
(写真:ロイター)
2025年1月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
INDEX
【新薬】「Journavx」20年以上ぶり新規作用機序の疼痛治療薬
がん
Datroway|第一三共
「Datroway」(一般名・datopotamab deruxtecan)は、抗TROP2抗体薬物複合体(ADC)。「内分泌療法および化学療法歴のあるHR陽性かつHER2陰性の手術不能または転移性乳がん」を対象に承認されました。日本でも同適応で昨年末に承認されており、欧州でも近く承認される見通し。米国では非小細胞肺がんの適応でも申請中です。
Grafapex|カナダ・メデクサス
アルキル化剤「Grafapex」(treosulfan)は、急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の治療薬。同種造血幹細胞移植の前治療として、fludarabineと併用します。570人の患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験の結果をもとに承認されました。欧州ではライセンス元の独メダックが「Trecondi」の製品名で2019年に承認。日本ではメダックがP1/2試験を進行中です。
精神・中枢神経
Symbravo|米アクサム
片頭痛の急性治療薬「Symbravo」は、非ステロイド性の消炎鎮痛薬meloxicamと5-HT1B-受容体作動薬rizatriptanの配合剤。アクサム独自の急速吸収技術を使い、半減期を長く保ちながら短時間で最高血漿中濃度に達するよう設計されています。臨床試験では、多くの患者で2時間以内に痛みが緩和し、その効果が24~48時間にわたって持続しました。
疼痛
Journavx|米バーテックス
「Journavx」(suzetrigine)は、非オピオイド性の経口疼痛治療薬です。痛みのシグナル伝達に関与する末梢神経系のナトリウムチャネルNaV1.8を阻害する薬剤で、米国で新規作用機序の鎮痛薬が承認されるのは20年以上ぶり。米国ではオピオイドの長期使用による慢性疼痛が問題となっており、Journavxは依存性のない疼痛治療薬として期待されています。
【適応拡大】「エンハーツ」HER2低発現・超低発現乳がん、未治療患者に対象拡大
がん
Lumakras|米アムジェン
KRAS阻害薬「Lumakras」(sotorasib)は、「KRAS G12C変異陽性の転移性大腸がん」に対する抗EGFR抗体panitumumab(製品名・Vectibix)との併用療法が承認されました。大腸がんでは、患者の約3~5%がKRAS G12C変異を持つと推定されています。承認の根拠となった臨床試験では、無増悪生存期間を有意に延長。同試験の結果をもとに日本でも申請中です。
Calquence|英アストラゼネカ
BTK阻害薬「Calquence」(acalabrutinib)は、「未治療のマントル細胞リンパ腫」に対する抗がん剤bendamustine、抗CD20抗体rituximabとの3剤併用療法が承認されました。対象は自家造血幹細胞移植不適格の成人患者。P3試験では、標準治療の化学免疫療法と比べて無増悪生存期間を16カ月以上延長しました。日本と欧州でも申請中です。2017年に迅速承認を取得した「マントル細胞リンパ腫の2次治療以降」では完全承認を取得しました。
Enhertu|第一三共
抗HER2 ADC「Enhertu」(trastuzumab deruxtecan)は、「1つ以上の内分泌療法を受けた化学療法未治療のHR陽性かつHER2低発現またはHER2超低発現の転移再発乳がん」に適応拡大しました。米国では22年に「化学療法既治療のHER2低発現乳がん」で承認を取得していますが、より早期の患者に対象が拡大しました。日本と欧州でも申請中です。
消化器
Omvoh|米イーライリリー
抗IL-23p19抗体「Omvoh」(mirikizumab)は、中等症から重症のクローン病に適応拡大しました。承認の根拠となった臨床試験では、プラセボと比べて投与1年時点の臨床的寛解の割合を有意に改善。臨床的寛解が認められた患者の9割がその後1年にわたって臨床的寛解を維持しました。同薬は米国と日本、欧州で23年に潰瘍性大腸炎治療薬として承認。日本と欧州では現在、クローン病への適応拡大を申請中です。
精神・中枢神経
Spravato|米ヤンセン
NMDA受容体拮抗薬「Spravato」(esketamine)は、治療抵抗性うつ病の適応で単剤療法が承認されました。対象は少なくとも2つの経口抗うつ薬で効果不十分な大うつ病患者で、従来はほかの抗うつ薬と併用する必要がありました。承認の根拠となったデータによれば、早ければ投与後24時間でうつ病の症状を軽減。28日目のMADRSスコア(モンゴメリー・アズバーグうつ病評価尺度)をプラセボと比べて有意に改善しました。欧州では2019年に併用療法が承認されています。
Leqembi|エーザイ
アルツハイマー病治療薬「Leqembi」(lecanemab)は、静注による4週1回の維持投与が承認されました。患者は、隔週で18カ月間投与する初期治療の後、維持投与に移行するか隔週投与を継続するか検討することができます。米国では皮下注射による維持投与も申請中です。
腎
Ozempic|デンマーク・ノボノルディスク
GLP-1受容体作動薬「Ozempic」(semaglutide)は、新たに「2型糖尿病や慢性腎臓病に伴う腎臓病の悪化、腎不全、心血管疾患による死亡リスクの低下」の適応で承認されました。承認の根拠となった臨床試験では、プラセボと比べて相対リスクを24%軽減。欧州と中国でも申請中で、日本ではP3試験を進めています。
【バイオシミラー】セルトリオンのtocilizumab
Avtozma|韓国セルトリオン
「Avtozma」は抗IL-6受容体抗体「Actemra」(tocilizumab)のバイオシミラー。静脈投与、皮下投与の両方を可能としています。欧州でも近く承認される見通しです。