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米国のメディケア薬価交渉、第2弾の対象15品目公表…トランプ政権で制度見直しはあるか

更新日

ロイター通信

価格交渉の対象となったノボノルディスクの肥満症治療薬「ウゴービ」(ロイター)

 

[ロイター]米国政府は1月17日、2027年の価格引き下げに向けてメディケアとの価格交渉の対象となる15の医薬品を公表した。

 

ノボの「オゼンピック/ウゴービ」など対象

リストには、ノボノルディスクの糖尿病治療薬「オゼンピック」や肥満症治療薬「ウゴービ」、ファイザーの抗がん剤「イブランス」「イクスタンジ」、グラクソ・スミスクラインの喘息・慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療薬「テリルジーエリプタ」、テバのハンチントン病治療薬「オーステド」、アッヴィの過敏性腸症候群治療薬「リンゼス」などが含まれている。

 

価格交渉のプロセスは、バイデン大統領が2022年に制定したIRAに基づく。交渉の第1弾は10の医薬品を対象に昨年行われ、引き下げ後の新価格は26年1月から適用される。今回の15医薬品は第2弾で、メディケアで最も高価な部類のものだ。

 

20日に就任式を迎えるトランプ次期大統領が、このプログラムに変更を加えるかどうかは不明だ。バイデン政権の当局者は、法律で詳細な選択基準が定められており、変更はできないだろうと示唆した。バイデン氏は17日の声明で「(第2弾に選ばれた)15種類の医薬品は、メディケアがすでに交渉を行った10種類の医薬品をあわせて、処方薬に対するメディケアパートDの支出の約3分の1を占める」を述べた。第1弾の10医薬品は38~79%の値下げが決まっている。

 

ジョンズ・ホプキンス大の医療政策・管理学教授で保守系シンクタンクのパラゴン・ヘルス・インスティテュートで顧問を務めるゲ・バイ氏は、トランプ政権には交渉対象となる薬剤を変更する権利があると指摘。同氏は電子メールで「IRAは過去の政権ではなく新政権に薬剤選択の権限を与えている。初期の証拠からは、価格交渉が効果的で価値ある政策であることは裏付けられておらず、トランプ政権は少なくとも行政措置を通じて変更を求める理由がある」と述べた。

 

政府によると、24年10月までの1年間にセマグルチド製剤(オゼンピック、ウゴービ、リベルサス)を使用したメディケア加入者は約230万人に上り、支出額は140億ドルを超えたという。

 

ノボの株価は、新たな肥満症治療薬の臨床試験データが想定に届かなかったことで価格交渉リストの発表前から下落していたが、リストの発表後にさらに下落し4.6%安となった。同社は「ノボはIRAによる価格交渉に引き続き反対しており、現政権による同法の運用に重大な懸念を抱いている」との声明を発表。「新政権と協力して患者にとって意味のある解決策を提供する」とした。

 

自社の医薬品がリストに掲載されたブリストル・マイヤーズスクイブやファイザーといった製薬企業は、価格交渉によって患者の医薬品に対するアクセスの障壁を解消できるとは考えられないとコメント。アストラゼネカは、自社の抗がん剤「カルケンス」を対象に選んだ決定を再考するよう政府に求める考えを示した。

 

業界は制度見直し要望

製薬業界は、イノベーションを阻害するとして価格交渉に反対してきた。業界はトランプ政権に規制緩和を働きかけており、たとえば低分子医薬品が交渉の対象となる時期を遅らせることなどを求めている。

 

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のスティーブ・J・ユーブル理事長兼CEOは声明で、「IRAの価格設定プロセスは、革新的な治療に頼る何百万人もの米国人を危険にさらすものであり、不必要で金のかかる官僚制を生み出した。バイデン政権は任期の最後の日に急いでリストを発表したが、高齢者とメディケアが直面している真の課題には対処できていない」と述べた。

 

第2弾の対象となる医薬品の選択期限は2月1日で、リストの公表は想定される最も早いタイミングからわずか1日遅れだった。対象となった医薬品を持つメーカーは、交渉に参加するかどうかを2月28日までに決める必要がある。交渉は今年11月1日まで行われる予定で、政府は同月末までに新価格を設定する。

 

製薬業界がトランプ氏にプログラムの変更を迫れるかどうかは不透明だ。

 

バンダービルト大学で医療政策を教えるステイシー・デュセツィナ教授は「第2弾の対象薬リストは、慢性疾患治療薬と好まれるブランド薬のいいとこ取りで、多くの受給者に影響を与えるだろう」と指摘。IRAでは最低でも25%の値下げが義務付けられており、トランプ氏が交渉にあまり積極的でなかったとしても薬剤費の節約につながる可能性があるとの見方を示した。

 

(取材:Michael Erman/Ahmed Aboulenein/Bhanvi Satija/Manas Mishra/Christy Santhosh/Stine Jacobsen、編集:Shinjini Ganguli/Caroline Humer/Nick Zieminski、翻訳:AnswersNews)

 

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