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ニュース解説

新規モダリティ 事業化に立ちはだかる「製造の壁」

細胞治療などの事業化をめぐって、商業生産体制の確立がハードルとなるケースが相次いでいます。サンバイオは、製造委託先への技術移転が遅れ、再生細胞薬の国内申請を延期。第一三共も腫瘍溶解性ウイルスの申請が遅れています。製造が難しい細胞医薬などを、いかにして商業規模で安定的に製造していくか、大きな課題となっています。

 

サンバイオ 申請延期の3つの理由

「ギリギリまで承認申請を目指してやってきたが、安定供給に向けた体制強化が必要と考え、時間をかけて準備を進めるべきだと判断した」

 

サンバイオの森敬太社長は3月18日の決算説明会で、開発中の再生細胞薬「SB623」の国内申請を1年先送りしたことについてこう語りました。同社は昨年12月、外傷性脳損傷を対象とするSB623の国内申請予定を、従来の「2020年1月期中」から「21年1月期中」へと延期すると発表。商業生産体制の構築が遅れていることが原因で、18日の説明会では森社長がその詳細を説明しました。

 

SB623は、健康成人の骨髄液から取り出した間葉系幹細胞を加工・培養した他家細胞医薬品。脳内の損傷部位周辺に注射すると、神経細胞の再生を促し、失われた機能を回復させるとされています。18年11月には、慢性期外傷性脳損傷を対象に行った国内臨床第2相(P2)試験で、対照群に比べて統計学的に有意に運動機能を改善し、主要評価項目を達成したと発表。翌19年4月には国の「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定され、早期承認への期待が高まっていました。

 

製造委託先への技術移転に遅れ

18日の説明会で森社長が申請先送りの理由として挙げたのは、▽新たな製造委託先への技術移転の遅れ▽商業生産に必要な管理体制の構築▽規格試験の要件不足――の3点。

 

製造委託先である日立化成への技術移転については「量産化技術は確立している」(森社長)ものの、技術移転のプロセスに課題があり、「過去の(治験薬の)製造委託先のレベルまで習熟度が達していない」(同)。「原材料管理」「品質保証」「分析体制」といった管理体制の構築も含め、「初めての商業生産ということで追加的な対応が必要なところがある」(同)といい、社長直轄のプロジェクトとして商業生産体制の確立を進めていると説明。森社長は「これまでも2度、異なるCMOへの技術移転を成功させており、今回も時間をかけることでできると考えている」と強調しましたが、具体的な申請時期については明らかにしませんでした。

 

第一三共も申請先送り

細胞や遺伝子、ウイルスなどを使った新しいタイプの医薬品をめぐっては、商業生産の確立が事業化のハードルとなるケースが少なくありません。

 

第一三共は昨年10月の決算説明会で、19年度上半期を予定していた腫瘍溶解性ウイルス「DS-1647(G47Δ)」の申請が遅れていることを明らかにしました。説明会の席上、同社は「製造面で検討を要することがある」とし、製造委託先であるデンカ生研の商業生産体制に課題があることを示唆。昨年10月の時点では19年度下半期の申請を目指すとしていましたが、年度末も迫った今になっても申請したとの発表はなされていません。

 

細胞医薬や遺伝子治療薬は、化学合成でつくる低分子医薬品と違って製造が難しく、商業規模で高品質な製品を安定的に製造できるかどうかが大きな課題となっています。

 

生産能力が買収の決め手に

「これまでにも遺伝子治療薬の研究開発をやってきたが、最も難しかったのが製造法の確立。買収によって、克服し難かったチャレンジとのギャップを埋めることができる」。今年1月、遺伝子治療薬手掛ける米オーデンテス・セラピューティクスを買収したアステラス製薬の岡村直樹副社長は、オーデンテスが商業生産に対応できる大規模な製造能力を持っていることが買収の大きな決め手になったと話します。

 

一方、こうした状況を商機と見ているのが、CMO(医薬品受託製造機関)やCDMO(医薬品受託製造開発機関)です。

 

AGCは3月17日、遺伝子治療や細胞治療の研究・開発・製造を行うイタリアのモレキュラー・メディシンを約283億円で買収すると発表しました。AGCはCDMO事業の幅を遺伝子治療や細胞治療に広げることでライフサイエンス事業を強化。富士フイルムもCDMO事業を手掛ける欧米の子会社に積極的に設備投資し、遺伝子治療薬や細胞治療の製造受託の拡大を目指しています。

 

(前田雄樹)

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