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バイオシミラー「グラン」7割「ランタス」3割 切り替え進む―インフリキシマブは苦戦

更新日

バイオ医薬品の特許切れに伴い、続々と市場に登場しているバイオシミラー。厚生労働省が8月末に2016年度分を公表した「NDBオープンデータ」をもとに、比較的最近バイオシミラーが発売された「グラン」「ランタス」「レミケード」について、先行品からの切り替えがどれくらい進んでいるのか集計しました。

 

グランとランタスは順調に切り替えが進んでいる一方、抗体医薬であるレミケードのバイオシミラーは苦戦を強いられています。

 

【フィルグラスチム】持田製薬 先行品抜きトップシェア

がん化学療法による好中球減少症などに使われるG-CSF製剤フィルグラスチム(先行品名・グラン、協和発酵キリン)。バイオシミラーは2013年5月に持田製薬と富士製薬工業、日本化薬、テバ(現・武田テバ)が一斉に発売し、14年11月にはサンドが参入しました。

 

NDBオープンデータから16年度のバイオシミラーの数量シェアを算出したところ、汎用規格である75μg製剤で71.4%に達し、前年度から15ポイント上昇(全製品のデータの揃った外来の院内処方と入院の合計)。金額シェアも59.7%と14.1ポイント伸びました。

 

フィルグラスチムの市場シェアの棒グラフ。【16年度】先行品「グラン」:28.6パーセント、BS持田:41.5パーセント、BS日本化薬:15.9パーセント、BS富士製薬:10.4パーセント、BSサンド:2.6パーセント、BSテバ:0.9パーセント。【15年度】先行品「グラン」:43.6パーセント、BS持田:31.3パーセント、BS日本化薬:15.1パーセント、BS富士製薬:7.9パーセント、BSサンド:1.3パーセント、BSテバ:0.8パーセント。

 

シェア拡大の牽引役は持田製薬。16年度の数量シェアは前年度比10.2ポイント増の41.5%となり、この1年で先行品を抜いてシェアトップに躍り出ました。バイオシミラー内でのシェアは58.2%とほかの4製品を圧倒。持田以外はさほどシェアが上がっておらず、特にサンドとテバは苦戦しています。

 

一方、15年度に43.6%あった先行品のシェアは、16年度には28.6%まで低下しました。協和発酵キリンは14年11月にグランの持続型製剤「ジーラスタ」(ペグフィルグラスチム)を発売。ジーラスタの処方数量は15年度から16年度にかけて1.4倍に増えました。バイオシミラーだけでなく、ジーラスタへのシフトが進んだことも、先行品のシェアを縮小させる要因となっています。

 

【フィルグラスチム】バイオシミラーのシェアの表。【16年度】「グランシリンジ75」処方数量:189,831筒、処方額:16.09億円。BS「モチダ」処方数量:275,412筒、処方額:13.97億円。BS「NK」処方数量:105,529筒、処方額:5.35億円。BS「F」処方数量:68,905筒、処方額:3.49億円。BS「サンド」処方数量:16,955筒、処方額:0.67億円。BS「テバ」処方数量:6,255筒、処方額:0.32億円。「グランシリンジ150」処方数量:40,597筒、処方額:6.89億円。BS「モチダ」処方数量:35,734筒、処方額:2.94億円。BS「NK」処方数量:14,112筒、処方額:1.16億円。BS「F」処方数量:11,833筒、処方額:0.97億円。BS「サンド」処方数量:2,823筒、処方額:0.23億円。BS「テバ」処方数量:996筒、処方額:0.08億円。【15年度】「グランシリンジ75」処方数量:279,7801筒、処方額:26.53億円。BS「モチダ」処方数量:200,952筒、処方額:12.34億円。BS「NK」処方数量:97,096筒、処方額:5.96億円。BS「F」処方数量:50,533筒、処方額:3.10億円。BS「サンド」処方数量:8,461筒、処方額:0.52億円。BS「テバ」処方数量:5,135筒、処方額:0.32億円。

 

【インスリン グラルギン】イーライリリーが存在感

基礎インスリン製剤市場でもバイオシミラーが存在感を高めています。インスリン グラルギン(ランタス、サノフィ)には、15年8月に日本イーライリリーが、16年7月に富士フイルムファーマが、それぞれバイオシミラーを発売しました。

 

16年度のバイオシミラーの数量シェア(キット製剤)は31.5%で、15年度の8.8%から大きく上昇。金額シェアも6.1%から26.3%と20ポイントあまり拡大しました。

 

インスリングラルギンの市場シェアの棒グラフ。【16年度】先行品「ランタス」:68.5パーセント、BSイーライリリー:29.9パーセント、BS富士フィルムファーマ:1.6パーセント。【15年度】91.2パーセント、BSイーライリリー:8.8パーセント。

 

バイオシミラー内でのシェアは、イーライリリーが95.0%。富士フイルムファーマは発売初年度となった16年度に先行品を含めた市場で1.6%のシェアを獲得しました。イーライリリーのインスリン グラルギンは16年に31億円を売り上げ、17年は40億円に達しました。

 

一方、サノフィはランタスの改良型として15年9月に「ランタスXR」を発売。グラン同様、改良型へのシフトがバイオシミラーのシェア拡大の一因となっています。ランタスXRの処方数量は15~16年度の1年で8倍に拡大しました。

 

【インスリングラルギン】バイオシミラーのシェアの表。【16年度】「ランタス注ソロスター」処方数量:3,944,680キット、処方額:81.62億円。BS「リリー」処方数量:1,721,025キット、処方額:27.74億円。BS「FFP」処方数量:91,169キット、処方額:1.39億円。「ランタスXR注ソロスター」632,003キット、処方額:19.6億円。【15年度】「ランタス注ソロスター」処方数量:5,845,920キット、処方額:147.61億円。BS「リリー」処方数量:561,959キット、処方額:9.53億円。BS「FFP」処方数量:-キット、処方額:-億円。

 

【インフリキシマブ】シェアはわずか2.8%

一方、苦戦を強いられているのが関節リウマチなどの治療に使われる抗TNFα抗体インフリキシマブ(レミケード、田辺三菱製薬)のバイオシミラーです。

 

14年11月に日本化薬が国内初の抗体医薬のバイオシミラーとして販売を開始したものの、シェアは16年度の時点で2.8%と低調。処方額も先行品の778億5400万円に対して15億1200万円にすぎず、金額シェアは1.9%にとどまります。

 

インフリキシマブの市場シェアの棒グラフ。【16年度】先行品「レミケード」:97.2パーセント、BS日本化薬:2.8パーセント。【15年度】先行品「レミケード」:98.8パーセント、BS日本化薬:1.2パーセント。

 

インフリキシマブをめぐっては、17年11月に日医工とあゆみ製薬、同年12月にはセルトリオンが、日本化薬に続いてバイオシミラーを発売しましたが、いずれも販売は低調です。

 

【インフリキシマブ】バイオシミラーのシェアの表。【16年度】「レミケード点滴静注用100」処方数量:935,261瓶、処方額:778.54億円。BS「NK」処方数量:26,810瓶、処方額:15.12億円。【15年度】「レミケード点滴静注用100」処方数量:915,468瓶、処方額:819.67億円。BS「NK」処方数量:10,935瓶、処方額:6.54億円。

 

大手参入 AG承認…市場は転換点に

国内のバイオシミラー市場は、大きな転換点を迎えつつあります。

 

その背景の一つが、大手新薬メーカーの参入です。今年1月には協和発酵キリンが抗がん剤リツキシマブ(リツキサン、中外製薬)のバイオシミラーを発売しました。7月にはファイザーのインフリキシマブが承認され、抗がん剤トラスツズマブ(ハーセプチン、中外製薬)もファイザーと第一三共が近く承認を取得する見通し。いずれも11月に薬価収載となる見込みです。

 

国内で承認済・承認間近のバイオシミラー

 

インフリキシマブでバイオシミラーへの切り替えが低調なことからもわかる通り、抗体医薬では特に品質や有効性・安全性に対する懸念が根強くあります。協和発酵キリンのリツキシマブは18年1~6月期に11億円を売り上げており、立ち上がりは順調。18年12月期通期では32億円の販売を計画しています。新薬大手の参入は、バイオシミラーへの信頼感を醸成し、普及の促進につながる可能性があります。

 

もう一つ、市場に大きな変化をもたらすのが、オーソライズド・ジェネリック(AG)です。協和発酵キリンは8月、子会社を通じて腎性貧血治療薬「ネスプ」(ダルベポエチンアルファ)のAGの承認を取得。12月にも発売される見通しとなっています。先行品と同一の「バイオセイム」が通常のバイオシミラーを圧倒するのは確実で、競合他社にとっては大きな脅威となります。

 

厚生労働省は来年度、バイオシミラーの開発支援や理解促進に充てる予算を大幅に拡充し、普及への取り組みに本腰を入れる方針。周辺環境も含め、市場は今後、大きく変わっていきそうです。

 

【NDBオープンデータとは】

厚生労働省がレセプトや特定健診などの情報を収集・格納している「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB=ナショナルデータベース)」のデータの一部を、誰でも自由に利用できるよう単純な集計表として公開したもの。これまでに2014、15、16年度分のデータが公表されている。薬剤に関するデータは、「内用」「外用」「注射」のそれぞれについて、「外来院外」「外来院内」「入院」ごとに、薬効別に処方数量上位100品目を集計。「性別年齢別」「都道府県別」の集計表が公開されている。数量が1000に満たない場合は、具体的な数値は非公開となっている。

 

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AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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