(写真:ロイター)
2024年10月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
INDEX
【新薬】ジェネンテックのPI3K阻害薬、ファイザーの血友病治療薬など
がん
Itovebi|米ジェネンテック
PI3K阻害薬「Itovebi」(一般名・inavolisib)は「PIK3CA遺伝子変異陽性・HR陽性・HER2陰性の局所進行または転移性乳がん」の適応で承認を取得。palbociclib、fulvestrantとの3剤併用で使用します。PIK3CA変異はHR陽性転移性乳がんの約40%に見られます。臨床試験では、palbociclibとfulvestrantの2剤併用療法と比べて無増悪生存期間を2倍以上に延長しました。欧州でも申請済み。日本では今年7月に中外製薬がライセンスを取得しました。
Vyloy|アステラス製薬
抗CLDN18.2抗体「Vyloy」(zolbetuximab)は「Claudin18.2陽性、HER2陰性の切除不能な局所進行性または転移性胃腺がん・食道胃接合部腺がん」の1次治療を対象に化学療法との併用療法が承認されました。同薬は「ビロイ」の製品名で今年3月に日本で世界初の承認を取得。米国では今年1月、製造委託先に未解決の指摘事項があるとして承認が見送られ、5月に再申請を行っていました。欧州では9月に承認されています。
血液
Hympavzi|米ファイザー
抗TFPI抗体「Hympavzi」(marstacimab)は、インヒビターを持たない血友病AまたはBの適応で承認を取得。週1回、プレフィルドペン剤で皮下投与します。臨床試験では、主要評価項目の年間出血率について、凝固因子出血時補充療法に対する優越性と凝固因子定期補充療法に対する非劣勢を確認。欧州でも近く承認される見通しで、日本でも申請中です。
神経
Vyalev|米アッヴィ
進行性パーキンソン病治療薬「Vyalev」は、foscarbidopaとfoslevodopaの配合剤。24時間持続投与が可能な皮下注製剤で、従来の経口薬に比べて症状が制御されている「オン」の時間を増やすことが期待されます。日本では「ヴィアレブ」の製品名で23年7月に、欧州では「PRODUODOPA」の製品名で今年1月に発売しています。
感染症
Orlynvah|米イテラム
経口ペネム系抗菌薬「Orlynvah」(sulopenem/probenecid)は、単純性尿路感染症治療薬として承認されました。単純性尿路感染症は主に大腸菌によって引き起こされる細菌感染症で、女性に多いとされます。
【適応拡大】慢性骨髄性白血病治療薬「Scemblix」の新規診断患者など
がん
Opdivo|米ブリストル
抗PD-1抗体「Opdivo」(nivolumab)は、切除可能な非小細胞肺がんに対する周術期療法が承認されました。承認されたのは、Opdivoと化学療法2剤の併用による術前補助療法と、それに続くOpdivo単剤の術後補助療法。臨床試験では、化学療法と比べて無イベント生存期間を有意に改善しました。欧州でも申請を済ませており、日本ではP3試験を実施中です。
Scemblix|スイス・ノバルティス
ABLミリストイルポケット結合型阻害薬「Scemblix」(asciminib)は、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性の慢性骨髄性白血病の適応で、新規診断を受けた慢性期の成人患者を対象に迅速承認を取得しました。従来は治療歴のある患者が対象でした。承認の根拠となった臨床試験では、標準治療に比べて投与48週時点で優れた分子遺伝学的奏効率(MMR)を確認。1次治療では現在、日本と中国で申請中です。
中枢神経
Lumryz|アイルランドAvadel
「Lumryz」(sodium oxybate)は、ナルコレプシーに伴うカタプレキシー、日中の過度の眠気の適応で7歳以上の小児に対象を拡大しました。同薬は就寝前に1回服用する徐放性の経口懸濁液。23年に成人を対象に承認を取得していました。
感染症
Abrysvo|米ファイザー
RSウイルスワクチン「Abrysvo」は、RSウイルスによる下気道疾患のリスクの高い18~59歳の成人に対象を拡大しました。従来は60歳以上の成人と母子免疫が対象でした。50歳未満の成人が接種できるRSウイルスワクチンは米国初。欧州や日本では高齢者と母子免疫を対象に承認されています。
【バイオシミラー】米アコードのustekinumab
Imuldosa|米アコード
「Imuldosa」は、米国で5剤目となる抗IL-12/23p40抗体「Stelara」(ustekinumab)のバイオシミラー。米国では通算60品目目のバイオシミラーの承認となりました。Imuldosa はMeijiSeikaファルマと韓国の東亞STが共同開発したもので、先行品と同じSp2/0細胞を使った製造法を採用することで高い同等性と同質性を担保。日本と韓国以外ではアコードの親会社であるインタス・ファーマシューティカルズ(インド)がライセンスを持っており、欧州でも近く承認される見通しです。