市場拡大が著しく、開発競争も熾烈ながん領域。製薬大手の後期開発パイプラインをまとめました(全5記事。この記事は半年をめどに更新していく予定です。全記事まとめはこちら)。
パイプラインは調査時点で各社がホームページで公表していた情報に基づく。いつ時点の情報かは会社によって異なるため、承認・申請など直近のイベントが反映されていない場合もある。 |
武田薬品工業
2017年の米アリアド買収で獲得したALK阻害薬ブリグチニブ(製品名・アルンブリグ)は2021年1月、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんを対象に日本でも承認を取得しました。肺がんではこのほか、EGFR/HER2阻害薬mobocertinib(開発コード・TAK-788)をエクソン20挿入変異の非小細胞肺がんで開発しており、21年度の承認取得を目指しています。
血液がん領域では、NEDD8活性化酵素阻害薬pevonedistat(TAK-924)が臨床第3相(P3)試験段階。高リスクの骨髄異形成症候群で特に有望視されています。他家CAR-NK細胞(キメラ抗原受容体発現ナチュラルキラー細胞)療法のTAK-007は、B細胞性悪性腫瘍を対象としたP1/2試験を進行中です。
日本では、米エクセリクシスから導入したキナーゼ阻害薬カボザンチニブ(カボメティクス)が、腎細胞がんと肝細胞がんの適応で昨年承認されました。同薬は、免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(オプジーボ、小野薬品工業)との併用療法が国内申請中で、昨年9月には、同アテゾリズマブ(テセントリク、中外製薬)とのグローバル併用試験に日本から参加することを発表。複数の試験が進行中で、日本では24年度の承認を目指しています。
アステラス製薬
米シージェンと共同開発している抗ネクチン4抗体薬物複合体(ADC)enfortumab vedotin(Padcev)は、日本と欧州で今年3月、転移性尿路上皮がんを対象に申請を行いました。米国では19年に迅速承認を取得しており、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ)との併用療法など適応拡大に向けた開発が進んでいます。
2016年の独ガニメド買収で獲得した抗Claudin 18.2抗体zolbetuximab(IMAB362)は、胃腺がん・食道胃接合部腺がんでP3試験の段階にあり、膵臓腺がんでもP2試験を行っています。Claudin 18.2は、上皮細胞層の細胞間の隙間を塞ぐタイトジャンクションの主要構成因子。さまざまながん種で発現することが分かっています。
中国では、前立腺がん治療薬エンザルタミド(イクスタンジ)が19年に承認。現在、FLT3阻害薬ギルテリチニブ(ゾスパタ)を申請中です。ギルテリチニブは、寛解導入化学療法後の維持療法や造血幹細胞移植後の維持療法などへの適応拡大を目指し、グローバルP3試験が行われています。
大塚ホールディングス
米子会社アステックスが開発するDNAメチル化酵素阻害薬Inqoviは、骨髄異形成症候群と慢性骨髄単球性白血病を対象に米国で承認を取得。欧州でP3試験を行っています。同薬はDNAメチル化阻害薬デシタビンに新規代謝酵素阻害薬cedazuridineを加えた経口配合剤です。
大鵬薬品工業が創製したFGFR阻害薬フチバチニブ(TAS-120)やdUTPase阻害薬TAS-114、アステックス創製のIAP阻害薬tolinapant(ASTX660)はP2試験段階。futibatinibはP3試験の準備を進めています。
日本では、タカラバイオと共同開発しているCAR-T細胞療法TBI-1501や、NY-ESO-1・siTCR遺伝子治療薬mipetresgene autoleucel(TBI-1301)のP1/2試験を実施中。このほか、HSP90阻害薬ピミテスピブ(TAS-116)を消化管質腫瘍の適応で開発しており、TBI-1301とピミテスピブは年内の申請を目指しています。
第一三共
第一三共は、ADC開発に注力しています。フラグシップの抗HER2 ADCトラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)は、HER2陽性乳がんの治療薬として日米欧で承認を取得。日本と米国では、胃がんの適応でも承認されています。英アストラゼネカとの提携で開発も加速しており、同社の免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブ(イミフィンジ)との併用療法など、複数の試験が進行中。アストラゼネカとは、抗TROP2 ADCのdatopotamab deruxtecan(DS-1062)の開発でも連携しており、昨年末には非小細胞肺がんの適応でP3試験に入りました。
抗HER3 ADC patritumab deruxtecan(U3-1402)は、HER3発現大腸がんや転移性乳がんで臨床試験を行っており、今年2月にはEGFR変異陽性の非小細胞肺がんでもP2試験を開始しました。ADCではこのほか、抗B7-H3 ADCのDS-7300もP1/2試験を行っています。
日本では、腫瘍溶解性ウイルスDS-1647(G47⊿)を神経膠腫の適応で申請中。EZH1/2阻害薬valemetostat(DS-3201)は、成人T細胞白血病/リンパ腫でピボタル試験を行っており、21年度上半期に末梢性T細胞リンパ腫でグローバルP2試験を開始する予定です。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート