2020年1月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】甲状腺眼症治療薬「Tepezza」やピーナッツアレルギー治療薬「Palforzia」など
「Ayvakit」米ブループリント
「Ayvakit」(一般名・avapritinib)は、PDGFRA Exon 18変異を有する切除不能または転移性消化管間質腫瘍の適応で承認されました。承認のもととなった臨床試験では、84%の患者で腫瘍の縮小を確認。欧州でも開発を進めており、同適応で申請中です。
「Tepezza」アイルランド・ホライズン
抗IGF-1R抗体「Tepezza」(teprotumumab)は、米国初の甲状腺眼症治療薬として承認を取得。甲状腺眼症はバセドウ病や橋本病によって起こる自己免疫疾患で、失明につながるおそれもあります。甲状腺眼症のほか、びまん性全身性強皮症の適応でも臨床第1相(P1)試験を実施中です。
「Tazverik」米エピザイム
EZH2阻害薬「Tazverik」(tazemetostat)は、転移性または局所進行の切除不能類上皮肉腫の適応で承認されました。EHZ2は、発がんプロセスに関わっていると考えられているエピジェネティック酵素で、同酵素をターゲットとする治療薬は米国で初めて。日本では導出先のエーザイがB細胞性非ホジキンリンパ腫を対象にP2試験を行っています。
「Trijardy」独ベーリンガーインゲルハイム
独ベーリンガーインゲルハイムと米イーライリリーは、2型糖尿病治療薬の3剤配合剤「Trijardy」の承認を取得。SGLT2阻害薬「Jardiance」(empagliflozin、日本製品名・ジャディアンス)とDPP-4阻害薬「Tradjenta」(linagliptin、トラゼンタ)、metforminを配合しています。1日1回1錠で済むため、これらを併用している患者の利便性向上が見込まれます。
「Palforzia」米アイミューン
米国初のピーナッツアレルギー治療薬「Palforzia」が承認。経口免疫療法として使うピーナッツアレルゲンパウダーで、予期せぬ暴露によるアレルギー反応のリスクを抑えると期待されています。ピーナッツアレルギーは米国で160万人以上の小児患者がいるとされており、今回承認された4~17歳に加え、1~3歳を対象とした臨床試験を実施中。欧州でも申請しています。
【適応拡大】「Keytruda」の筋層非浸潤性膀胱がんやsemaglutideの心血管リスク低減など
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、筋層非浸潤性膀胱がん(上皮内がん)への適応拡大が承認されました。手術不適応でBCG非応答の高リスク患者が対象です。
「Ozempic」「Rybelsus」デンマーク・ノボ ノルディスク
GLP-1受容体作動薬semaglutideは、注射剤の「Ozempic」と経口剤の「Rybelsus」が2型糖尿病患者の心血管リスクの低減で承認。Rybelsusは19年9月に初の経口GLP-1受容体作動薬として発売。欧州でも近く承認される見通しで、日本でも申請中です。
「Dificid」米メルク
マクロライド系抗菌薬「Dificid」(fidaxomicin)は、小児患者のクロストリディオイデス・ディフィシル感染症への適応拡大の承認を取得しました。同薬は成人患者を対象に11年に発売。日本ではアステラス製薬が「ダフクリア」の製品名で感染性腸炎を対象に販売しています。
「Invokamet」米ヤンセン
SGLT2阻害薬canagliflozinとmetforminの配合剤「Invokamet」は2型糖尿病患者の末期腎臓病・心血管リスクの低減で新たに承認されました。米ヤンセンはcanagliflozin(製品名・Invokana)でも腎不全と心不全の適応で19年9月に承認を取得しています。同薬の創製は田辺三菱製薬で、日本(製品名・カナグル)でも糖尿病性腎症の適応でP3試験を実施中です。
(亀田真由)