2019年10月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】加齢黄斑変性薬Beovuや嚢胞性線維症薬Trikaftaなど
「Aklief」スイス・ガルデルマ
「Aklief」(一般名・trifarotene)は、ざ瘡(にきび)治療に使うクリーム剤。レチノイン酸受容体γに結合するレチノイド分子としては、米国で約20年ぶりの新薬となります。1剤で顔と身体の両方に使えるので、利便性向上が期待されています。
「Scenesse」豪クリヌベル
メラノコルチン1受容体拮抗薬「Scenesse」(afamelanotide)は、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症(EPP)による光毒性反応(皮膚の損傷)のある成人患者を対象に承認を取得。EPPは日光に暴露したあとに痛みや発赤が起こる疾患で、ひどい場合には水疱やびらんが症状に出ることもあります。臨床試験では皮下インプラントのScenesseを使用することで、痛みなく露光できる時間が大幅に増加しました。
「Beovu」スイス・ノバルティス
抗VEGF抗体「Beovu」(brolucizumab)が滲出型加齢黄斑変性の適応で承認されました。臨床試験では、同効能薬の「Eylea」(aflibercept)と比べて網膜滲出液を大幅に減少。維持期には3カ月に1回の投与で済み、2カ月ごとのEyleaに対して患者負担を軽減すると期待されています。日本でも申請中です。
「Reyvow」米イーライリリー
セロトニン5-HT1F受容体アゴニスト「Reyvow」(lasmiditan)は、片頭痛の急性期治療に使用する経口製剤です。痛みの前兆の有無に関わらず使用できるのが特徴で、急性期の治療薬は米国では約20年ぶり。日本では現在、臨床第2相(P2)試験を行っています。
「Secuado」久光製薬
1日1回貼付の経皮吸収型統合失調症治療薬「Secuado」(asenapine)が承認されました。asenapineは、米国ではアイルランド・アラガンが舌下錠を販売していますが、経皮吸収型製剤は初めてとなります。
「Amzeeq」イスラエル・フォーミックス
尋常性ざ瘡治療薬minocyclineのフォーム製剤「Amzeeq」が承認。これまでの経口剤は副作用が強く、一部の患者にしか使えないのが課題でした。Amzeeqは泡状の製剤のため局所使用可能で、新たな治療選択肢になると期待されています。
「Trikafta」米バーテックス
「Trikafta」(elexacaftor/tezacaftor/ivacaftor)は、嚢胞性線維症の適応で承認を取得しました。対象は、嚢胞性線維症を引き起こすCFTR遺伝子変異で最も一般的なF508del変異を持つ患者。同疾患の約90%の患者が対象となるため、これまで有効な治療がなかった患者にも使用できます。
「Vumerity」アイルランド・アルケルメス
新規経口フマル酸「Vumerity」(diroximel fumarate)は再発型の多発性硬化症を対象に承認。CIS(clinically isolated syndrome)、再発寛解型、活動性の二次進行型のいずれにも使用できます。販売はグローバルでの商業化権を持つ米バイオジェンが担当する予定です。
【適応拡大】Xofuluzaの高リスク患者や、Xareltoの静脈血栓塞栓症予防など
「Entresto」スイス・ノバルティス
心不全治療薬「Entresto」(sacubitril/valsartan)は、小児患者を対象に全身性左心室収縮不全を伴う症候性心不全への適応拡大の承認を取得。日本では慢性心不全の適応で申請中で、小児適応でもP3試験を行っています。
「Descovy」米ギリアド
抗HIV薬「Descovy」(emtricitabine/tenofovir)は、HIVの暴露前予防投与(PrEP法)での使用が承認されました。対象はHIV-1に感染しておらず、性行為による感染のリスクが高い青少年・成人。既承認薬「Truvada」と比べて骨・腎への副作用が低く、より安全に使用できると期待されています。日本ではHIVの治療薬として2017年に発売しました。
「Fasenra」英アストラゼネカ
重症喘息治療薬「Fasenra」(benralizumab)は、自己投与が可能なペン製剤が承認されました。欧州でも承認済みです。日本では18年に皮下注製剤が発売されています。
「Fetzima」アイルランド・アラガン
抗うつ薬「Fetzima」(levomilnacipran)は、大うつ病の維持療法への適応拡大が承認。同薬は選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬で、日本では開発されていません。
「Xarelto」米ヤンセン
抗凝固薬「Xarelto」(rivaroxaban)は、入院時・退院後の静脈血栓塞栓症の予防を対象に適応拡大の承認を取得しました。対象は血栓塞栓合併症の危険があり、出血リスクが高くない急性患者。日本ではバイエル薬品が12年に発売しています。
「Xoflusa」米ジェネンテック(スイス・ロシュ)
塩野義製薬が創製した抗インフルエンザウイルス薬「Xofluza」(baloxavir marboxil)は、合併症を併発するリスクが高い患者への適応拡大が承認されました。重症化しやすい高齢患者や、肺疾患・代謝性疾患などの基礎疾患をもつ患者に使用できる抗インフルエンザ薬は米国で初めてとなります。
「Nplate」米アムジェン
免疫性血小板減少症治療薬「Nplate」(romiplostim)は、成人の早期患者への使用が承認されました。臨床試験では、32%の患者が6カ月間、治療なしで過ごすことができたといいます。同薬はトロンボポエチン受容体作動薬で、日本では協和キリンが慢性特発性血小板減少性紫斑病と再生不良性貧血の適応で販売しています。
「Stelara」米ヤンセン
抗IL-12 /23p40抗体「Stelara」(ustekinumab)は、潰瘍性大腸炎への適応拡大の承認を取得しました。申請のもとになった臨床試験では、約40%の患者がステロイド投与なしで臨床的寛解を達成。日本では乾癬・クローン病の治療薬として販売されており、今年3月に潰瘍性大腸炎の適応でも申請済みです。
「Farxiga」英アストラゼネカ
SGLT2阻害薬「Farxiga」(dapagliflozin)は、2型糖尿病患者の心不全による入院リスクの低減で承認されました。心不全の適応を取得したSGLT2阻害薬は、米ヤンセンの「Invokana」(canagliflozin)に続いて2剤目。日本では小野薬品工業が販売を担当しており、心不全・腎臓病を対象にP3試験を実施中です。
「Ultomiris」米アレクシオン
長時間作用型の抗補体(C5)抗体「Ultomiris」(ravulizumab)は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)への適応拡大が承認。aHUSは補体制御の異常によって起こる非常にまれな疾患で、Ultomirisは補体媒介性の血栓性微小血管障害を抑えることができるといいます。日本では発作性夜間ヘモグロビン尿症の適応で今年9月に発売しました。
「Zejula」英グラクソ・スミスクライン
卵巣がん治療薬「Zejula」(niraparib)は、再発卵巣がんの後期治療への適応拡大で承認を取得しました。同薬はGSKが19年1月に買収した米テサロが創製したPARP1/2阻害薬。BRCA遺伝子変異の有無に関わらず単剤で使用できることが特徴で、維持療法で17年に承認を取得しています。日本では武田薬品工業がP2試験を実施中です。
「Baxdela」米メリンタ
抗菌薬「Baxdela」(delafloxacin)は、市中感染性細菌性肺炎の適応で承認。同薬は湧永製薬が創製した薬剤で、18年に急性細菌性皮膚・軟部組織感染症治療薬として発売。FDAから認定感染症製品に指定されており、優先審査での承認となりました。
【バイオシミラー】フェネックスのteriparatide
「Bonsity」米フェネックス
ヒト副甲状腺ホルモン製剤「Bonsity」は、teriparatide(先発品名・Forteo、米イーライリリー)のバイオシミラーとして承認されました。適応は骨折リスクの高い骨粗鬆症で、閉経後女性や原発・性腺機能低下の男性などが対象。欧州でも申請中です。
(亀田真由)