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バイオシミラー参入に新薬登場…重要イベント控える糖尿病黄斑浮腫 市場の将来展望|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、糖尿病黄斑浮腫治療薬。アイリーアが好調ですが、バイオシミラーの参入や新薬の登場が近づいています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

アイリーア、ルセンティス、アバスチンの適応外使用

糖尿病黄斑浮腫(DME)は糖尿病網膜症(DR)の合併症で、糖尿病患者の失明の主な原因だと言われている。糖尿病患者の増加と高齢化を背景に、主要7カ国のDME患者数は向こう10年で700万人まで増えるとDecision Resources Groupは予測している。

 

DMEは通常、DRの進行期に発症し、眼の異常血管から血液成分が染み出ることで、黄斑浮腫と視力障害を引き起こします。DMEの重症度は浮腫/硬性白斑がどこにできるかで決まる。最も重いのは黄斑の中心窩が冒されているときで、治療せずに放置すると失明に至ることがある。

 

DMEの標準治療は、VEGF(血管内皮増殖因子)阻害薬の硝子体内注射だ。DMEの適応を持っているVEGF阻害薬は「アイリーア」(リジェネロン/バイエル/参天製薬)と「ルセンティス」(ロシュ/ジェネンテック/ノバルティス)の2種類で、「アバスチン」(ロシュ/ジェネンテック)が適応外で使われることもある。

 

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トップシェアはアイリーア

アイリーアはこの分野では新参者であるにもかかわらず、主要7カ国の一部でトップシェアを獲得しており、この7カ国だけで10億ドルを売り上げている。

 

Decision Resources Groupの市場調査によると、アイリーアが選ばれる原動力となっているのは、ベースラインで視力の悪い患者で投与1年後の有効性がルセンティスやアバスチンよりも優れていることを明らかにしたDRCR.net Protocol T試験の結果だ。米国の眼科医の多くは、有効性をはじめとするさまざまな要素で、アイリーアが最も優れたDME治療薬だと考えている。

 

DME治療薬としては、VEGF阻害薬のほかに、硝子体内注射用副腎皮質ステロイド薬(アラガンの「Ozurdex」とAlimera Sciencesの「Iluvien」)が承認されている。しかし、この2剤は、ステロイド誘発性の副作用を来すリスクがある上、一部の市場では処方や保険償還が制限されている。このため、VEGF阻害薬で効果が得られない患者に投与されるケースがほとんどだ。

 

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市場に起こる3つの重要イベント

アバスチンの適応外使用(特に米国)

米国などの一部の市場では、価格と保険償還が最も重要な因子としてDME治療薬の処方に影響を及ぼしている。

 

このため、米国の網膜専門医は、DMEの適応を持つ薬剤が複数承認されているにもかかわらず、圧倒的に価格の安いアバスチンを適応外で使い続けている。欧州の一部の国でも同様に、予算的・地域的な制限を理由にアバスチンが投与されている。

 

薬剤選択で価格が重視される傾向は強まっており、高額な薬剤の使用は制限される可能性がある。米国のメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が、一部のパートB医薬品(アイリーアやルセンティスも含まれる)を段階的に使用できるようにしたことは、その一例と言える。

 

このため医師は、DME患者(特に、新たにDMEの診断を受けた患者)にはアバスチンを試さざるを得なくなっており、アイリーアやルセンティスのシェアは限定される可能性がある。

 

バイオシミラーの参入

ルセンティスには2020年に、アイリーアには2022年に、それぞれ主要国でバイオシミラーが参入してくるとみられている。

 

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Decision Resources Groupは、安全性と有効性を証明する十分なエビデンスがあれば、この2剤のバイオシミラーは医師に受け入れられやすいとみている。ルセンティスとアイリーアは、バイオシミラーの参入によってシェアを落とし、売り上げも減少するだろう。ただ、先に発売されるルセンティスのバイオシミラーがアイリーアに及ぼす影響は限定的(臨床上の有用性が確立されているため)で、アイリーア自体にバイオシミラーが発売されるまでアイリーアは他の追随を許さないだろう。

 

開発段階にある2つの新しいDME治療薬

開発中のDME治療薬の多くは、2つの重要なアンメットニーズにフォーカスしている。それは、VEGF阻害薬を上回る有効性と、VEGF阻害薬より簡単な投与法だ。VEGF阻害薬でも十分な視力改善が得られないDME患者はいるし、頻繁な硝子体内注射は治療の負担が大きい。

 

現在、開発の後期段階に入っている2種類の薬剤―ノバルティスのVEGF阻害薬brolucizumabと、ロシュのVEGF/Ang-2阻害薬faricimab―は、こうした重要なアンメットニーズに対応すべくデザインされたことを考えると、DME治療薬の処方動向に影響を及ぼすと考えられる。

 

実際、これまでの臨床試験結果から、brolucizumabはアイリーアより投与頻度は少なくて済み、faricimabは投与頻度が少なく有効性も優れることが示唆されている。これらの薬剤は現在、臨床第3相(P3)試験が行われており、治療アルゴリズムでの位置付けと市場での成否は試験の結果次第だと言える。

 

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市場は当面伸び悩む?

DME治療薬の市場では、向こう10年でこうした重要なイベントが見込まれている。薬剤の充実や技術の進展などにより、DME治療はますます複雑になっていくだろう。

 

ルセンティスとアイリーアにバイオシミラーが参入し、価格の安いアバスチンも使われ続けるため、DME治療薬の市場は当面、伸び悩むと予想される。

 

一方、brolucizumabとfaricimabの発売は市場拡大を促進するだろう。2019年にはアラガンのabicipar pegolとAllegro OphthalmicsのrisuteganibがDMEを対象にP3試験を始める予定で、市場はさらに拡大する可能性がある。

 

それでもなお、DMEに対して評価の高いアイリーアは引き続き優先的に選ばれる薬剤であり続けるし、高いシェアと売り上げを獲得し続けるだろうと、今のところは予想される。

 

(原文公開日:2018年12月11日)

 

【AnswersNews編集長の目】

加齢黄斑変性治療薬として日本では2012年11月に発売された「アイリーア」(一般名・アフリベルセプト)。その後、病的近視における脈絡膜新生血管(14年9月承認)、糖尿病黄斑浮腫(同年11月承認)、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫(15年6月承認、この適応の一部である網膜中心静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫では13年11月に承認)と適応を広げてきました。

 

記事でもあった通り、アイリーアの販売は好調で、参天製薬の決算によると18年3月期の日本での売上高は515億円(前期比14.1%増)。ライバルであるノバルティスファーマの「ルセンティス」(17年に薬価ベースで233億円)を大きく上回っています。

 

一方、記事で言及のあった新薬では、ノバルティスの抗VEGF抗体ブロルシズマブ(RTH258)が加齢黄斑変性を対象に日本でP3試験を実施中。中外製薬は、ロシュから導入した抗VEGF/Ang2バイスペシフィック抗体について、糖尿病黄斑浮腫でP3試験を、加齢黄斑変性でP1試験を行っています。

 

国内では、ジーンテクノサイエンスが千寿製薬と眼科疾患を対象にバイオシミラー(開発コード・GBS-007)を開発中。先行品名は開示されていませんが、ルセンティスかアイリーアのいずれかとみられ、現在P3試験が行われています。

 

今はアイリーアの独壇場となっている眼科用VEGF阻害薬市場ですが、新薬やバイオシミラーの登場により、数年後には市場にも変化が訪れそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

 

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