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糖尿病 迫る市場の縮小…相次ぐ事業見直しの一方、大日本住友は国内事業の柱に

患者数の増加と新薬の普及を背景に、抗がん剤に次ぐ一大市場に成長した糖尿病治療薬。足元は堅調ですが、新薬開発は下火になっており、近い将来、市場は縮小に転じる見通しです。海外の大手を中心に糖尿病領域の事業を見直す動きが起こる中、大日本住友製薬は国内事業の柱としてラインアップを強化させています。

 

22年をピークに国内市場は縮小へ

IQVIAの医薬品市場統計によると、2019年の国内の糖尿病治療薬市場は前年比5.0%増の5769億円(薬価ベース)。10年前の09年(3207億円)と比べると市場規模は1.8倍に拡大し、今や抗がん剤(19年度は1兆4042億円)に次いで国内で2番目に大きな市場となっています。

 

市場拡大を支えているのは、09年以降に相次いで登場した新薬の普及です。牽引役となったDPP-4阻害薬は、09年発売の「ジャヌビア/グラクティブ」(MSD/小野薬品工業)を皮切りに9成分10品目が発売。低血糖を起こしにくく使いやすい点が評価され、発売直後から爆発的に売り上げを伸ばしました。インスリンを介さないユニークな作用機序を持つSGLT2阻害薬も、14年の「スーグラ」(アステラス製薬)以降、6成分7品目が立て続けに発売。DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤もすでに3剤販売されています。

 

これら経口剤に加え、DPP-4阻害薬と同じインクレチン関連薬に分類される注射のGLP-1受容体作動薬も、これまでに4成分5品目が発売。インスリン製剤との配合剤も登場したほか、年内には経口剤も承認される見通しで、徐々に存在感を高めています。

 

【国内で糖尿病治療薬を販売・開発している主な企業】(メトホルミンなどのビグアナイド系薬、速効型インスリン分泌促進薬などは除く)(<社名>製品): <大日本住友製薬>トルリシティ/エクア/エクメット/イメグリミン |<武田薬品工業>ネシーナ/ザファテック/イニシンク/リオベル |<MSD>/ジャヌビア |<アステラス製薬>スーグラ/スージャヌ |<ノボノルディスクファーマ>トレシーバなど/ビクトーザ/ゾルトファイ/経口セマグルチド |<アストラゼネカ>ビデュリオン/バイエッタ/cotadutide(P1/2) |<小野薬品工業>フォシーガ/グラクティブ |<協和キリン>オングリザ |<サノフィ>ランタスなど/リキスミア/ランタス+リキスミア |<第一三共>テネリア/カナリア |<田辺三菱製薬>カナグル |<大正製薬>ルセフィ |<日本ベーリンガーインゲルハイム>ジャディアンス/トラゼンタ/トラディアンス |<日本イーライリリー>ヒューマリンなど/tirzepatide(P3) |<興和>デベルザ/スイニー |<三和化学研究所>スイニー/メトアナ |※各社のホームページなどをもとに作成

 

市場は当面拡大が続きますが、民間調査会社の富士経済が18年8月に発表した市場予測によると、国内の糖尿用治療薬市場は22年をピークに縮小に転じる見通し。DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬が特許切れを迎え、後発医薬品に置き換わっていく一方、各社のパイプラインを見てもこれらに続く大型の新薬候補はほとんどありません。

 

現在、国内で開発されている新規の糖尿病治療薬は、▽大日本住友製薬のイメグリミン(臨床第3相〈P3〉試験完了)▽日本イーライリリーのtirzepatide(P3試験実施中)▽アストラゼネカのcotadutide(P1/2試験実施中)――くらい。各社がDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬の開発を激しく競っていた数年前までと比べると、パイプラインは枯渇しています。

 

【糖尿病治療薬の市場予測のグラフ】:2016・2017年のデータと2018年の見込み、2019~2016年の予測。2016年(4600億円強)~2022年(5200億円強)まで徐々に増え、移行2026年(4492億円)まで減少見込み。|※富士経済「医療用医薬品国内市場調査(1)」(2018年8月発表)をもとに作成

 

サノフィは糖尿病研究から撤退

国内外の大手製薬企業は、がんなど高い成長が期待できる領域に経営資源を集中させており、糖尿病領域の事業を見直す動きが相次いでいます。

 

仏サノフィは昨年12月、血友病治療薬や抗がん剤など「アンメットニーズの高い領域で医療のあり方を一変させる可能性がある」新薬への投資を優先する一方、糖尿病や循環器疾患の研究は中止すると発表。海外で開発していた長時間作用型のGLP-1受容体作動薬efpeglenatideの発売も中止することを明らかにしました。

 

同年9月に就任したサノフィのポール・ハドソンCEO(最高経営責任者)は「サノフィは糖尿病と循環器疾患の領域でリーダーの座を獲得し、医療のあり方を変えた。今後は次の変革に備える」と説明。日本法人もグローバルに続く予定で、現在パイプラインにある製品の開発は行うものの、今後の研究開発は見直すといいます。

 

武田薬品工業は、13年12月に次世代の糖尿病治療薬として日米欧でP3試験を行っていたGPR40作動薬ファシグリファムの開発を中止。16年には糖尿病領域の創薬研究から撤退しました。スイス・ノバルティスも19年に、日本で▽DPP-4阻害薬「エクア」▽DPP-4阻害薬/メトホルミン配合剤「エクメット」▽SGLT2阻害薬「ルセフィ」――の販売を他社に移管。糖尿病治療薬の販売から手を引きました。

 

国内No.1うかがう大日本住友

こうした動きと裏腹に、糖尿病領域の強化に動いているのが大日本住友製薬です。

 

ビグアナイド系薬「メトグルコ」や速攻型インスリン分泌促進薬「シュアポスト」を販売していた同社は、15年に日本イーライリリーと販売提携を結び、同社が開発したGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(15年9月発売)の販売を担当。19年11月からは、ノバルティスファーマからの販売移管を受けて「エクア」「エクメット」の販売を開始しました。

 

大日本住友製薬によると、エクアとエクメットの18年度の売上高はあわせて500億円(薬価ベース)。両剤が加わったことで、同社の糖尿病領域の売上高は薬価ベースで年間900億円規模に拡大しており、同社は「国内糖尿病No.1メーカー」の座をうかがっています。

 

同社は次の中期経営計画(23~27年度)で国内売上高2000億円(19年度は1370億円を予想)を目指すとしており、糖尿病領域はその重要な柱。21年度に発売を見込むイメグリミンと、国内最主力品となったトルリシティをどこまで伸ばせるかが、国内2000億円達成の鍵を握ることになります。

 

(亀田真由)

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