国内の後発医薬品業界で、売上高上位2社が激しい首位争いを繰り広げています。2018年3月期は沢井製薬が日医工を抜いてトップに立ちました。両社とも米国企業の買収で売り上げを伸ばす中、沢井は19年3月期も国内最大手の座を守る予想。対する日医工はエーザイ子会社との提携拡大で国内シェアの拡大を狙います。
米社買収で売り上げ急拡大
沢井製薬の2018年3月期の連結売上高は、1680億6800円で前期比26.9%増となりました。買収した米社の売り上げが加わったことで大幅増収となり、日医工(18年3月期は前期比10.4%増の1647億1700万円)を抜いて後発医薬品国内最大手に躍り出ました。19年3月期も沢井が僅差で国内首位を守る見通しです。
首位交代劇の立役者となったのが、沢井が17年5月に1165億円で買収した米アップシャー・スミス・ラボラトリーズです。18年3月期は米国事業として同社の10カ月分の売上高333億4700万円を計上。これまで国内売上高がほぼ100%だった沢井ですが、買収によって売り上げの2割近くを海外で稼ぐ構造に変わりました。
一方、国内最大手の座を奪われた日医工は、沢井に先んじて16年8月に米セージェント・ファーマシューティカルズを買収。同社の業績が初めて通期で寄与した18年3月期は、セージェントの売上高が前期比81.7%増と大きく増え、売上高全体に占める割合も22%に上昇しました。
米社買収で売り上げを急拡大させた両社ですが、国内事業では明暗が分かれました。沢井の日本事業は1347億2000万円で前期比1.8%増と増収を確保した一方、日医工は1286億5900万円で0.6%の減収に沈みました。国内の後発品は2.6%増でしたが、長期収載品などの売り上げ減少が響きました。
提携やM&Aがカギに
国内首位から陥落した日医工も、このまま黙っているわけではありません。4月にはエーザイとの戦略提携を開始し、エーザイの子会社エルメッドエーザイの発行済み株式20%を受け取りました。提携では今年10月から相互に製品のコ・プロモーションを行い、19年4月にはエルメッドエーザイを完全子会社化する予定です。
日医工の国内後発品市場でのシェアは現在11.8%ですが、エルメッドエーザイを傘下に収めることで19年4月には15.8%に上昇すると見込んでいます。21年3月期にはこれをさらに20%まで引き上げたい考え。エーザイのバイザック工場(インド)から原薬の供給を受けることなどにより、年間20億円のコスト削減も期待します。
一方、沢井も18年3月期決算とあわせて発表した18~20年度の中期経営計画で「アライアンスの強化」を重点課題の一つに掲げました。主な取り組みとして「業務提携・販売提携の模索」「同業他社等の余剰生産力も活用した低コスト製造・安定供給の実現」を挙げており、M&Aも含め幅広く検討する構えです。
両社に戦略に大きな違いがあるとすれば、バイオシミラーへの取り組みです。日医工は韓国企業と手を組んで自社開発・自社販売を展開しており、17年11月には日本で関節リウマチ治療薬インフリキシマブ(先行品名・レミケード)のバイオシミラーを発売。セージェントを買収したのも米国でバイオシミラーを展開するのが目的の一つでした。
一方、沢井は自社でバイオシミラーを手がけず、サンドとG-CSF製剤フィルグラスチム(同・グラン)を共同販売するにとどめています。
新薬系は第一三共に勢い
専業2社が国内首位を争う一方、新薬メーカーの間でも後発品事業をめぐる競争が激しさを増しています。
勢いがあるのは第一三共子会社の第一三共エスファ。17年はARB「ミカルディス」や高脂血症治療薬「クレストール」のオーソライズド・ジェネリック(AG)を発売し、18年3月期の売り上げは前期比131.5%増の467億円に達しました。新薬系でこれまでトップを走ってきたMeijiSeikaファルマに並び、19年3月期は新薬系で単独首位をうかがいます。
19年3月期は引き続き後発品の数量は伸びるものの、薬価改定の影響で各社ともおおむね売上高は微増からマイナスを予想しています。18年3月期に2ケタ成長となった沢井と日医工も、米社買収の効果は一巡し、一転して1ケタ台前半の成長率となる見通しです。
国内市場の環境が大きく変わる中、提携やM&Aを通じた再編の動きもありそうで、勢力図はさらに変わっていくことになるでしょう。