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【インタビュー】「長期収載品に特化」で注目 LTLファーマとは何者か

更新日

アステラス製薬が長期収載品16製品の売却先として白羽の矢を立てた「LTLファーマ」。長期収載品の製造・販売に特化するという新しいビジネスで注目を集めています。

 

後発医薬品の浸透と薬価の引き下げで市場が急速に縮小している長期収載品。売り上げ減少が確実な製品ばかりで、事業をどう展開していくのか。LTLファーマの水川二郎社長に聞きました。(聞き手・前田雄樹)

 

「長期収載品を誰もメンテナンスしなくなるのはまずい」

LTLファーマは、投資ファンドのユニゾン・キャピタル傘下の持ち株会社「日本長期収載品機構」の子会社として2016年8月に設立。今年3月には医薬品製造販売業の許可を取得しました。社名は長期収載品を意味する「Long Term Listing」の略。その名の通り、長期収載品の製造・販売に特化した製薬企業として誕生しました。

 

3月28日にはアステラス製薬と、胃腸薬「ガスター」など長期収載品16製品(15年度売上高290億円)を201億円で譲り受ける契約を締結。製造販売承認の移管は今月末から始まり、2020年4月までに完了する予定です。

 

東京・新宿のオフィスは5月の稼働開始に向けて準備中とのこと。水川社長へのインタビューは電話で行いました。

*****

――長期収載品に特化したビジネスを始めるに至った経緯を教えてください。

2013年からコンサルタント会社をしていまして、その仕事として昨年8月ごろからLTLファーマの立ち上げには関わっていました。

 

昨今の医療行政・医療財政を見ていると、後発医薬品への切り替えで薬剤費をセーブしようという政策が動いています。一方で、新薬メーカーは新薬を出しなさいということが政府の方針にも出てきます。そういう状況の中、長期収載品を誰もメンテナンスしなくなったらまずいのではないかと考え、長期収載品のプラットフォーム、受け皿になれればいいなという思いがありました。

 

長期収載品はこれからどんどん後発品に切り替わっていくでしょう。政府目標の(使用割合)80%はやっぱり目指さないといけない。ただ、それでも長期収載品はまだ20%は使われるということなんです。そこは有害事象を把握していくとか、情報を収集して医療機関に提供するとか、そういう役割は継続していかなければなりません。切り替えが進んで売り上げが落ちていったとしても、そうした役割を果たせるだけのローコスト経営を構築したいと思っています。

 

社員全員が熱い思いを持っています。(アステラスから移管される製品は)日本発祥の新薬として出てきた製品。今まで医療の中心で使われてきた製品が多いので、やりがいを感じて毎日仕事をしています。心情的な部分ではありますけど、それで会社の一体感が出ているなと思います。

 

――現時点の会社の体制はどうなっていますか。

品質保証とか、安全性とか、製造工程とか、品質に関わる部分、有害事象に関わる部分は十分手厚くして動いています。これは自社の社員です。

 

「外部委託でローコスト経営」

――販売はどういう体制で行っていくのですか。

外部委託する予定で、委託先のCSOを今、検討しています。アステラスと取引している医薬品卸は、そのまま引き継がせてもらいたいと思います。

 

私たちは製品のプロモーションということは考えていません。今まではプロモーションにお金をかけているメーカーが多かったわけですが、そういう活動は必要ありません。GVP(医薬品製造販売後安全管理)ができる程度の人員がいればいいのです。

 

――LTLファーマ自身がMRを持つことはないと。

現状はそうですね。製品の移管は2020年4月までに完了する予定で、16製品が一斉に移るということではありません。順次LTLファーマの販売に切り替わっていきます。実際の移管はこの秋くらいから起こってくると思いますが、移管される製品に合わせて段階的にGVPができる体制を検討しています。

 

――製造も外部委託するのですか。

はい。ただ、今アステラスが製造委託をしている先は、そのまま継続させてもらうことを検討しています。今までの品質を担保できなければLTLファーマを立ち上げた意味がない。品質と安定供給が第一です。

 

「品目拡大でトップラインは上がっていく」

――いくらローコスト経営とはいえ、長期収載品の売り上げはどんどん減っていきます。プロモーションをしないということは、売り上げを維持する活動は行わないということですよね。

それをすると国の方針に逆行することになります。そこは潔くやらないという方針です。

 

――収益性や事業の継続性についてはどうお考えですか。

私たちは後発品の使用割合が80%になった時というのを(事業の)前提としています。そこを見据えてローコスト経営を考えている。80%になったとしても成り立つコストで経営をしていきます。

 

さらに昨今、長期収載品を導出する企業が多くあります。私達にとってはビジネスチャンスですので、トップライン(売上高)はまだ上がっていくと思っています。今回、アステラスと16製品で契約いただきましたが、これからほかのメーカーからの製品も増えてくる。そういうビジネスの機会はあると思います。

 

「品目拡大に手応え」

――長期収載品の市場は縮小していますが、それでも勝機はあると。

 そうですね。新薬メーカーのように莫大な利益はありません。ただ、長期収載品を見守っていけるプラットフォームとしてこういう形態の会社が必要だろうと、そんな思いが強いものですから。それは圧倒的な利益が見込めるものではありません。

 

もう一つ、日本のメーカーがどんどん新薬を出せる、そういうお手伝いができればいいという思いです。

 

――アステラスとの契約発表後、反響がかなりあったのではないですか。

そうですね。いろんなお問い合わせをいただきましたし、すぐに引き合いというお話もありました。(取り扱い品目の拡大に向けて)手応えはありますね。

 

水川二郎(みずかわ・じろう)大阪府出身。1976年サール薬品(現ファイザー)入社。日本ベーリンガーインゲルハイムCNS営業部長、サノフィ執行役員SC営業本部長、同スペシャルティ・オンコロジー事業部長、アボットジャパン常務取締役営業本部長などを経て、2013年にコンサルタント会社JMリンクを設立。17年3月、LTLファーマ代表取締役社長に就任。

 

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AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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