AnswersNewsが、2018年12月期(一部日本企業は19年3月期)の世界売上高が100億ドル超の製薬会社24社の業績を集計したところ、昨年初めて売上高世界一となったロシュがトップを維持。2位はファイザー、3位はスイス・ノバルティスと、トップ3は前年と同じ顔ぶれでした。
INDEX
ロシュ 新薬が好調で7%増収
2018年に売上高で世界トップとなったのは、公表通貨ベースで前年比6.7%増の579億8300万ドル(568億4600万スイスフラン、6兆4236億円)を売り上げたスイス・ロシュでした。
ロシュは最近発売した新薬が好調。17年発売の多発性硬化症治療薬「Ocrevus」が前年比2.7倍の24億ドルとなったほか、免疫チェックポイント阻害薬「テセントリク」やALK阻害薬「アレセンサ」も50%超の伸び。主力の抗がん剤「ハーセプチン」「アバスチン」も堅調でした。
2位は米ファイザーで売上高は536億4700万ドル(5兆9012億円)。乳がん治療薬「イブランス」や抗凝固薬「エリキュース」などが伸長したものの、特許切れが響き2.1%の増収にとどまりました。スイス・ノバルティスは519億ドル(5兆7090億円)で3年連続の3位。乾癬治療薬「コセンティクス」や心不全治療薬「Entresto」などが売り上げを伸ばし、5.7%の増収となりました。
米メルクは、5.4%増の422億9400万ドル(4兆6523億円)で4位をキープ。16年から17年にかけて複数の製品の特許が切れた影響はあったものの、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(72億ドル、88%増)などが牽引しました。
J&Jとアッヴィは2ケタ増 減収続きのギリアドは10位圏外へ
6位の米ジョンソン&ジョンソンは、乾癬・クローン病治療薬「ステラーラ」や関節リウマチ治療薬「シンポニー」などが好調で、昨年から12.4%増と2ケタ増収。順位も前年から1つアップしました。世界で最も売れている医療用医薬品「ヒュミラ」の売上高が199億3600万ドル(2兆1930億円)に達した米アッヴィも16.1%増と大きく売り上げを伸ばしました。
上位10社が軒並み増収となる中、唯一減収となった7位の仏サノフィも、為替の影響を除くと2.5%増。順位は2つ落としたものの、スペシャリティ領域を扱うサノフィジェンザイムは85億2700万ドル(9380億円、30.8%増)まで成長しました。5位の英グラクソ・スミスクラインは前年から1ランクアップ。帯状疱疹ワクチン「シングリックス」などが堅調でした。
9位の米イーライリリーと10位の米アムジェンは、いずれも新製品が好調で順位を1つずつ上げています。リリーは糖尿病治療薬「トルリシティ」や乾癬治療薬「トルツ」、アムジェンは多発性骨髄腫治療薬「カイプロリス」や二次性副甲状腺機能亢進症治療薬「パーサビブ」などがそれぞれ寄与しました。
一方、米ギリアド・サイエンシズは、15.2%減の221億2700万ドル(2兆4340億円)と昨年に引き続き大幅な減収。CAR-T細胞治療法「Yescarta」などが伸長したものの、C型肝炎治療薬「ハーボニー」「エプクルーサ」の売り上げ減の影響で昨年から順位を3つ下げ、トップ10圏外に転落しました。
[全ランキング]武田 シャイアー買収で2兆円突破 ブリストル・セルジーンも大幅増
ここからは、トップ10を含む全24社のランキングです。
武田薬品工業は、19年1月に完了したシャイアー買収により18.5%と大幅増収。売上高は190億8474万ドルとなり、日本円で2兆円を突破しました。シャイアーの業績が加わったことで売上高に3092億円のプラス影響があったほか、潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」なども貢献し、順位は前年19位から3つ上昇しました。
このほか、前年から大きく増収となったのは、買収による統合を控える20位の米セルジーン(17.5%増)と11位の米ブリストル・マイヤーズスクイブ(8.6%増)。セルジーンは多発性骨髄腫治療薬「レブラミド」、ブリストルも免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」や抗凝固薬「エリキュース」の販売が好調。21位のバイオジェンも10%近く売り上げを伸ばしました。
イスラエル・テバは多発性硬化症治療薬「コパキソン」の特許切れなどで15.8%の減収となり、17位にランクダウン。13位の英アストラゼネカや14位の独ベーリンガーインゲルハイム、15位の独バイエル、24位のマイランは売り上げを落としました。
武田以外の日本企業では、アステラス製薬が118億8700万ドル(1兆3063億円)で22位、大塚ホールディングスは117億5700万ドル(1兆2920億円)で23位となりました。
研究開発費 ロシュとアッヴィが100億ドル超
研究開発費が最も多かったのは前年に引き続きロシュで、その額は123億3400万ドル(1兆3664億円)。アッヴィは前年の2倍以上となる103億2900万ドル(1兆1362億円)を投資しました。3位は97億5200万ドル(1兆727億円)で米メルク、4位は91億ドル(1兆10億円)でノバルティスでした。
売上高に対する研究開発費の比率はセルジーンが37.1%でトップ。アッヴィ(31.5%)やブリストル(28.1%)、アストラゼネカ(26.9%)も売上高の4分の1以上を研究開発に投じました。
19年も首位はロシュ予想 大型買収でトップ10の顔ぶれに変化か
2019年は、ロシュが1桁台前半から半ばの売上高成長を予想。追うファイザーは520~540億ドルと微減から横ばいの予想のため、ロシュが3年連続でトップを維持する可能性が高そうです。ノバルティスは売上高で1桁台半ばの成長を見込み、メルクは売上高439~451億ドル(3.8~6.6%増)を予想しています。
買収したシャイアーの業績が通年で寄与する武田は、売上高300億3000万ドル(3兆3000億円、57.4%増)を予想。ブリストルもセルジーン買収が予定通り完了すれば、武田とともにトップ10に食い込みそうです。
米国で喘息・COPD治療薬「アドエア」に後発医薬品が参入したグラクソ・スミスクラインは、1株当たり利益の成長率が5~9 %減と予想。テバは170~174億ドル(7.9~10.1%減)を見込むほか、アステラスやアムジェンも減収となる見通しです。
(亀田真由)
【AnswersNews編集部が製薬企業をレポート】
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