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サノフィ「2030年に国内トップ3」宣言…デュピクセント軸に売り上げ倍増目指す

更新日

穴迫励二

サノフィ日本法人の岩屋孝彦社長

 

サノフィが国内市場で勢いを取り戻してきました。アトピー性皮膚炎を皮切りに適応を拡大する「デュピクセント」を軸に、2024年にかけて4年連続で増収を達成。岩屋孝彦社長は先月開いた記者会見で、30年に国内で売上高トップ3入りを目指すと宣言しました。

 

 

適応広がるデュピクセント「30年までに処方患者倍増」

サノフィの過去10年の業績を振り返ると、売上高のピークは抗血小板薬「プラビックス」が牽引した14年の2695億円(決算ベース)でした。その後は同薬への後発医薬品参入が打撃となり、18年には1640億円まで減少。IQVIAが集計する売上高ランキングでも上位20社から外れました。

 

【サノフィ 国内売上高の推移】14年/2,695億円|15年/2,533億円|16年/1,889億円|17年/1,764億円|18年/1,640億円|19年/1,818億円|20年/1,757億円|21年/1,807億円|22年/1,837億円|23年/2,058億円|24年/2,300億円|※決算公告などをもとに作成

 

こうしたトレンドを上昇基調ヘと変えたのがデュピクセントです。18年4月にアトピー性皮膚炎治療薬として発売して以来、気管支喘息や慢性副鼻腔炎などへと適応拡大を繰り返してきました。24年2月には慢性特発性蕁麻疹の適応追加が世界で初めて日本で承認。今年3月承認の慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含めて現在は6つの適応症を持ち、今年4月には水疱性類天疱瘡でも申請を行いました。

 

「少なくとも5~10の適応追加」

デュピクセントのポテンシャルについて、サノフィは揺るぎない自信を示しています。ドルミー・キム研究開発部門長は、適応症は「30疾患まで広げることが可能」だとする一方、免疫領域のほかの開発品との兼ね合いから優先順位を決めて対象疾患を絞り込んでいると説明。それでも「近い将来、少なくとも5~10の適応追加を期待してもらっていい」と話します。

 

現在、最も処方患者数が多いアトピー性皮膚炎の適応では、協和キリンと米アムジェンが共同開発する抗OX40抗体ロカチンリマブ(一般名)など新たな競合品の登場も見込まれますが、キム氏は「既存の適応症でも成長が見込める」と強調。そのほかの適応症も含め、欧米に比べて生物学的製剤の使用割合が低い日本でも処方患者数は「30年までに倍増する」(キム氏)とみています。

 

【デュピクセントの適応拡大】承認時期/適応症|2018年4月/アトピー性皮膚炎|2019年3月/気管支喘息|2020年3月/慢性副鼻腔炎|2023年6月/結節性痒疹|2024年2月/慢性特発性蕁麻疹|2025年2月/慢性閉塞性肺疾患|2025年4月申請/水疱性類天疱瘡(申請中)|※サノフィのプレスリリースをもとに作成

 

24年は12%増収

デュピクセントは売り上げを右肩上がりに拡大させています。薬価はこれまで特例を含めて3回の市場拡大再算定による引き下げを受けましたが、24年の売上高(薬価ベース)は前年比51.4%増の1177億円に到達。国内製品別売上高ランキング(IQVIA調べ)で一気に5位まで上昇しました。今後の適応追加でさらに薬価が下がる可能性もありますが、業績拡大の中心的存在であることに変わりはありません。

 

【デュピクセント 再算定による薬価引き下げ】年月/引き下げ率/該当要件|2020年4月/20.2%/市場拡大再算定 年間販売額150億円超・基準年間販売額の2倍以上|2022年8月/11.7%/市場拡大再算定 年間販売額350億円超・基準年間販売額の2倍以上|2024年8月/8.7~13.1%/特例拡大再算定 年間販売額1000億円超1500億円以下・基準年間販売額の1.5倍以上|※中央社会保険医療協議会資料をもとに作成

 

24年のサノフィの国内売上高は前年比11.8%増の2300億円で、近年見られなかった2桁成長となりました。デュピクセント以外の新薬群も貢献しており、RSウイルス感染症による下気道感染の発症抑制・予防薬「ベイフォータス」は、同年3月の発売からすでに約1万人に投与されたといいます。同薬はすべての新生児・乳児を対象に承認を取得していますが、現在のところ保険適用はハイリスク者に限定されています。欧米では20カ国以上で基礎疾患のない新生児・乳幼児も含めて定期接種が行われており、サノフィは日本でも定期接種化に向け行政などとの協議を進めています。

 

高成長維持

今年は、高用量インフルエンザHAワクチン「エフエルダ」と腸チフスワクチン「タイフィム ブイアイ」の発売を予定。多発性骨髄腫治療薬「サークリサ」は今年2月に1次治療に適応を広げました。

 

岩屋氏はこうした新製品の上市を続けることによって、「30年に国内トップ3かそれ以上のポジションを目指していく」と宣言。今後も24年と同程度の年平均成長率を維持したい考えを示しました。現在の国内売上高3位は、IQVIAの販促会社レベルの集計で見ると第一三共。同社が先月発表した決算によると、24年度の国内売上高は4769億円でした。これを目安とすれば、サノフィは30年までに売上高を2倍以上に拡大させることになります。

 

30年までに35以上の承認見込む

高成長を支える土台として取り組むのがAIの活用です。サノフィはグローバルで「AIを大規模に活用する初のバイオ医薬品企業」を目指すとしており、全ての社員がデータやAIを使いこなせる環境の整備を進めています。代表的なAIである「チューリング(Turing)」は独自開発したオムニチャネルエンジンで、MRなどコマーシャルチームが使用。提供する情報やチャネルをレコメンドする機能を備え、顧客が求める情報をタイムリーかつ適切な手段で提供することを目指しています。

 

成長の源泉となる新薬開発では現在、72の臨床試験が進行中。このうち臨床第3相(P3)試験が41、P2試験が26あり、30年までに国内で35以上の承認取得を見込んでいます。パイプラインの大部分が免疫関連疾患です。

 

サノフィの24年グローバル売上高は、前年比8.6%増の410億8100万ユーロ(約6兆6600億円)。デュピクセントは22%増の131億ユーロ(2兆1200億円)まで伸ばしています。免疫領域で世界のリーディングカンパニーを目指す中で、日本でも同領域を中心にプレゼンスを高めていく考えです。

 

AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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