(写真:ロイター)
2024年8月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大を、領域別にまとめました。
INDEX
【新薬】原発性胆汁性胆管炎治療薬Livdelziや結節性痒疹治療薬Nemluvioなど
がん
Voranigo|仏セルヴィエ
IDH1/2阻害薬「Voranigo」(vorasidenib)は、グレード2のIDH変異型神経膠腫(星細胞腫または乏突起膠腫)治療薬として承認されました。対象は手術後の12歳以上の小児と成人。臨床第3相(P3)試験では、無増悪生存率を改善しました。欧州でも申請中で、日本ではP3試験を行っています。
Lymphir|米シティウス
抗がん剤「Lymphir」(denileukin diftitox)は、ステージ1~3の再発・難治性の皮膚T細胞リンパ腫治療薬。1つ以上の全身療法を受けた患者が対象です。IL-2とジフテリア毒素フラグメントからなる融合タンパク質で、がん細胞や制御性T細胞上のIL-2受容体に結合してタンパク質合成を阻害し、細胞死を誘導します。日本ではエーザイが「レミトロ」の製品名で21年に発売しました。
Lazcluze|米ヤンセン
EGFR阻害薬「Lazcluze」(lazertinib)は、抗EGFR/MET二重特異性抗体「Rybrevant」(amivantamab)との併用療法が、局所進行・転移性の非小細胞肺がんの1次治療として承認されました。対象は、EGFRエクソン19欠失変異またはエクソン21(L858R)遺伝子変異陽性の成人患者。1074人の患者を対象に行ったP3試験では、オシメルチニブと比べ進行または死亡のリスクを30%減少させ、奏功期間の中央値を9カ月延長しました。欧州と日本でも併用療法の申請を済ませています。
Tecelra|英アダプティミューン
TCR遺伝子改変T細胞療法「Tecelra」(afamitresgene autoleucel)は、切除不能または転移性滑膜肉腫の適応で迅速承認を取得しました。対象は、特定のHLA型を有し、MAGE-A4抗原を発現している患者。44人の患者を対象に行った臨床試験の全奏効率は43%、奏功期間の中央値は6カ月でした。
中枢神経
Crexont|米アムニール
パーキンソン病治療薬「Crexont」は、carbidopaとlevodopaの配合徐放性カプセル。即放性顆粒と徐放性ペレットを組み合わせた製剤で、既存の経口即放性製剤と比べて少ない投与回数でより長い「Good On時間」を実現すると考えられています。
免疫
Neffy|米ARS
「Neffy」はepinephrineの点鼻薬。体重30kg以上の小児・成人のアナフィラキシーを含む1型アレルギー反応の緊急治療に使用されます。アナフィラキシーの治療に使用できる点鼻スプレーは米国初。175人の健康成人を対象とした臨床試験では、既存の注射剤との同等性が確認されました。
内分泌
Yorvipath|デンマーク・アセンディス
「Yorvipath」(palopegteriparatide)は副甲状腺機能低下症の治療に使用する副甲状腺ホルモン。独自技術で長時間作用を実現させています。プラセボ対照のP3試験では、正常な血清カルシウム濃度の維持に必要なビタミンD・カルシウム製剤からの離脱または減量を達成し、疾患特有の身体的・認知的症状を有意に改善しました。欧州では昨年11月に承認を取得。日本では導出先の帝人ファーマが申請準備を進めています。
皮膚
Nemluvio|スイス・ガルデルマ
抗IL-31受容体A抗体「Nemluvio」(nemolizumab)は結節性痒疹治療薬。同疾患は多数のドーム状に盛り上がる皮膚病変(結節)を特徴とする慢性皮膚疾患で、強い痛みを伴うことが知られています。同薬は中外製薬が創製したもので、ガルデルマは16年に日本と台湾を除く全世界のライセンスを獲得。米国ではアトピー性皮膚炎の適応でも申請中で、欧州でも2つの適応で申請済み。日本では「ミチーガ」の製品名でマルホがアトピー性皮膚炎と結節性痒疹の治療薬として販売しています。
消化器
Livdelzi|米ギリアド
PPAR-δアゴニスト「Livdelzi」(seladelpar)は、原発性胆汁性胆管炎治療薬として迅速承認されました。臨床試験では、プラセボと比べてアルカリホスファターゼ(ALP)を正常化し、そう痒症を有意に軽減させました。同薬は米シーマベイが開発した経口薬で、ギリアドは今年3月に同社を買収。欧州でも申請中で、日本では導出先の科研製薬がP1試験を行っています。
Niktimvo|米インサイト
抗CSF-1R抗体「Niktimvo」(axatilimab)は、慢性移植片対宿主病治療薬。2種類以上の全身療法が奏効しなかった体重40kg以上の小児・成人患者に使用します。患者241人を対象に行った臨床試験結果をもとに承認されました。日本ではP3試験が進行中です。
【適応拡大】補体B因子阻害薬「Fabhalta」のIgA腎症など
がん
Jemperli|英グラクソ・スミスクライン
抗PD-1抗体「Jemperli」(dostarlimab)は、初発進行・再発の子宮体がんで、ミスマッチ修復機能(MMRp)またはマイクロサテライト安定性(MSS)を有する患者に対象を拡大しました。承認されたレジメンは、化学療法との併用療法に続くJemperli単剤療法。子宮体がんでは70~75%の患者がMMRp、MSSを有するとされます。承認の根拠となったP3試験では、バイオマーカーの状態にかかわらず全生存期間を有意に延長しました。欧州でも同試験の結果をもとに適応拡大を申請中。日本では子宮体がんの適応でP2試験を行っています。
Imfinzi|英アストラゼネカ
抗PD-L1抗体「Imfinzi」(durvalumab)は、切除可能な早期非小細胞肺がんの術前・術後補助療法に適応拡大。対象はEGFR遺伝子変異またはALK融合遺伝子が確認されていない成人患者で、手術前にImfinziと化学療法の併用療法を、手術後にImfinzi単剤療法を行います。再発、進行または死亡イベントの発現リスクを32%低下させたP3試験の結果に基づいて承認されました。欧州でも申請中。日本も同試験に参加しています。
腎
Fabhalta|スイス・ノバルティス
補体B因子阻害薬「Fabhalta」(iptacopan)は、成人のIgA腎症に適応拡大。プラセボと比べてタンパク尿を有意に減少させたP3試験の結果に基づいて迅速承認されました。同薬は発作性夜間ヘモグロビン尿症の適応で、米国で昨年12月、欧州で今年5月、日本で今年6月に承認。IgA腎症の適応では日欧でP3試験を進めています。
感染症
Prevymis|米メルク
抗サイトメガロウイルス化学療法剤「Prevymis」(letermovir)は、同種造血幹細胞移植を受けた生後6カ月以降の小児と臓器移植を受けた12歳以上の小児のサイトメガロウイルス感染症の発症抑制に使用できるようになりました。あわせて、小児に使用できるペレット剤も承認を取得。日本でも小児適応で今年6月に申請を行いました。
その他
Nexobrid|イスラエル・メディウンド
壊死組織除去剤「Nexobrid」(anacaulase)は、新生児から18歳未満の小児に対象を拡大しました。同薬はパイナップル茎の搾汁精製物を有効成分とする酵素製剤で、タンパク質分解作用により深達性部分熱傷・全層熱傷で壊死した組織を除去します。日本では導出先の科研製薬が昨年8月に発売。日本や欧州では全年齢で使用が認められています。
【バイオシミラー】サンドとアムジェンのaflibercept
Enzeevu|スイス・サンド
「Enzeevu」は、眼科用VEGF阻害薬afliberceptのバイオシミラー。485人の患者を対象とした臨床試験の結果をもとに、滲出型加齢黄斑変性の適応で承認されました。
Pavblu|米アムジェン
「Pavblu」は、米国で5つ目となる眼科用VEGF阻害薬afliberceptのバイオシミラーです。▽滲出型加齢黄斑変性▽網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫▽糖尿病黄斑浮腫▽糖尿病性網膜症――の4つの適応で承認されました。