
(写真:ロイター)
2025年2月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
【新薬】5つの血清型に対応するGSKの髄膜炎菌ワクチンなど
[がん]Romvimza|米デシフェラ・ファーマシューティカルズ
キナーゼ阻害薬「Romvimza」(一般名・vimseltinib)は、「外科的切除により機能制限の悪化または重篤な病状が生じる可能性のある腱滑膜巨細胞腫(TGCT)」の適応で承認されました。TGCTは、関節の内側や近位に発生するまれな非悪性腫瘍。米デシフェラ・ファーマシューティカルズは24年に小野薬品工業に買収され、同社の子会社となりました。既存の治療薬に見られる肝障害が認められないことから、忍容性の高い治療選択肢として期待されます。欧州でも申請中です。
[代謝]Ctexli|米ミラム
胆汁酸「Ctexli」(chenodiol)は、米国初となる成人の脳腱黄色腫症(CTX)に対する治療薬。CTXは胆汁酸合成経路の主要酵素の欠損によっておこる遺伝性疾患で、進行すると白内障や進行性神経障害などを引き起こすと知られています。承認の根拠となった臨床第3相(P3)試験では、尿中胆汁アルコールを有意に減少させ、主要評価項目を達成しました。
[感染症]Emblaveo|米アッヴィ
「Emblaveo」は、βラクタマーゼ阻害薬avibactam sodiumとβラクタム系抗菌薬aztreonamの配合剤。グラム陰性菌によるものを含む、複雑腹腔内感染症の適応で承認されました。対象は代替治療選択肢がないまたは限られる成人患者で、抗菌薬metronidazoleと併用します。FDAの認定感染症製品指定(QIDP)を受けており、規制独占期間が5年間延長されます。欧州では、北米以外の権利を持つ米ファイザーが24年に承認を取得しました。
[ワクチン]Vimkunya|デンマーク・ババリアン ノルディック
「Vimkunya」は、チクングニア熱に対するVLP(ウイルス様粒子)ワクチン。12歳以上に投与できることから、若年旅行者の感染予防につながると期待されます。欧州でも近く承認される見通しです。
[ワクチン]Penmenvy|英グラクソ・スミスクライン
「Penmenvy」は髄膜炎菌ワクチン。GSKの既存のワクチン「Bexsero」(髄膜炎血清型B型に対応)と「Menveo」(血清型A、C、Y、Wに対応)を組み合わせたもので、5つの主要な血清型をカバーしています。
[その他]Gomekli|米スプリングワークス・セラピューティクス
MEK阻害薬「Gomekli」(mirdametinib)は、「完全切除が困難な叢状神経線維腫(PN)を有する神経線維腫症1型(NF1)」の適応で承認。NF1の患者の30~50%はPNを発症し、外見の変化や疼痛、運動機能障害などを生じることが知られており、最大85%は完全切除が難しいとされます。承認の根拠となったP2試験では、成人で41%、小児で52%の客観性奏効率を示し、腫瘍の縮小が確認されました。欧州でも申請中です。
【適応拡大】Susvimoの糖尿病黄斑浮腫など
[がん]Adcetris|米ファイザー
抗CD30抗体薬物複合体(ADC)「Adcetris」(brentuximab vedotin)は、成人の再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)に適応拡大しました。対象は、2つ以上の全身療法歴があり、自家造血幹細胞移植やCAR-T細胞療法に適さない患者。抗がん剤のlenalidomide、rituximabと併用します。承認の根拠となったP3試験では、lenalidomideとrituximabの2剤併用療法群と比べて、Adcetrisを上乗せした3剤併用群は死亡リスクを37%抑制し、全生存率を有意に改善しました。
[眼]Susvimo|米ジェネンテック
眼科用VEGF阻害薬ranibizumabの埋め込み型インプラント製剤「Susvimo」は、新たに糖尿病黄斑浮腫に適応拡大。眼内に設置したインプラントを通じて薬剤が長期にわたって徐放されるもので、6カ月ごとに薬剤を補充します。臨床試験では、月1回のranibizumab硝子体内注射に対する非劣性を示しました。同薬は米国で21年に加齢黄斑変性治療薬として承認。日本では中外製薬が2つの適応でP1/2試験を進行中です。
[眼]Izervay|アステラス製薬
地図上萎縮を伴う加齢黄斑変性治療薬「Izervay」(avacincaptad pegol)は、添付文書上で投与期間の制限が削除され、12カ月を超える投与が可能となりました。同薬は米国で23年に承認。添付文書の改訂は、投与開始から2年までの同薬の有効性と安全性を評価したP3試験の結果をもとに承認されました。日本でも今年2月に申請を行っています。一方、欧州では規制当局との協議に基づいて、昨年、申請を取り下げ。現在は、各国と個別に申請に向けた協議を進めています。
[循環器]Tnkase|米ジェネンテック
血栓溶解薬「Tnkase」(tenecteplase)は、急性虚血性脳卒中に適応拡大しました。脳卒中に対する新薬は約30年ぶり。同薬は血栓を溶かす組織プラスミノーゲンアクチベータという酵素を有効成分とする薬剤で、急性心筋梗塞治療薬として2000年に承認されています。脳卒中の適応では、標準治療のActivaseに対する非劣性を確認した試験結果をもとに承認されました。標準治療は60分の点滴投与が必要なのに対し、Tnkaseは5秒で投与が完了します。日本では、21年から脳梗塞急性期を対象とする医師主導P2試験が行われています。
[神経]Evrysdi|米ジェネンテック
脊髄性筋萎縮症治療薬「Evrysdi」(risdiplam)は、新たに錠剤が承認されました。室温で保存でき、錠剤のままだけでなく、水に溶かしても服用できるのが特徴。患者の利便性向上につながると期待されています。
[アレルギー]Odactra|デンマークALK
「Odactra」は、ハウスダストアレルギー治療に使用される舌下免疫療法薬。5歳から11歳までの小児に対象を拡大しました。日本では「ミティキュア」、欧州では「Acarizax」の製品名で販売されており、いずれも幼児への投与も認められています。
【バイオシミラー】サノフィのinsulin aspartなど
Ospomyv/Xbryk|韓国サムスンバイオ
サムスンバイオの「Ospomyv」と「Xbryk」は、いずれも抗RANKL抗体denosumabのバイオシミラー。Ospomyvは骨粗鬆症治療薬「Prolia」、Xbrykは骨巨細胞腫瘍などの適応を持つ「Xgeva」のバイオシミラーです。
Merilog|仏サノフィ
「Merilog」は「NovoLog」(insulin aspart)のバイオシミラー。速効型インスリンのバイオシミラーは米国初で、糖尿病患者の医薬品へのアクセス向上につながると期待されています。
Stoboclo|韓国セルトリオン
「Stoboclo」は米国3剤目となるProliaのバイオシミラー。