国内初の治療用アプリとなるCureAppの「CureApp SC」が12月から保険適用されることが決まりました。注目された保険点数は2540点(2万5400円)。同社の佐竹晃太CEOは「過去には『だいたい数百円』と言われたこともあったが、万単位の収載価格となったことは治療用アプリ産業にとって大きな一歩」と話しています。
既存の技術料を準用
中央社会保険医療協議会(中医協)総会は11月11日、CureAppの禁煙治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリおよびCOチェッカー」の保険適用を了承しました。治療用アプリが公的医療保険で使えるようになるのは初めて。保険点数は2540点(2万5400円)で、12月1日から保険適用されます。
CureApp SCは、「患者アプリ」「COチェッカー」「医師アプリ」の3つで構成。呼気CO濃度の測定結果や患者が入力した喫煙状況などに基づき、その人に合った助言を行うことで、行動変容を促します。対象となるのは、禁煙補助薬バレニクリンを使った禁煙治療を受けるニコチン依存症患者。国内で行われた臨床第3相(P3)試験では、通常の禁煙治療に上乗せすることで継続禁煙率が上昇し、今年8月に治療用アプリとして国内初の薬事承認を取得しました。
特定保険医療材料としては算定されず
CureApp SCの保険適用は、企業側が求めていた特定保健医療材料としての価格算定は行われず、既存の技術料を準用する形で点数が設定されました。CureApp SCを使った場合に算定できる点数は、(1)在宅振戦等刺激装置治療指導管理料の導入期加算(140点)と(2)疼痛等管理用送信器加算(600点×4回分)。(1)は患者への導入教育に対する点数で、(2)は治療用アプリに対する点数となります。
厚生労働省はこの日の中医協総会で、点数の算定方法について「医師の指導や技術を補助する機能は、技術料として評価するのが妥当だと考えている。CureApp SCは、消耗品であるCOチェッカーとアプリが一体として薬事承認されており、その価格もあわせて評価した」と説明しました。
「的確に評価していただいた」
CureAppは、特定保険医療材料として6万3580円の価格設定を求めていましたが、これは叶わず、実際の点数も企業側の希望を大きく下回りました。
それでも、同社の佐竹晃太CEO(最高経営責任者)は、中医協総会終了後の記者会見で「最初の風穴を開けたという点で意義深い」と強調。「過去には『ニコチン依存症管理料の2割くらい、だいたい数百円が妥当ではないか』と言われたこともあった。万の単位で保険算定され、ソフトウェアによる治療の効果を的確に評価していただいたと感じている」と話しました。
保険適用の了承を受けて記者会見したCureAppの佐竹CEO(CureApp提供)
ピーク時の販売予想は年間7.5億円
中医協の資料によると、CureApp SCはピーク時に年間2万9000人あまりの患者に使われ、販売額は年間7.5億円と予測されています。佐竹CEOは「禁煙外来の中で3割くらいの人に使ってもらうというのが資料の数字。ただし、そうした数字にこだわらず、禁煙外来を行うすべての医療機関に導入を目指すのが基本的なスタンスだ」と述べました。
国内では現在、サスメドやSave Medical、塩野義製薬など、複数の企業が治療用アプリを開発中。CureAppも、ニコチン依存症に続くプロダクトとして、高血圧症や非アルコール性脂肪性肝炎などを対象に開発を進めており、今後、続々と治療用アプリが臨床の現場で使われるようになると予想されています。
「新規の評価枠が必要」
そうした中、11日の中医協総会では、治療用アプリの保険適用のあり方について委員からさまざまな意見が出ました。
全国健康保険協会の吉森俊和理事は、「そもそも、どういったプログラムが治療に資するものとして医療機器に該当するのか。保険適用としての考え方を早急に整理する必要がある。現行の診療報酬の準用でいいのか、新しい体系をつくる必要があるのか、議論を深めておくべき」と指摘。日本医師会の松本吉郎常任理事も「今後、アプリを使った医療機器を次々と保険適用していくということについては、かなり慎重な審議が必要。そのような仕組みで保険適用するのか一番いいのか、相当厳しい目で見ていく必要がある」と述べました。
「保険収載、難易度極めて高い」
健康保険組合連合会の幸野庄司理事は「無料の健康管理アプリが山ほどある中、今後も健康管理なのか治療なのか、境目のつかないようなものがどんどん出てくるだろう」とし、「そもそも、医療のデジタル化は効率化や医療費の適正化につながるものでなければならない」と指摘しました。
こうした意見に対して佐竹CEOは会見で、「どの意見も、健全な産業を育成する上で妥当な指摘だと思う。治療用アプリという新しいモダリティを普及させる上で適切な議論で、そうした議論を経て健全に育成していくことが大事」と話しました。
CureApp SCの保険適用で普及への道が開かれつつある治療用アプリですが、佐竹氏は「保険収載の難易度は依然として極めて高い」とし、「診療報酬に『治療用アプリ』『デジタル治療』という新規の枠を設けることが非常に重要だ」と強調しました。
(前田雄樹)
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