厚生労働省が10月、初めて公開した「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)」のオープンデータ。薬効分類別の処方数上位30製品が公開された薬剤データは、医薬品市場を丸裸にするものとして注目を集めています。
NDBオープンデータから医薬品市場にフォーカスするこのシリーズ。今回は、市場成長が続く糖尿病を取り上げます(ランキング表の処方金額は編集部算出)。
【経口薬】「メトグルコ250mg」は外来で15億錠 金額トップは「ジャヌビア」
治療の中心となる経口の糖尿病治療薬で処方数トップとなったのは、院外処方/院内処方ともに大日本住友製薬のビグアナイド薬「メトグルコ250mg」。処方数は院外で11億4079万錠、院内で3億3077万錠、合わせて外来で14億7156万錠と、圧倒的な処方数となっています。
院外処方で処方数2位となったのはノバルティスファーマのDPP-4阻害薬「エクア」(3億3297万錠)、3位はMSDの同「ジャヌビア」(2億8869万錠)。処方金額では「ジャヌビア」が431億円、「エクア」は292億円と逆転するのは、「ジャヌビア」が1日1回服用なのに対し、「エクア」が1日1~2回服用であるためでしょう。
一方、院内処方で「メトグルコ250mg」に次いで2位となったのは、サノフィのSU薬「アマリール」(1億931万錠)。「ジャヌビア」が3位、「エクア」は4位でした。三和化学研究所のα-グルコシダーゼ阻害薬「セイブル」も院外4位(2億4180万錠)、院内5位(6656万錠)と上位につけました。
DPP-4阻害薬、「ジャヌビア」「エクア」で外来シェア50%
糖尿病治療薬市場を牽引するDPP-4阻害剤について、NDBオープンデータをもとに外来での汎用規格の処方金額シェアを算出しました(ランキング圏外でデータのない「オングリザ」は除く)。
31%を占めてトップシェアとなったのは、処方金額592億5900万円の「ジャヌビア」。2位は364億8900万円の「エクア」で、シェアは19%でした。上位2製品がシェアの50%を握り、残り半分を5製品で分け合う構図となっています。
3位争いは混戦で、小野薬品工業の「グラクティブ」(264億900万円、シェア14%)と武田薬品工業の「ネシーナ」(262億6400万円、13%)、日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーの「トラゼンタ」(248億1500万円、13%)が僅差で競り合っています。後発ながら3位争いに加わってきた「トラゼンタ」の好調ぶりが際立ちます。
【注射薬】インスリンは「ランタス」がトップ GLP-1もじわり存在感
サノフィとノボノルディスクファーマ、日本イーライリリーの3社がシェア争いを繰り広げるインスリン製剤では、サノフィの「ランタスソロスター」が院外処方/院内処方ともに首位となりました。
インスリン製剤は、作用の発現パターンから「超速効型」「速効型」「中間型」、それらの「混合型」、そして「持効型」の5つの種類に分けられます。処方数トップとなった「ランタスソロスター」は、1日1回の投与で効果が長く持続する持効型。同じ持効型で2013年に発売されたノボの「トレシーバ」も院外で5位、院内で6位に入り、徐々にシェアを高めていますが、キット製剤に限って見ても、首位のランタスとは処方数、処方金額とも倍以上の開きがあります。
GLP-1受容体作動薬は「ビクトーザ」が好調
2010年以降、各社が相次いで発売したものの、市場浸透に時間がかかっていたGLP-1受容体作動薬も、じわじわと存在感を発揮し出しました。このカテゴリで院外の処方量トップとなったのは、国内初のGLP-1製剤として10年6月に発売された「ビクトーザ」(ノボ)。アストラゼネカの「ビデュリオン」「バイエッタ」、サノフィの「リキスミア」も上位30位にランクインしました。
院外処方では「ビクトーザ」が処方金額シェアの6割以上を握る構図となっていますが、院内では「ビデュリオン」が処方金額でトップとなりました。ほかのGLP-1製剤が1日1回または2回投与なのに対し、「ビデュリオン」は週1回で済む一方、自己注射には独特の手技が必要です。こうした製品の特徴の違いが、使われる場所の違いを生んでいるとみられます。
「ビデュリオン」は15年5月、より簡単に自己注射ができるペン型製剤が発売され、シェア拡大に弾みがつきました。同年9月には日本イーライリリーと大日本住友製薬が週1回投与の「トルリシティ」を発売しており、15年度のデータでは市場の構図にも変化がありそうです。
【NDBオープンデータとは】 厚生労働省がレセプトや特定健診などの情報を収集・格納している「レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB=ナショナルデータベース)」のデータの一部を、誰でも自由に利用できるよう単純な集計表として公開したもの。10月に初めて公表されたオープンデータの集計対象は、2014年4月~15年3月のレセプト約18億800万枚。薬剤に関するデータは、「内用」「外用」「注射」のそれぞれについて、「外来院外」「外来院内」「入院」ごとに、薬効別に処方数上位30品目を集計。「性別年齢別」「都道府県別」の集計表が公開されている。 |