MR認定センターの「MR白書」によると、2023年3月末時点の国内のMR数は前年度比2963人(6.0%)減の4万6719人となりました。業界全体で削減が続く一方、1人あたりの生産性は上昇。23年度は2.43億円となり、この10年間で1.6倍に拡大しています。
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10年で1万9000人減少
MR数の減少は10年連続。この間、約1万9000人が営業現場から姿を消したことになります。23年度は特に大手企業で減少が大きく、MR数1000人以上の企業で11%減りました。大手の国内売上高は停滞もしくは減少しており、早期退職者の募集も含め営業の効率化に向かって人員の調整が進みます。後発医薬品メーカーも大きく減らしており、日本ジェネリック製薬協会加盟企業では14.9%減少。こうした状況に白書では「医療関係者からの期待に応えられるか」との懸念も示されています。
一方でMR1人あたりの生産性は7年連続で上昇し、23年度は薬価ベースで2.43億円に達しました。7年前の16年度は1.65億円でしたが、21年度に2.06億円と初めて2億円を突破。23年まで毎年平均0.11億円増えています。その背景に相次ぐ早期退職者の募集があることは言うまでもありません。
アステラス 体制3分の1に縮小で生産性急上昇
アステラス製薬は、18年3月末時点で2400人いたMRを23年8月までに半分に削減しました。さらに、今年3月末にも早期退職で多くのMRが会社を去り、4月1日時点で800人まで減少。6年前と比べると3分の1の体制になりました。
1人あたりの生産性は、18年度が国内医療用医薬品売上高3834億円で1.60億円でしたが、24年度は2780億円の予想で3.48億円に急上昇します。同社はこの春から営業体制を改め、メディカルアフェアーズとの連携を強化。MRとMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)が協力し、スペシャリティ領域にシフトする製品群の価値最大化を目指しています。
住友、早期退職も業界平均遠く
住友ファーマは、23年度の国内製品売上高1054億円に対してMR数は910人(マネジャー除く)で、生産性は1.16億円にとどまります。7月末に700人の早期退職者募集を発表しましたが、その半数がMRと仮定しても24年度は計算上、1.7億円程度。なお業界平均とは差があり、状況を大きく改善するには至りません。
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中外製薬は、24年の国内売上高予想が4549億円、MR数が1050人で、生産性は4.33億円と高い水準を保っています。国内売り上げが中外製薬と同規模の第一三共は、4349億円の24年度予想に対してMRは1700人で、1人当たり2.56億円と差がつきます。
3万人台に現実味
白書によると、調査に回答した199社のうち128社(64%)で23年度に新卒採用を行っていませんでした。MR認定試験の合格者数は23年に初めて1000人を割っており、リストラとともに新人MRも増えていないのが現状です。
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新卒採用を行っていない企業は外資に目立ち、50社中41社に上りました。富士経済の調査によると、外資のMR1人あたり生産性は内資より上昇が顕著です。19年は1.7億円でしたが、23年には2.7億円と4年間で1億円増加しています。直近2年間を振り返っても、ファイザー、ヤンセンファーマ、バイエル薬品、ノバルティスファーマなどがリストラを行っており、こうしたことが背景にありそうです。
Web/電話専任MR、40社が導入
現場で活動するMRが減る半面、Web/電話のみで活動するMR(オンラインMR)数は、前回調査から95人増の507人に達しました。21年度から22年度にかけてはほとんど変化がありませんでしたが、23年度は人数、企業数とも増加しています。オンラインMRを最も多く配置しているのはアステラスと見られますが、同社は現在、詳細を明らかにしていません。23年7月時点では9領域13製品を26人が担当する体制で、前立腺がん治療薬「イクスタンジ」をはじめ売り上げ上位製品のほとんどが含まれていました。
オンラインMRは企業によって位置付けや将来的な方向性に違いがありますが、白書によるとすでに40社がとり入れており、活動が活発化していくとは間違いなさそうです。
IQVIAによると、28年度の国内医療用医薬品市場は23年度比で若干増加し、11兆5810億円となる見込みです。MR数が過去5年間と同じペースで減少したとすると、28年度には3万3500人程度になる計算。そうなると1人当たり生産性は3.46億円となり、現在よりさらに1億円上昇することになります。
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MR数の減少がどこで止まるか予測するのは難しいですが、大手でもすでに1000人を切る体制に突入しています。MRが減ったことで売り上げにマイナスの影響も及ぼすこともほとんどないと見られ、3万人台は現実的な数字のように映ります。