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製薬業界 再編のカギは医薬品卸に?―特許切れ薬 受け皿で存在感

薬価制度の抜本改革を背景に再編の機運が高まる国内の製薬業界。長期収載品や後発医薬品の売却が相次ぐ中、その受け皿として医薬品卸が存在感を示しています。多角化の一環として医薬品事業の強化に動く医薬品卸が、業界再編のカギを握る存在になるかもしれません。

 

卸傘下の製薬企業が相次ぎ譲受

「現在の事業活動では安定的な収益を将来にわたって確保することが困難」として来年3月31日付で解散することを決めた富士フイルムファーマ。後発医薬品を中心に事業を展開してきた同社が、取り扱い製品の承継先・移管先として選んだのは、東邦ホールディングス(HD)の子会社・共創未来ファーマでした。

 

共創未来ファーマは2016年11月設立。東邦HDは同社の設立を機に後発品事業に本格参入しましたが、取り扱い製品は今年6月末時点で15成分42品目にとどまります。今回、富士フイルムファーマから後発品56成分の承継・移管を受けることで、製品ラインアップを拡充する狙いです。

 

アルフレッサHDは第一三共から長期収載品を譲り受けます。第一三共と子会社・第一三共エスファが製造販売する41製品92品目が対象で、同HDの製薬子会社アルフレッサファーマが来年3月1日以降、製造販売承認を承継。アルフレッサHDは医薬品事業を成長分野の1つと位置付けており、品揃えを広げることで医薬品事業を強化します。

 

卸 急ぐ収益の多角化

薬価制度の見直しなどを背景に、製薬企業の間で長期収載品や後発品を手放す動きが広がっています。長期収載品は後発品の普及で急速にシェアを減らしており、今年4月の薬価制度抜本改革では、後発品の発売から10年たった長期収載品の薬価を後発品と同じか近い水準まで段階的に引き下げるルールを新設。後発品も価格競争の激化で利幅が薄くなっている上、2021年度から始まる毎年改定では薬価引き下げの対象になる可能性があります。

 

こうした環境変化を受け、2016年以降、武田薬品工業やアステラス製薬、中外製薬などが相次いで長期収載品を売却。田辺三菱製薬は昨年、長期収載品と後発品を手がける子会社を売却し、エーザイも来年4月に子会社を売却して後発品事業から撤退します。

 

長期収載品や後発医薬品も譲渡の動きの表。2016年4月:武田薬品工業、武田テバ薬品(合弁会社)の長期収載品を譲渡。2016年12月:塩野義製薬、共和薬品工業に長期収載品を譲渡。2017年4月:アステラス製薬、LTLファーマに長期収載品・後発品(子会社)を売却。2018年1月:中外製薬、太陽ファルマに長期収載品を譲渡。2018年10月~2019年3月:富士フィルムファーマ、共創未来ファーマ(東邦HD)に後発品を譲渡予定。2019年3月~:第一三共、アルフレッサファーマ(アルフレッサHD)に長期収載品を譲渡。2019年4月予定:エーザイ、日医工に後発品(子会社)を売却。

 

医薬品卸も低収益にあえいでいます。本業の医療用医薬品事業では、医療機関や薬局と厳しい納入価格交渉を強いられており、薬価の引き下げや後発品の普及が収益を圧迫。各社が本業に続く収益の柱を確保しようと事業の多角化を急いでおり、メーカー側の動きは卸にとってビジネスチャンスとなっています。

 

医薬品事業は本業である卸売事業とのシナジーが期待できる分野。アルフレッサHDは第一三共からの長期収載品の譲受について「医薬品等製造販売事業の規模拡大を図るだけでなく、医療用医薬品等卸売事業など他事業とのシナジーを発揮することを目的としている」とコメントしています。

 

これまで製薬子会社を持たなかったメディパルHDも昨年、JCRファーマと資本業務提携を結んで発行済み株式の22%を取得し、持分法適用会社として同社をグループ傘下に収めました。産業革新機構、武田薬品との共同出資で創薬ベンチャー「スコヒアファーマ」を設立するなど、医薬品開発への投資を加速させています。

 

大手卸の2019年3月期業績予想の表。社名:メディパルHD、売上高31,560億円(前年比0.3パーセント)、営業利益460億円(前年比3.9パーセント)、営業利益率1.46パーセント。【医療用医薬品卸売事業】売上高20,930億円(前年比マイナス1.3パーセント)、営業利益200億円(前年比2.9パーセント)、営業利益率0.96パーセント。社名:アルフレッサHD、売上高26,100億円(前年比0.3パーセント)、営業利益356億円(前年比マイナス14.7パーセント)、営業利益率1.36パーセント。【医療用医薬品卸売事業】売上高22,970億円(前年比0.2パーセント)、営業利益300億円(前年比マイナス15.0パーセント)、営業利益率1.31パーセント。社名:スズケン、売上高20,700億円(前年比マイナス2.5パーセント)、営業利益181億円(前年比マイナス8.3パーセント)、営業利益率0.87パーセント。【医療用医薬品卸売事業】売上高19,820億円(前年比マイナス2.4パーセント)、営業利益149億円(前年比3.5パーセント)、営業利益率0.75パーセント。社名:東邦HD、売上高11,950億円(前年比マイナス1.5パーセント)、営業利益121億円(前年比マイナス36.4パーセント)、営業利益率1.01パーセント。【医療用医薬品卸売事業】売上高11,450億円(前年比マイナス1.4パーセント)、営業利益120億円(前年比マイナス30.1パーセント)、営業利益率1.05パーセント。"

 

卸自体にも再編の可能性

一方、医薬品産業を取り巻く環境の変化は、卸自体にも再編の可能性をもたらします。

 

スズケンと東邦HDは今年7月、東邦HDが手がける顧客支援システムの共同利用に関する基本合意書を締結。合意には、後発品やスペシャリティ医薬品の流通を共同で展開していくことも盛り込まれました。両社は互いの連結子会社に出資することも検討していくとしており、再編の引き金になり得る動きとして注目されています。

 

医薬品卸の再編をめぐっては、2008年10月、メディセオ・パルタックHD(現メディパルHD)とアルフレッサHDが合併に向けた基本合意を結びましたが、公正取引委員会による審査が長引く見通しとなったため、翌年1月に撤回した経緯があります。

 

卸の収益環境は当時より厳しさを増している上、物流の高度化への対応も求められています。スズケンと東邦HDが将来的な統合も視野に入れていたとしても不思議ではありません。

 

医薬品産業をとりまく環境の変化を受け、非中核事業を手放したい製薬企業と、本業に次ぐ収益源を確保したい医薬品卸。特許切れ製品を軸とした製薬業界の再編は、4月の薬価制度抜本改革でさらに活発化することになります。卸は、自らも再編の可能性をはらみながら、製薬業界再編のカギを握る存在になるかもしれません。

 

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