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海外レポート

HIF-PH阻害薬は腎性貧血にとって新たな希望となるのか?|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、腎性貧血の新たな治療選択肢として期待されるHIF-PH阻害薬を取り上げます。ESAが主流の腎性貧血治療にどんな変化をもたらすのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

ESAが抱える課題

腎性貧血患者のヘモグロビン値を改善・維持できる薬剤は限られている。しかし今、新しいクラスの薬剤が姿を現そうとしている。

 

慢性腎臓病(CKD)になると、赤血球の産生を刺激するエリスロポエチンの濃度が低下し、腎性貧血を発症するおそれがある。腎性貧血は現在、鉄剤(経口または静注)や赤血球造血刺激因子製剤(ESA)によって治療が行われている。

 

ESAは非常に効果が高い薬剤だが、高用量を投与しても効果が得られないESA抵抗性の症例が存在することが知られている。また、いくつかの臨床試験の結果から、ESAを使用する脳血管系・心血管系のイベント発生率と死亡率が上昇するおそれがあることもわかっている。

 

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腎臓専門医は、こうした安全性に関する懸念だけではなく、さらに便利で費用対効果の高い治療法が必要だと繰り返し訴えてきた。ESAは注射剤で、透析が不要なCKD患者にとっては決して理想的な選択肢ではない。さらに、ESAは高価なためアクセスが制限されることが多い(例・事前承認を得る必要がある)など、費用償還を取り巻く状況も厳しく、ESAの処方にとって問題となっている。

 

事前承認では通常、病気が進行して透析が必要になれば要件も少なくなるが、透析施設の原価管理もESA製剤への不安を招く原因になっている。透析施設から、ESAの使用を抑えてその分鉄剤の使用を増やしたり、ESAを低用量で使用したりするよう言われた医師も少ななくない。

 

ESAをしのぐメリットをもたらす可能性

ESA製剤には課題も多く、腎臓専門医はこれに替わる治療の必要性を強く訴えている。

 

低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬は、開発段階にある新しいクラスの腎性貧血治療薬だ。

 

HIF系は、低酸素状態に対する人体の応答を適度に調節して、血管新生を促すとともに、好気性代謝を低下させて嫌気性代謝を亢進させる役割を果たす。酸素濃度が正常範囲であれば、HIFはすみやかにHIF-PHによって代謝される。一方、酸素濃度が低くなると、HIF-PHの酵素活性が低下してHIFは分解されず、そのHIFがEPOの分泌を刺激し、鉄の取り込みを増やして赤血球の成熟を促す。

 

HIF-PHの阻害は貧血の新たな治療法になる可能性があり、虚血・再灌流障害によるダメージを防ぐことができると考えられている。

 

透析患者と保存期CKD患者の腎性貧血をターゲットに、複数の製薬企業がHIF-PH阻害薬の開発に取り組んでいる。臨床第3相試験を終えた薬剤はまだないが、これまでに公表された臨床試験データは、HIF-PH阻害薬がESAをしのぐ多くのメリットをもたらす可能性を示している。

 

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ESA低反応性や保存期CKDで普及か

HIF-PH阻害薬は低分子医薬品なので、経口投与が可能だ。ヘモグロビン値の上昇効果はESAよりも著しく優れているというわけではないが、特にESA低反応性の患者や保存期CKD患者に広く普及すると考えられる。

 

これまでの臨床試験では安全性への重大な懸念は認められておらず、HIF-PH阻害薬は安全性の面でも期待が持てそうだ。ただ、ESAに伴う脳血管系・心血管系イベントのリスクは、実際にESAが発売されるまで発見されなかったことには留意しなければならない。HIF-PH阻害薬に対する理解や認知が不十分なことを心配する腎臓専門医もいるし、高い薬価が想定されることも普及に向けてはネックとなる。

 

腎臓専門医はHIF-PH阻害薬に期待してはいるものの、一部には高薬価によるアクセスの問題や長期的な安全性に対する懸念もある。包括的な臨床試験データもまだ発表されていない。

 

ESAが長年にわたって使用実績を積み重ねてきたこと、そしてESAのバイオシミラーが間もなく使用可能になることを踏まえると、HIF-PH阻害薬の普及には保険償還で有利な環境が整備されることが極めて重要になるだろう。

 

(原文公開日:2018年8月17日)

 

【AanswersNews編集長の目】

 次世代の腎性貧血治療薬として期待されるHIF-PH阻害薬が、臨床開発の最終段階に差しかかっています。

 

日本での開発状況を見てみると、アステラス製薬のロキサデュスタットが臨床第3相(P3)試験を行っており、同社は2018年度中の承認申請を計画。グラクソ・スミスクラインのdaprodustat、バイエル薬品のmolidustat、田辺三菱製薬のバダデュスタットもP3試験を実施中で、激しい開発競争が繰り広げられています。

 

記事でも言及があった通り、腎性貧血患者の中にはESAで効果が得られない患者が一定程度おり、HIF-PH阻害薬はこうした患者に対して有力な治療選択肢となります。また、経口投与のため、透析に至っていない保存期の腎性貧血患者にとっては利便性の向上につながります。

 

腎性貧血の主流となっている長時間作用型ESAとして、国内では「ネスプ」(協和発酵キリン)と「ミルセラ」(中外製薬)が販売されており、両剤の売上高は合わせて802億円(ネスプ563億円・ミルセラ239億円)に上ります。協和キリンは今年8月、ネスプのオーソライズド・ジェネリック(AG)の承認を取得しました。HIF-PH阻害薬にAGと、腎性貧血治療薬の市場はこの先数年で大きく変化しそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ(担当:斎藤)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tell:03-5401-2615

 

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