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後発品業界 再編機運じわり―「収益の確保は困難」撤退が加速

更新日

国内の後発医薬品業界で、再編の機運がじわじわと高まってきました。今年に入り、エーザイと富士フイルムホールディングスが後発品事業からの撤退を発表。市場は拡大しているものの、薬価引き下げと競争激化で収益環境は厳しさを増しています。

 

富士フイルム 後発品事業10年足らずで幕

「昨今、製薬業界を取り巻く環境が急激に変化しており、現在の事業活動では安定的な収益を将来にわたって確保することが困難だと判断した」

 

7月27日、富士フイルムホールディングス(HD)は、グループで後発医薬品事業を展開する富士フイルムファーマを2019年3月31日付で解散する方針を決めたと発表しました。

 

富士フイルムファーマは、富士フイルムと三菱商事の共同出資で09年11月に設立され、翌10年4月に営業を開始。後発品に加え、12年からはバイエル薬品と提携して同社の長期収載品の販売も手がけてきました。

 

解散に伴い、販売中の後発品56製品は、今年10月1日以降、東邦ホールディングスの医薬品製造販売事業子会社・共創未来ファーマに順次、承継・移管。バイエルの長期収載品は9月いっぱいで販売を終了し、10月以降はバイエルが販売を行います。インスリングラルギンのバイオシミラーなどその他の製品も、他社への承継・移管を検討中です。

 

富士フイルムHDは医薬品事業を成長分野と位置付けており、今年10月には富山化学工業などグループ2社を統合して「富士フイルム富山化学」を設立予定。今後は「がん」「中枢神経疾患」「感染症」の3領域で新薬を開発するなどして事業の拡大を図る方針です。

 

新薬系の撤退相次ぐ

国内の後発品市場は、政府の強力な使用促進策の後押しを受け拡大を続けています。民間調査会社・富士経済によると、16年に8897億円だった市場は21年に1兆2233億円まで拡大すると予測。政府は20年9月までに後発品の使用割合を80%以上(17年9月時点では65.8%)に引き上げることを目指しており、市場の伸びは今後もしばらく続きそうです。

 

一方、足元に目を移すと、後発品メーカー各社は収益性の低下にあえいでいます。

 

収益性は低下

後発品大手3社の直近5年間の営業利益率の推移を見てみると、沢井製薬は13年3月期の21.6%が18年3月期には13.2%と8.4ポイントも低下。日医工も2.5ポイント、東和薬品も1.5ポイント低下しました。薬価の引き下げと価格競争の激化を背景に利幅は薄くなっており、需要拡大に伴う生産設備への投資も重石となっています。

 

後発医薬品大手3社の営業利益率の折れ線グラフ。【18年3月期】沢井製薬:13.2パーセント。東和薬品:12.5パーセント。日医工:6.3パーセント。【17年3月期】沢井製薬:17.3パーセント。東和薬品:8.1パーセント。日医工:4.3パーセント。【13年3月期】沢井製薬:21.6パーセント。東和薬品:14.0パーセント。日医工:8.8パーセント。

 

収益環境が厳しくなる中、後発品事業からの撤退を選んだのは富士フイルムファーマだけではありません。

 

田辺三菱製薬は17年10月、後発品と長期収載品を扱っていた子会社・田辺製薬販売をニプロに売却。田辺製薬販売は売却前の15年3月期、16年3月期と2期連続で赤字を計上していました。今年3月には、エーザイが後発品子会社エルメッドエーザイを売却すると発表。エルメッドは19年4月に日医工の完全子会社となり、エーザイは後発品の直接的な製造・販売から撤退します。

 

後発品メーカー「減るのは必然」

厚生労働省のまとめによると、国内の後発品メーカーは17年4月6日時点で196社(保健収載されている後発品を製造販売するメーカー数)。大手3社が500品目以上の品揃えを誇る一方、取り扱い製品が49品目以下のメーカーは154社と全体の8割近くを占めます。小規模の企業が乱立しており、業界再編の必要性は従来から指摘されてきました。

 

後発品の薬価収載品目数別メーカー数の表。500品目以上のメーカーは3社:東和薬品、沢井製薬、日医工。300~499品目のメーカーは3社:武田テバ、ニプロ、共和薬品。200~299品目のメーカーは7社(3.6パーセント)。100~199品目のメーカーは14社(7.1パーセント)。50~99品目のメーカーは15社(7.7パーセント)。40~49品目のメーカーは3社(1.5パーセント)。30~39品目のメーカーは10社(5.1パーセント)。20~29品目のメーカーは18社(9.2パーセント)。10~19品目のメーカーは27社(13.8パーセント)。1~9品目のメーカーは96社(49.0パーセント)。

 

「ジェネリック医薬品を扱うすべてのメーカーが、各社の『役割を明確化』することにより、産業としての透明性を高め、すべての人々に『信頼』される産業を目指す。結果として、ジェネリック医薬品メーカーの集約化や大型化につながる可能性がある」

 

日本ジェネリック製薬協会は昨年5月、協会として初めてまとめた「産業ビジョン」で、自ら業界再編の可能性に言及。昨年11月には、当時の吉田逸郎会長(東和薬品社長)が中央社会保険医療協議会・薬価専門部会で「今後は集約化・大型化が進み、会社数も品目数も減少していくのは必然の流れ」と発言しました。

 

薬価制度改革が引き金に

今年4月の薬価制度改革では、新たな長期収載品の薬価引き下げルールが導入され、後発品発売から10年たった長期収載品は、その後6~10年かけて後発品と同じか1.5倍まで薬価を引き下げられることになりました。

 

価格が同じなら、あえて後発品を使わず、長期収載品を選ぶ医師や患者が増えるであろうことは容易に想像できます。後発品の値下げ競争はさらに激しくなり、それがさらなる薬価引き下げを招くという悪循環に陥るかもしれません。

 

後発品市場は使用割合が80%に達するまでは順調に拡大するものの、その後は伸びが鈍化し、場合によっては縮小に転じるとみられています。国による使用促進という政策頼みの成長は限界を迎えようとしており、再編の動きは今後加速していきそうです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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