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潰瘍性大腸炎 新薬ラッシュで「もはや難病ではない」―エンタイビオ近く発売 JAK阻害薬も適応拡大

大腸の粘膜に炎症が起こり、下痢などの症状が続く潰瘍性大腸炎。国の指定難病にもなっているこの疾患に、新薬が相次いで登場しています。2016年以降、「リアルダ」や「レクタブル」「ゼルヤンツ」などが承認を取得。海外でブロックバスターに成長した武田薬品工業の「エンタイビオ」も近く発売される見通しで、治療薬の市場も拡大が予想されています。

 

患者数 10年で1.8倍に

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(ただれ)や潰瘍ができる疾患です。血便や下痢、腹痛が主な症状で、ひどくなると1日に何度もトイレに駆け込むなど、生活の質に大きな影響を与えます。免疫の異常が発症に関わっていると考えられていますが、はっきりとした原因は明らかになっていません。

 

潰瘍性大腸炎は国の「指定難病」に指定されており、2016年度の患者数(特定疾患医療受給証の所持者)は約16万8000人。実際の患者数は20万人以上に上ると推定されています。もともとは欧米で多い疾患として知られていましたが、日本でも急速に増えており、国内の患者数はこの10年で約1.8倍に増えました。

 

潰瘍性大腸炎の国内患者数の棒グラフ。2006年:9.1万人。2007年:9.7万人。2008年:9.7万人。2009年:11.3万人。2010年:11.8万人。2011年:13.4万人。2012年:14.4万人。2013年:15.5万人。2014年:17.1万人。2015年:16.6万人。2016年:16.8万人。

 

潰瘍性大腸炎には根本的な治療法がなく、炎症を抑える薬物療法が基本となります。

 

治療の中心となるのは、「アサコール」(メサラジン、ゼリア新薬工業)や「ペンタサ」(同、杏林製薬)などの5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤。効果が得られない場合は、ステロイドや「イムラン」(アザチオプリン、アスペンジャパン)、「プログラフ」(タクロリムス、アステラス製薬)などの免疫抑制剤が使われます。「レミケード」(インフリキシマブ、田辺三菱製薬)や「ヒュミラ」(アダリムマブ、アッヴィ/エーザイ)などの抗TNF-α抗体は難治例向けです。

 

潰瘍性大腸炎は、症状が良くなったり(寛解期)悪くなったり(活動期)を繰り返す疾患です。速やかに炎症を抑えて寛解状態にする(寛解導入)とともに、再燃を予防し、寛解を長く維持する(寛解維持)ことが治療の目標となります。

 

広がる治療選択肢 難治例にも効果

そんな潰瘍性大腸炎にはここ数年、新薬が相次いで登場しています。治療選択肢が充実し、難治例にも対応できるようになってきたことで「潰瘍性大腸炎はもはや難病ではなくなりつつある」(北里大北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センターの日比紀文センター長)といった声も聞かれるようになりました。

 

最近登場した新薬で注目されるのが、武田薬品工業の「エンタイビオ」(ベドリズマブ)。7月2日に承認され、早ければ8月に発売される見通しです。

 

抗α4β7インテグリン抗体の同剤は、炎症を起こした腸管組織に炎症性細胞の一種であるTリンパ球が遊走するのを阻害する新規の作用機序を持ちます。エンティビオの製品名で販売する海外ではすでにブロックバスターに成長しており、18年3月期の売上高は2014億円。既存治療では十分な効果が得られない中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対する新たな選択肢として期待されています。

 

持田製薬が2016年に発売した「リアルダ」(メサラジン)は、持続的に有効成分が放出されるよう設計された5-ASA製剤。従来の経口メサラジン製剤は1日3回投与が原則ですが、リアルダは1日1回の投与で済むのが最大の特徴です。17年にはEAファーマとキッセイ薬品工業が、国内初の泡状製剤(注腸フォーム製剤)となるステロイド剤「レクタブル」(ブデソニド)を発売しました。

 

中等症から重症向けでは、17年にヤンセンファーマの抗TNF-α抗体「シンポニー」(ゴリムマブ)の適応拡大が承認。18年5月にはファイザーのJAK阻害薬「ゼルヤンツ」(トファシチニブ)も適応拡大の承認を取得しました。

 

2010年以降に承認された潰瘍性大腸炎治療薬の表。レミケード(インフリキシマブ):田辺三菱製薬:10年6月。ヒュミラ(アダリムマブ):アッヴィ:13年6月。リアルダ(メザラジン):持田製薬:16年9月。シンポニー(ゴリムマブ):ヤンセンファーマ:17年3月。レクタブル(ブデソニド):EAファーマ:17年9月。ゼルヤンツ(トファシチニブ):ファイザー:18年5月。エンタイビオ(ベドリズマブ):武田薬品工業:18年7月。

 

市場は向こう10年で1.7倍に拡大

患者数の増加と相次ぐ新薬の登場で、潰瘍性大腸炎治療薬市場は今後、大きく拡大していきそうです。

 

民間調査会社の富士経済が17年10月に発表したレポートによると、16年に857億円だった炎症性腸疾患治療薬市場は、25年に1444億円と16年の1.7倍に拡大すると予測。アサコールやペンタサは後発医薬品の影響を受ける一方、リアルダが既存のメサラジン製剤から市場を奪うほか、抗体医薬の適応拡大やエンタイビオの発売により、19年度以降、市場は大幅に伸びる見通しです。

 

各社のパイプラインにも期待度の高い新薬候補が並びます。

 

国内で開発中の主な潰瘍性大腸炎治療薬の表。カロテグラストメチル(AJM300):EAファーマ/キッセイ薬品。フィルゴチニブ(GS-6034):ギリアドサイエンシズ。ウステキヌマブ(ステラーラ):ヤンセンファーマ。リサンキズマブ(ABBV-066):アッヴィ。ウパダシチニブ(ABT-494):アッヴィ。LY3074828:日本イーライリリー。

 

EAファーマとキッセイ薬品が共同開発するカロテグラストメチル(開発コードAJM300)は、エンタイビオと同じα4インテグリンを阻害する薬剤。国内で臨床第3相(P3)試験を実施中で、承認されれば世界初の経口α4インテグリン阻害薬となります。

 

JAK阻害薬ではギリアド・サイエンシズのフィルゴチニブ(GS-6034)やアッヴィのウパダシチニブ(ABT-494)が、生物学的製剤ではヤンセンのウステキヌマブ(製品名ステラーラ)やアッヴィのリサンキズマブ(ABBV-066)、日本イーライリリーのLY3074828が、それぞれ国内で開発後期段階に入っています。

 

治療選択肢が広がりにより「寛解導入も寛解維持も以前より容易にできるようになり、生物学的製剤の登場で難治性疾患とは言えなくなってきた」(日比氏)という潰瘍性大腸炎。今後は、個々の患者に合ったきめ細かな治療が期待されます。

 

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