です。

 

「Evkeeza」米リジェネロン

抗ANGPTL3抗体「Evkeeza」(evinacumab)は、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)の治療薬。12歳以上の患者が対象です。臨床試験では、Evkeeza群はプラセボ群と比べ、LDLコレステロール値がベースラインから49%減少しました。欧州でも申請を済ませています。

 

「Cosela」米G1セラピューティクス

キナーゼ阻害薬「Cosela」(trilaciclib)は、成人の進展期非小細胞肺がん患者の化学療法に伴う骨髄抑制に対する治療薬です。同薬は、CDK4/6を阻害し、化学療法による骨髄細胞へのダメージを防ぎます。臨床試験では、プラセボと比べて重度の好中球減少症の発生率と発症期間を有意に減少させました。

 

「Amondys 45」米サレプタ

「Amondys 45」(casimersen)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対するアンチセンス核酸医薬。ジストロフィン遺伝子のエクソン45を標的とするエクソンスキッピング治療薬です。サレプタにとっては、エクソン51を標的とする「Exondys51」、エクソン53を標的とする「Vyondys53」に続く3つ目のDMD治療薬となります。

 

「Nulibry」米ブリッジバイオ

「Nulibry」(fosdenopterin)は、米国初のモリブデン補因子欠損症A型治療薬。モリブデン補因子欠損症は、モリブデン補因子のもととなる環状ピラノプテリン一リン酸(cPMP)を体内で産生できないまれな遺伝性疾患で、神経障害などによって幼児期に死亡することも少なくありません。Nulibryは、不足するcPMPを補う治療薬。未治療患者と比べて全生存期間を有意に延長することが確認されています。

 

「Pepaxto」スウェーデン・オンコペプチド

米国初となるがんに対するペプチド薬物複合体(PDC)の「Pepaxto」(melphalan flufenamide)は、再発・難治性の多発性骨髄腫治療薬として迅速承認されました。少なくとも4つの前治療(プロテアソーム阻害薬と免疫調整薬、抗CD38抗体を含む)を受けた成人患者が対象で、デキサメタゾンと併用します。現在、ポマリドミドを対照群とするP3試験などを実施中です。

 

【適応拡大】「Libtayo」の基底細胞がんや「Entresto」のHFpEFなど

【2021年2月に米FDAが承認した主な適応拡大】(*=優先審査)(製品名(一般名)/社名/適応): |Gocovri(amantadine)/米アダマス/オフエピソードを合併するパーキンソン病(レボドパ/カルビドパの補助療法) |Botox(onabotulinumtoxinA)/米アッヴィ/小児の神経因性排尿筋過活動 |Libtayo(cemiplimab)*/米リジェネロン/進行基底細胞がん |Entresto(sacubitril/valsartan)/スイス・ノバルティス/左室駆出率が保持された心不全(HFpEF) |Humira(adalimumab)/米アッヴィ/中等度から重度の潰瘍性大腸炎(小児) |※米FDA(食品医薬品局)や各社の発表資料をもとに作成

 

「Gocovri」米アダマス

パーキンソン病治療薬「Gocovri」(amantadine)は、オフエピソードを合併するパーキンソン病に対するレボドパ/カルビドパへの補助療法として新たに承認されました。オフ症状とジスキネジアの両方で承認された治療薬は初めて。P3試験では、オフ時間、ジスキネジアをそれぞれ有意に減少させました。

 

「Botox」米アッヴィ

「Botox」(onabotulinumtoxinA)は、小児の神経因性排尿筋過活動に適応拡大しました。対象は、抗コリン作動薬で治療不十分または不耐の5歳以上の患者。外科的治療前の選択肢として期待されます。

 

「Libtayo」米リジェネロン

免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Libtayo」(cemiplimab)は、進行基底細胞がんに適応拡大。局所性進行基底細胞がんの適応で完全承認を、転移性基底細胞がんの適応で迅速承認を取得しました。対象は、ヘッジホッグ経路阻害薬による前治療に抵抗性または不耐性の患者。同薬は皮膚扁平上皮がん治療薬として米欧で承認されており、日本ではサノフィが同適応や子宮頸がんを対象にP3試験を進行中です。

 

「Entresto」スイス・ノバルティス

「Entresto」(sacubitril/valsartan)は、慢性心不全の適応で、これまでの「左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)」に加え、「左室駆出率が保持された心不全(HFpEF)」患者の一部に使用できるようになりました。新たな適応は、「成人慢性心不全患者の心血管死リスクと心不全による入院リスクの低減(左室駆出率が正常値を下回る場合に最も効果が表れる)」。今回の適応拡大で、米国内の約600万人の慢性心不全患者のうち約500万人をカバーできるようになりました。

 

「Humira」米アッヴィ

抗TNF-α抗体「Humira」(adalimumab)は、中等度から重度の活動性潰瘍性大腸炎の適応で、5歳以上の小児患者への使用が承認されました。米国ではこのほか、小児を対象に若年性特発性関節炎、クローン病などで承認済み。日本では、小児の潰瘍性大腸炎の適応で申請中です。

 

【適応取り下げ】「Imfinzi」英アストラゼネカ

免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体「Imfinzi」(durvalumab)は、適応から▽プラチナ製剤を含む化学療法後に進行した局所進行・転移性尿路上皮がん▽プラチナ製剤を含む化学療法による術前/術後補助療法後に進行した局所進行・転移性尿路上皮がん――が削除されました。2つの適応では、2017年にP1/2試験の結果をもとに迅速承認されていましたが、P3試験で主要評価項目を満たさなかったことを受け、アストラゼネカが米FDAとの協議の上で適応の撤回を決めました。肺がんなど、他の適応症への影響はないとしています。

 

(亀田真由)

 

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