AnswersNewsが、2019年12月期(一部の日本企業は20年3月期)の世界売上高100億ドル超の製薬会社23社の業績を集計したところ、スイス・ロシュが3年連続で売上高世界一となりました。2位は米ファイザー、3位はスイス・ノバルティスで、トップ3は前年と変わらず。一方、シャイアー買収が通年で寄与した武田薬品工業は売り上げを大きく伸ばし、日本の製薬会社としては初めて世界トップ10に入りました。
ロシュ 売上高は6.7兆円
3年連続で売上高世界一となったスイス・ロシュは、前年比8.1%増(公表通過ベース)の618億6900万ドル(約6兆7428億円)を売り上げました。2位は517億5000万ドル(前年比3.5%減)の米ファイザー、3位は474億4500万ドル(6.0%増)のスイス・ノバルティス。以下、米メルク(468億4000万ドル、10.7%増)、英グラクソ・スミスクライン(431億200万ドル、9.5%増)と続き、8位までは前年と同じ顔ぶれとなりました。
ロシュは抗がん剤「リツキサン」や同「ハーセプチン」がバイオシミラーの影響で売り上げを落としたものの、多発性硬化症治療薬「オクレバス」(37億4500万ドル、57%増)や抗がん剤「パージェタ」(35億5700万ドル、29%増)、免疫チェックポイント阻害薬「テセントリク」(18億9400万ドル、143%増)などが拡大しました。
ノバルティスは乾癬治療薬「コセンティクス」(35億5100万ドル、25%増)や心不全治療薬「エンレスト」(17億2600万ドル、68%増)などが好調で増収。ファイザーは、乳がん治療薬「イブランス」(49億6100万ドル、20%増)や関節リウマチ治療薬「ゼルヤンツ」(22億4200万ドル、26%増)などが伸びましたが、コンシューマーヘルスケア事業の分離や特許切れ薬の落ち込みが響きました。
4位のメルクは免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(110億8400万ドル、55%増)が年間売上高100億ドルを突破。5位のGSKは「シングリックス」などのワクチンや「ジャルカ」などの抗HIV薬が牽引しました。
武田 シャイアー買収でトップ10入り
米ジョンソン・エンド・ジョンソンは乾癬・クローン病治療薬「ステラーラ」や抗がん剤「ダラザレックス」、同「イムブルビカ」などが伸び、6位をキープ。7位の仏サノフィは希少疾患事業が好調でした。米アッヴィはTNFα抗体「ヒュミラ」が191億6900万ドルで4%減となったものの、乾癬治療薬「スキリージ」や白血病治療薬「ベネクレクスタ」などの新製品で補いました。
潰瘍性大腸炎・クローン病治療薬「エンティビオ」(31億8600万ドル、29.0%増)が好調な武田薬品工業は、シャイアーの買収が通年で寄与し、売上高は56.9%増の302億ドルと大幅に増加。前年16位から大きく順位を上げ、9位にランクインしました。
米ブリストル・マイヤーズスクイブも昨年11月に完了したセルジーン買収が貢献し、前年から1ランクアップ。免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」は72億400万ドルで7%伸びました。
[23社の全ランキング]アストラゼネカやノボなど大幅増収
トップ10以降で前年から大きく売り上げを伸ばしたのは、11位の英アストラゼネカ(10.4%増)、15位の独ベーリンガーインゲルハイム(8.6%増)、17位のデンマーク・ノボノルディスク(9.1%増)など。
アストラゼネカは肺がん治療薬「タグリッソ」(31億8900万ドル、71%増)などがん領域の新製品が好調で、前年から2つ順位を上げました。ベーリンガーインゲルハイムはSGLT2阻害薬「ジャディアンス」(24億1000万ドル、47%増)が伸び、ノボはGLP-1受容体作動薬「オゼンピック」(16億8600万ドル、142%増)などが牽引しました。
米イーライリリーは前年から5ランクダウンしたものの、GLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(41億2800万ドル、29%増)や乾癬治療薬「トルツ」(13億6600万ドル、46%増)などの拡大で3.8%の増収。一方、米アムジェンはバイオシミラーの影響で1.6%の減収となり、イスラエル・テバは多発性硬化症治療薬「コパキソン」が後発品との競争で売り上げを落としたことが響きました。
武田以外の日本企業では、大塚ホールディングスが128億1200万ドルで21位、アステラス製薬が119億3600万ドルで22位となりました。
研究開発費 トップのロシュは1.4兆円
研究開発費が最も多かったのは売上高と同じくロシュで、その額は前年比5.6%増の128億5800万ドル(約1兆4013億円)。2位はメルク(98億7200万ドル、1.2%増)、3位はノバルティス(94億200万ドル、10.8%増)と続き、上位3社は日本円で1兆円を超えました。
売上高に対する研究開発費の比率では、米ギリアド・サイエンシズが40.6%でトップ。ギリアドの研究開発費は91億600万ドルで、前年から81.5%増加しました。イーライリリー(25.1%)やアストラゼネカ(24.8%)、ブリストル(23.5%)なども売り上げの2割以上を研究開発に投じています。
ファイザー、5~6位に後退へ
2020年は、ロシュが1ケタ台前半から半ばの売上高成長を予想。ファイザーは特許切れ医薬品事業を分離する影響で407~423億ドル(19年の業績に基づくランキングでは5~6位に相当)と大幅な減収を見込んでおり、上位の顔ぶれにも変化がありそうです。ノバルティスは1ケタ台半ばから後半の増収となる見通しで、メルクは461~481億ドル(前年比2%減~3%増)を予想しています。
米アッヴィは今年5月にアイルランド・アラガンの買収を完了しており、売上高は大きく拡大する見込み。セルジーン買収が通年で寄与するブリストルは400~420億ドルの売り上げを予想しており、さらに順位を上げそうです。アストラゼネカも1ケタ台後半から10%台前半の高成長を見込んでいます。
新型コロナウイルス感染症の影響を通年の業績予想に織り込んでいない企業もあり、各社の予想は今後、パンデミックの行方によって変動する可能性もあります。
(前田雄樹・亀田真由)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
・アステラス製薬
・武田薬品工業
・大塚ホールディングス(大塚製薬/大鵬薬品工業)
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