2021年1月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】慢性心不全治療薬「Verquvo」や月1回投与の抗HIV薬「Cabenuva」など
「Verquvo」米メルク
可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬「Verquvo」(一般名・vericiguat)は、心血管死や心不全による入院リスクの低減で承認されました。症候性慢性心不全で左室駆出率が低下している患者が対象で、外来での利尿薬治療の必要性も低下させます。米メルクと独バイエルが共同で開発を進めており、日本と欧州ではバイエルが昨年6月に申請しました。
「Cabenuva」「Vocabria」英ヴィーブヘルスケア
抗HIV薬「Cabenuva」は、cabotegravir(英ヴィーブヘルスケア)とrilpivirine(米ヤンセン)の長期作用型注射を2剤レジメンとしてパックにしたものです。適応は、成人HIV-1感染症の維持療法。臨床試験では、月1回の投与で、1日1回の3剤経口レジメンと同様のウイルス抑制効果が確認されました。
Cabenuvaによる治療開始時の短期的な導入治療に使われるcabotegravirの経口薬「Vocabria」もあわせて承認。rilpivirineの経口薬(製品名・Edurant)とともに約1カ月服用し、忍容性を確認します。Cabenuva、導入治療とも欧州とカナダで承認済みです。
「Lupkynis」カナダ・オーリニア
「Lupkynis」(voclosporin)は、活動性のループス腎炎に対する米国初の経口薬。免疫抑制療法と併用します。標準治療への上乗せを検証した臨床試験では、標準治療のみの群と比べて腎反応が2倍以上になり、尿蛋白/クレアチニン比の半減にかかる時間も半分以下になりました。ステロイドの使用量もこれまでと比べて少なくできるといいます。日本と欧州での開発・販売権は大塚製薬が持っており、欧州で今年4~6月の申請を見込んでいます。
【適応拡大】「Xalkori」の全身性未分化大細胞型リンパ腫、「Enhertu」のHER2陽性胃がんなど
「Darzalex FASPRO」米ヤンセン
抗CD38抗体「Darzalex」の皮下注製剤「Darzalex FASPRO」(daratumumab/hyaluronidase)は、全身性ALアミロイドーシスへの適応拡大が承認。ボルテゾミブ、シクロホスファミド、デキサメタゾンと併用します。3剤への上乗せを検証した臨床試験では、完全奏効率を3倍以上に改善しました。同剤は、欧州でもALアミロイドーシスへの適応拡大を申請中。日本では、昨年4月に多発性骨髄腫の適応で、昨年末に全身性ALアミロイドーシスの適応で申請しました。
「Xalkori」米ファイザー
ALK/ROS1阻害薬「Xalkori」(crizotinib)は、ALK陽性の再発・難治性の全身性未分化大細胞型リンパ腫に適応拡大しました。1歳以上の小児患者と若年成人が対象です。同薬はALK融合遺伝子陽性またはROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん治療薬として日本や米国、欧州などで販売されています。
「Enhertu」第一三共
第一三共と英アストラゼネカが共同開発する抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「Enhertu」(trastuzumab deruxtecan)は、新たに「トラスツズマブを含む前治療を受けたHER2陽性の局所進行または転移性の胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん」に適応拡大。日本では昨年9月にHER2陽性胃がんの適応を取得しています。
「Carbaglu」伊レコルダティ
N-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症による高アンモニア血症治療薬の「Carbaglu」(carglumic acid)は、新たにプロピオン酸血症またはメチルマロン酸血症による急性高アンモニア血症を対象に承認を取得。標準治療の補助療法として使用します。
「Opdivo」+「Cabometyx」米ブリストル/米エクセリクス
免疫チェックポイント阻害薬「Opdivo」(nivolumab)とキナーゼ阻害薬「Cabometyx」(cabozantinib)の併用療法が、進行腎細胞がんのファーストライン治療に使用できるようになりました。臨床試験では、スニチニブと比べて無増悪生存期間を2倍に延長し、死亡リスクを40%低減。日本でも昨年10月、小野薬品工業と武田薬品工業が申請を済ませています。
(亀田真由)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
・第一三共
・武田薬品工業
・大塚ホールディングス(大塚製薬/大鵬薬品工業)