米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは加齢黄斑変性。昨年10月、米国でノバルティスの「Beovu」(一般名・ブロルシズマブ)が承認されました。「アイリーア」をしのぐ大型薬になるとも言われるBeovuの登場で、市場競争は激しさを増します。
(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
投与間隔を延長
昨年10月、ノバルティスの「Beovu」(一般名・ブロルシズマブ)が米国で承認された。滲出型加齢黄斑変性治療薬としては、「マクジェン」(ボシュロム/ファイザー)、「ルセンティス」(ノバルティス)、「アイリーア」(リジェネロン/バイエル/参天製薬)に続く4剤目の抗VEGF薬。いずれも治療に進歩をもたらしたが、市場は今後、細分化が進むだろう。ノバルティスには、さらなる競合(バイオシミラーを含む)が参入する前に、Beuvuがほかの抗VEGF薬とは明らかに違うものだと眼科医に認識させなければならないプレッシャーがかかっている。
滲出型加齢黄斑変性治療の重大なアンメットニーズの1つが、抗VEGF薬の投与頻度を下げることである。眼科医は通常、抗VEGF薬を処方する際、疾患活動性が管理できている患者に対しては投与間隔を伸ばす「treat-and-extend」を採用する。
Beovuは導入期として1カ月ごとに3回投与したあと、8~12週ごとに1回投与する使用法でFDA(食品医薬品局)の承認を得た。一方、アイリーアは1年目に2カ月ごとの投与で効果が認められた場合、その後は投与間隔を12週まで延ばすことができると米国のラベルに記載されている。
この点、Beovuはアイリーアより有利と言えるが、実際の臨床現場で両者の投与頻度がどれほど差別化されるかは定かではない。Beovuの承認前にDecision Resources Groupがインタビューした眼科医らは、投与頻度のメリットよりも、網膜浸出液の消失でアイリーアより優れていることの方が印象的だと述べている。
アラガンの新薬も今年半ばに発売へ
ノバルティスは昨年9月に開始したグローバル臨床第3相(P3)試験「TALON試験」で、同じtreat-and-expandプロトコールに従ってBeovuまたはアイリーアを投与し、Beovuの治療効果の持続性をアイリーアと比較する意向だ。同試験の最初のデータが公表されるのは2021年になるとみられる。
一方、リジェネロン/バイエルは高用量アフリベルセプトの効果持続期間を検討するP2試験(2021年終了予定)を行っている。アラガンのabicipar pegol(こちらも12週1回投与)も今年半ばに発売されるとみられており、競争は激化する。
さらに、開発段階にある新たな抗VEGF療法も姿を現しつつある。生物学的製剤の長時間作用型ポート(眼内留置式)デリバリーシステムを使ったもので、治療間隔を6カ月まで延ばすことができるといい、硝子体内投与の利便性の向上を目指している。
ノバルティスは、競合新薬に先駆けて市場に参入し、浸透の機会を最大化するため、FDAからBeovuの優先審査をとりつけるなど、発売前から積極的なアプローチをとった。
(原文公開日:2019年12月18日)
この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。
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